恋におちて

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 しっとりとした雰囲気で描かれた大人の恋愛でした。けっして、波瀾万丈のストーリー展開ではなかったですが、飽きさせません。それは、二人の演技力のため。言葉にならない言葉、行間を読むような、表情や動きには言葉以上のものが表されていました。

 W不倫だけど、なぜか応援し許せてしまうのは二人に真実の愛があるからでしょう。そして、いやらしさがない、純粋な愛だから……。お互いに連れ合いにもやさしい気づかいがありました。特に、フランクの奥さんはすばらしい人。こんな人がいるのに、どうして?という疑問が……。結局、人を愛するのに理由はいらないんですよね(笑)。

 ありそうだけど、現実にはありえない二人の出会い。映画の冒頭からの、すれ違いシーン。駅、デパート、書店。特に公衆電話でのシーンは、まるで今風のコントのような面白さ。

 お互いの親友は、不倫、不仲、浮気。そんな親友にフランクは言います。「俺の取り柄は浮気をしないこと。」それが……。モリーも同じく、自分が親友と同じようなことになるとは思ってもいなかった。

 書店での出会いは知的な匂いがします。お互いに連れ合いに、クリスマスプレゼントとして本を買う。本のプレゼントは私も好きです。特に自分の感動した本を送るのは、自分と同じ感動を体験してほしいとの願いから。もちろん、好きな人から送られるのももちろんうれしいことです。

 電車での偶然の出会い、そしてその偶然をいかすのは勇気。思うように言えないフランクの気持ちを察して、<9時4分の電車>に乗ると、ぼそっと言うモリー。そして、次の朝フランクは、それに間に合うように必死で走ります(笑)

 電車でのデート。でも、モリーの一つ前の駅で彼が降ります。そうすると、迎えに来ている愛妻と子供たちがいて、楽しい光景を見てしまいます。その時のモリーの辛そうな表情が印象的でした。

 モリーには子供がいません。夫との不仲は、最初の子供の出産に関係があるみたいですね?父親の重病、夫とはしっくり行かない関係が、フランクに引かれていく、モリーの気持ちの根底にありました。

 電車の中のデートは気持ちよくわかります。私も経験があるから。そして、モリーがだんだん綺麗に輝いてくる不思議。フランクに出会い、恋をする前と後ではあきらかに彼女の輝きが違います。肌の艶と輝き、表情が豊かで明るいこと。

 病院で待ち合わせをした時。食事でもと誘うフランクに、「私達は既婚者だから」と彼女は断ります。そうするとフランクは「既婚者だってランチは食べるでしょ」と誘う。文章で書くと、おしゃれでないけどデニーロがやるとばっちし決まります。

 駅で待ち伏せをしたり、電車の中で偶然を装ってあうこと。偶然に助けられ、偶然を必然に変えていった恋でした。出会いとはある意味偶然ですが、それを継続して発展させていくには、それを必然に変える勇気が必要です。

 いけないと思えば思うほど引かれあっていく二人。別れや逢えないことがより大きな愛を生みました。だから、結果的にはヒューストンに彼が行く時逢えなかったことがさらに愛を深めたわけです。

 キスシーンの素敵なこと。駅のホームでのキス、仕事で待ち合わせ時間にはるかに遅れてしまい、彼女は絶対いないと思っていた瞬間、彼女が待っていてくれた喜び。そのうれしい気持ちやあふれる愛情を抑えらない熱烈なキスでした。

 二人が出会った、マンハッタンにある、「リゾーリ書店」とは、丸善や三省堂書店みたいなものでしょうか? 書店の出会いも捨てがたいね、これから書店に行く時はおしゃれをして行きます(笑)。

 モリーがフランクとのデートのために、何度も何度も服を取り替えるシーン。服だけでなく、髪をロングにしたり、束ねたり、ため息ついたり、自信をなくしたり、女心を表すこのシーンが素敵でした。

 モリー役のメリル・ストリープは<ミュージックオブハート>の印象が強いですね。そこでは、中年の頼りになる音楽教師、バイオリンの指導でハーレムの子供たちをカーネギーホールへ導きます。その時には女性を感じさせませんでした(笑)。<マジソン郡の橋>の苦悩する人妻役、イーストウッドの印象はあるけど、彼女の印象は薄い、いつかもう一度見てみましょう。

 ダイアン・ウィースト(モリーの親友役)は、可愛くて童顔で男好きのする顔立ちで、私の好きなタイプの女性です。毎年、クリスマス休暇には若い恋人とリゾートへ行くけど、もう飽きたと言っていました(笑)。アイアムサムの時の渋いおばさん役とは好対照の、キャリアーウーマンでした。

 

 

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