華麗なる恋の舞台で

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 華麗なる恋の舞台で

 2005年のアカデミー賞で、アネット・ベニングがこの映画で主演女優賞にノミネートされました。彼女のこの映画での演技力の評価は高かったのですが、結局「ミリオンダラーベイビー」のヒラリースワンクに栄冠は輝きました。

 私はミリオンダラーのヒラリースワンクも素晴らしい演技だったから、この結果には十分納得はしていますが、その時は知らなかったこの作品を見てみるとアネット・ベニングが主演女優賞をとっても不思議ではなかったと思ったものです。

 ただ、昨日の客の入りを見てもわかるように、興行収入的にはこの作品はイマイチですね。ミリオンダラーのような、大勢の観客を引きつけるインパクトに欠けていました。
もちろん、それがこの映画の持ち味ではあると思うのですが……。

 1938年のロンドン、1939年から第二次世界大戦が始まるのですから、ヨーロッパではナチスの動きが急速になり戦雲急を告げる時ですが海峡をはさんでのイギリスはのんびりしたものです。

 ロンドンの上流階級の世界を描いていましたが、演劇鑑賞、パーティ、別荘での暮らしと戦争とは全く無縁の優雅な暮らしぶりです。その頃の日本と比較すれば、さらにそれははっきりとするでしょう。

 ただ、そんなちょっとレトロで落ち着いた雰囲気も私は好きです。映画音楽もクラシック系の素敵なもので、良い雰囲気で久しぶりに映画らしい映画を見た、そんな気がしたものです。

 アネット・ベニングの演技が見事すぎて、彼女のための映画だと言っても過言ではないと思います。役柄も40代後半のベテラン女優役で、彼女の実際の年も48歳だから
ほとんど原寸大の自分で演じることができたのでしょう。それが、見るものに強い現実感として伝わってきたと思います。

 実力、実績、人気の伴った大女優のジュリア(アネット・ベニング)は、理解ある夫、素直な息子に恵まれて、安定した生活を送っています。でも、退屈な毎日、それが舞台の演技にもでて、スラップ気味です。

 そこへ、20歳も年下の青年TOMが現れます。TOMはジュリアの大ファンであり、積極的にアプローチして彼女の心を揺さぶります。そして、いつしかジュリアも彼に恋をします。

 恋する女になったジュリアは、目の輝きが違います。一気にスランプを乗り越え、演技にも磨きがかかります。

 でも、そんな喜びもつかの間、TOMは若い女優の卵に恋をして、ジュリアを悲しませます。

 ジュリアは猛烈な嫉妬心を感じますが、なぜか、若い女優の卵にやさしくTOMの願いを聞いて、自分の新作に役を与えます。おそらく、TOMとの別れは仕方ないものとあきらめていて、それまでのお礼を込めてのことだったのでしょう。でも、夫がその若い女優の卵と不倫をしていると聞いて時から一気に復讐の炎が燃えさかります。(でも、ことの発端は自分が不倫をしたことだから、そんなことできる筋合いではないですね……(^_^;))

 そして、いよいよ新作舞台の初日の日。想像もできない形で、復讐を遂げます。その意外性にあぜんとすると同時に、素晴らしい演技と復讐劇に拍手喝采です。

 ジュリアのそばに守護霊のようについている尊敬する演出家(マイケル・ガンボ)が彼女に言った言葉<舞台の中が真実で、舞台の外は偽りである>(言い回しは違いますが、こんなふうな意味だったと思います>その言葉を現実の形として示してくれた作品でした。

 それから、<舞台と恋では何でもあり>との言葉もありました。彼女が恋人のTOMに見せた涙、嫉妬、怒り、どこまでは真実で、どこまでは演技だったのでしょうか?

 彼女がTOMにすがるのをやめて、冷静に彼をみつめながら次第にTOMを操っていく過程は、女性のしたたかさと強さみたいなものを感じました。その点、男は単純でシンプルで、バカです(笑)。

 原作はサマセットモームの<劇場>とか、映画以上に辛辣で面白いとの話ですから、機会があれば読んでみたいものです。

 最後に新作の初日のパーティに行かずに一人でレストランで、<ビールの大>をゆっくり飲む彼女。今までは、好きなビールを我慢してきたでも、もう我慢せずに自分の思うとおりにいくぞというような<人生を悟った>彼女を見て、スカッとした気持ちで
映画を見終わることができました。

 私的には★は3つ半、
 

 

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