バベル

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バベル h19.5.26

 この映画あまり私的には良くありませんでした。みている途中から、☆をいくつにしようかと悩んでいたんですが、最終的には☆3つでした(笑)。
 だいたい、見ている途中にそんなことを考える自体、映画に集中をしていない証拠ですよね(^_^;)

 だんだんと盛り返してくれることを期待していたのですが、後半多少の盛り上がりはあったものの、期待したほどではなくて残念でした。

 アカデミー賞であれ程高い評価を受けたのだから、面白くないわけがない、きっと私の気がつかない所に良い所や感動が、そして深い意味があると思ってじっと画面に見入っていたのですが、私には最後までその良さがわかりませんでした(笑)。他の人の評価も教えてもらいたいものです。

 4つの地域(モロッコ、アメリカ、メキシコ、日本)の4つの家族の物語。日本人ハンターがモロッコを旅した時に、世話になったガイドに譲ったライフルが、モロッコの羊飼いの少年に渡り、その少年ががふざけて撃った銃が、偶然、バスで通りかかったアメリカ人の観光客の妻に当たって、重症を負ってしまいます。

 その事件をきっかけに、その衝撃が多方面に伝わって行き、4つの家族の現状と苦悩をあぶり出して行きます。丁度、湖面に石をなげると波紋が広がっていくように……。

 この映画はブラットピットが演じたアメリカ人夫婦のリチャードとスーザンが中心です。この二人が子供を置いて、モロッコ旅行に来ていたのは、夫婦の危機を乗り越えるため、二人だけの時間を過ごすため……。ここら辺の事情をもう少し詳しく教えてほしかった。ラストの方で、3人目の子供が死んだ時、逃げたとありました。これは浮気のことかな?それとも?

 この夫婦と子供と、さらにメキシコ人の家政婦、そして、百歩譲ってモロッコの家族までは許せるとしてもどうして東京が必要であるのか?朔太郎的には、無理にこじつけているような気がしてなりません。監督は、東京で、東京の家族で何か言いたかったのでしょうか?私にはわかりません。

 菊池凛子はアカデミー賞の助演女優賞にノミネートされたので、大注目で見ていました。でも、演技うまかったですか?(笑)私にはわかりません。

 私的には、チエコよりも、その友達で少しだけしゃべれる友達の方がうまいし存在感があった気がします。

 そしてなにより、彼女の演じている女高生チエコの存在の不自然さ、現実感がまるで感じられない。そして、どうして、あんなに裸になる必要があるのか、飢えた女のように、男を誘ってセックスを求める必要があるのか?それも、大人の歯医者とか刑事とか、セックスの相手としては、同世代の男の子がいるし、その気になれば、援助交際だって可能です。結局、監督としては、チエコはそこまでの不良ではないと言いたいのでしょうか



 役所広司の演じる父親との確執。母親が銃で自殺したのは、何か彼女の行動と関係があるのか?その原因は、父親にあるというのか?その原因は?それとも彼女の存在が、母の自殺へとつながっていったのか?そのことから、解放されるために、刹那的な生き方をしているのか?そして、なぜ、ベランダから飛び降りたと嘘を言うのか?ここら当たりが大きな心の闇。もっともっと深く掘り下げてほしかった。

 高級マンションの最上階。そこに住んでいるのは、父親の収入が高く、何不自由なく豊かな生活が出来ている証拠。画面で見る限りは、父親も普通(それ以上に)に良い父親である。

 それなのに何を不満に思っているのか?心の闇が見えない。家に帰ったら、年頃の娘が全裸でベランダに立っている?そんな家庭がどこにある(笑)?

 そして、その格好で、手をつないで心が触れあう。そんな安易なことでチエコの問題は解決できることなの?何も変わっていないのでは?刑事への手紙にヒントがあるの?では、何によって、親子のきずなはつながったのか?


 子守であるメキシコ人のアメリアは、この事件で息子の結婚式に行かれない。彼女こそ最大の被害者。なんの摘みもないのに……。

 仕方なしに、子供をメキシコに連れて行くことで不幸になる。不法滞在であっても、15年間アメリカで頑張って働いたものがすべてがパーとなります。メキシコの現状とアメリカとの国境の問題は深刻ですね。でも、ラストで息子の所へ帰り、一安心。でも、何も問題は解決していない、いやこれから始まると言って良い。
 
 それぞれの話に、最後は一応の希望の灯りを見せてくれました。アメリカ人夫婦には、妻のケガによって夫婦の絆が戻ります。モロッコ人には、弟の正直さが戻り、父と兄をかばいます。

 東京はモロッコとの対極として、描かれているのかもしれません。まさしく虚飾の街、虚栄の街です。

 期待をして行くと、裏切られるそんな映画でした。といっても、期待が大きかったのだから、水準以上の映画であったことは確かです。

 バベルの塔とは、人間の愚かさの象徴です。営々と気づきあげてきたと思っていた、夫婦、親子の関係も、一つの事件(ライフル、子供の死、母親の自殺)をきっかけにもろくも崩れて行きます。丁度、バベルの塔のように……。
 

 

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