眉山

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眉山 h19.5.27

感動しました。あれ程泣いたのは、久しぶりです(笑)。そして、こんな時に限ってハンカチもない、ティシュもない最悪です(^_^;)。私的には☆は4つで大推薦です。

 徳島が舞台です。徳島と言えば、『阿波踊り』。これをストーリーの中の重要な位置に置き、その高まりと興奮を、ストーリーにうまくとり入れてドラマチックに仕上げています。

 私は初めて聞いたのですが、眉山(びざん)という山は、徳島では超メジャーな山だそうです。徳島出身の人にとっては、眉山と聞いただけで、故郷のイメージと思い出が湧いてくるのでしょう。

 私は最初題名は<まゆやま>と読むと思っていました(笑)。眉山(まゆやま)とは、女性がお化粧の時に眉を描くこと、それが美しい女性の山のようだから、眉山と題名がついたのかと思っていました。眉を描くことは、何か女性を象徴している気がしていましたから…(笑)。映画になったこの山は、徳島のどの方面から見ても、眉の様になだらかで美しいから、眉山と名がついたそうです。

 32歳になる咲子(松嶋菜々子)は東京の旅行会社に勤めているが、徳島にいる母が入院したとの知らせを受け、急遽徳島に帰り母の病院を尋ねる。母は癌で、すでに転移をしていて、手術もできず余命3ヶ月、今年の秋までの命と宣告される。

 母(宮本信子)は、私生児として咲子を生んで一人で育ててきた。娘の咲子には、子供の頃、父親は死んだと伝えてあった。しかし、今回の入院に際して、死を覚悟した母は叔父に死んでから娘に渡してほしいと箱を預けていた。それを叔父の判断で咲子に渡した。

 その叔父から預かった箱に父親からの手紙と写真、自分の誕生日ごとの現金封筒がはいっていた。

 死んだと思っていた父親は、今でも東京で内科の開業医として生きていた。独身の母は、結婚している父と東京で出会い、恋に落ちた。妻ある身の彼はなかなか会うことができず、彼の故郷である徳島に旅をして眉山をみたのが最後の思い出となった。

 東京から、彼のふるさと徳島に移り、そこで咲子を生んで徳島で暮した。眉山と娘が支えであった。

 宮本信子が、実にうまい。10年ぶりの映画だそうだが、そんな感じは受けない。いつもながら歯切れのいいタンカは、見ていて気持ちがいい。そして、年はとっていても着物を着るとピシッとなる。

 松嶋菜々子も、涼やかで良かった。咲子と病院の先生(大沢たかお)との恋がさわやかで、この映画に良きアクセントを与えた。母親とは反対の幸せな恋、そして結婚。

 母の死に臨んで、今まで聞けなかった出生の秘密を聞き出す。ひたすら堪え忍んで、娘を女1人で育てていく、そしてその秘密をあくまでも守る抜く。好きな人のことなら、思い出だけでも生きていける。その子供を支えとして……。これは女性だけの特性か?大切な人を守るため、自分が耐える、そのいじらしさにまた涙。

 阿波踊りのメイン会場での、ラストシーンで、30年ぶりに会った二人が、遠くでアイコンタクトをするシーンがあるが、二人が理解しあうには、それだけで十分でした。

 阿波踊りのシーンは迫力があり見応え十分でした。さすが徳島ですね。ラストシーンは必ずそうなるとわかっていたけど、やっぱりそうなった(笑)。そこで、また涙です。私の後ろ横でも鼻をすする声が、あちこちで……。

 死後の<臓器の提供>ではなくて、<献体>という形があることを初めて聞きました。献体とは、医学生の解剖のために、遺体を提供することです。これは自分の大好きな人が医者であったことへのプレゼント。

 献体する時に母が書いた医学生へのメッセージに<我が娘、咲子は私の命でした。>とありました。これでまた涙です(笑)。

この映画はさだまさしの原作。彼の歌の詩のすばらしさは、定評があるが、それと同じようにこの原作も実に日本人の心情をつかんでいます。

 <バベル>も<絆>とか<人間のつながり>をテーマにしていましたが、それと比べて私的には、はるかに心に伝わってきました。
 

 

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