春夏秋冬そして春

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春夏秋冬そして春 DVD h19.11.30

 DVDで「春夏秋冬そして春」を見ました。
このDVDの存在はジェイミーさんのカキコからです。
その時からこの映画が気になり、
レンタル店にいくたびに探していたのですが、
その時は見つからず、諦めかけていた時に偶然見つけました。
見た後で、これほど映画の意味を考えさせられたのは久しぶりです(笑)。

 監督の人間観、人生観を強く感じました。
その根底に仏教的なもの、東洋的なものを感じたのですが……。
後で、インターネットで監督を調べた時に、
この監督がキリスト教徒であると聞きました。
でも、この映画はどう見ても、
仏教的な映画だと思うのですが……。
でも、この映画が外国から火がついたということを考えると、
仏教だろうとキリスト教だろうと、
人間の生き方というのは世界共通なんでしょうね。

 深くて、難解な映画(物語そのものよりも、その後ろにあるもの)
ですから、すべてを理解することは難しいけど、
私の感じたことを少し書いてみます。

 一人の人間の一生を、春夏秋冬で表現するだけでなく、
「そして春」によって循環させることで、
営々として続く人間社会というものを描いている。
人は生まれ、純真無垢な少年期を過ごすが、
やがて罪を犯し、その罪に苦しみながら生きていく。
人生は苦であり、つかの間の喜びは幻である。
この映画から徳川家康の「人の一生は重荷を負て、遠き道を行くが如し…」
という言葉を思い出した。

 愛という欲望が生まれ、それが執着を、そして嫉妬を産み、
やがて人は罪をおかす。
でも、この映画はだから愛するなとはいっていない。
愛を知らない人間はかたわである。
愛を知り罪を犯しても、その後の反省や悔い改めの気持ちが重要で、
そこに人間としての成長がある。
一見愛を否定するするような映画に思えるが、
それは浅い見方で、欲望や愛があり、
それに葛藤する己がなければ人間的な魅力も成長もない、
生きる意味もない。

 東洋的(仏教的)な人間観、人生観を
水墨画を見るような映像で美しく描いている。
少し骨太の映画、人生を深く考えて見たい人には
超お奨めで、朔的には☆は4つです。

「春」。
 山奥の湖に浮かぶお堂に老僧と幼い子供が住む。
ここは船を使って湖を渡ることでしか陸に行かれない。
浮世と隔絶された世界である。
二人は親子ではないが、実の親子以上に深いつながりを感じる。
天真爛漫であった子供が、いたずら心から魚や蛙、蛇に石をつないで
その苦しむ様を見て楽しんでいる。
それを見た和尚が懲らしめるために、この子供に石を抱かせる。
同じ苦しみを体験させるためである。
お前が石を抱かせた中の一匹でも死んでいたら、
お前は一生心に石をつないで生きていくことになる。
これがこの映画のテーマでもあり、重要なポイントである。

「夏」。
 やがて少年は青年に成長し、老僧の弟子になる。
そこへ母親に連れられた同じ年代の娘がくる。
彼女は精神を病んでいて、それを直すためにここへきた。
やがて美しい娘に青年は好意を持ち、
愛したい、愛されたいという欲望が生まれ、二人は結ばれる。
しかし、度を超えた二人の行動を良しとしない和尚は、
娘を家に帰し二人を引き離す。
それに耐えられない青年は、仏像をもってお堂を去る。

「秋」。
 老僧は一人の静かな日々を過ごすが、
ある日、お堂を去った青年が、
裏切った妻を殺して逃げていることを知る。
やがて妻を殺した青年は壮年となりお堂に帰ってくる。
彼の心は怒りであふれていた。
老僧はその怒りを収めるために、般若心経をお堂の床に書き、
それをナイフで彫らせる。
掘ることで怒りは収まっていく。
その作業を待っていた刑事に逮捕され、連れられて行く。
その後、和尚は自らを荼毘に服す。

「冬」。
 刑期を終えた彼が帰ってくる。
体を鍛え、仏門の修行をする。
そこへ赤ん坊を背負った見知らぬ女(顔を布で覆っている)が来て、
赤ん坊を置いていく。

「そして春」。
赤ん坊は成長し、あの時と同じように、
幼い子供はいたずら心から罪を重ねていく。

監督 キム・ギドク(金基徳)について

この映画について
[製 作 年] 2003年
[監 督] キム・ギドク(金基徳) [第9作]

『魚と寝る女』『悪い男』など、それまでそのショッキングな内容で私たちを驚かせてきた韓国の異才、キム・ギドク。1年に1本というハイペースで作品を作り続け、近作はベルリンやベネチアなどの映画祭で受賞が続き、いま、世界でもっとも注目されている監督である。さて、この新作は今までの作品とは大きく作風を変え、詩情溢れる芸術作品になっており、今までのギドク・ファンは驚くだろう。

韓国映画としては、異例の世界的大ヒットを放った本作。全米では興行収入200万ドルを超すロングラン・ヒットとなった。

1996年監督デビュー以来、人間の痛みと悲しみ、社会への憎悪を独特の映像美と残酷性で描いてきた、天才作家キム・ギドク。韓国では新作を発表するたびに暴力的、性的虐待など韓国マスコミの注目を浴び物議をかもす一方、熱狂的な支持者を育成<異端のカリスマ>として絶えず注目を集めている。

監督9作目の本作は、韓国映画界最高の栄誉、青龍賞の最優秀作品賞制覇を果たす。そして、2004年ベルリン国際映画祭では、最新作「サマリア」で最優秀監督賞(銀熊賞)をじょしょうした。

1960年生まれ 韓国出身
 

 

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