山桜 h20.6.7 名演小劇場
しっとりとして、やわらかい雰囲気の映画で
始めから藤沢周平ワールドに浸ることができます。
しのぶ恋、プラトニックで一人の人を思い続けて行く恋
今では流行らないかもしれませんが、私は好きです。
朔的には☆は3つ半でお薦めです。
いつものように、東北の小藩である海坂藩が舞台です。
藩の財政を救うという名目で、
藩の重臣が私腹を肥やしています。
藩内の武士はそれにおもねるものばかりで、
誰も手を出せないため、
百姓は塗炭の苦しみを味わっています。
手塚弥一郎(東山紀之)は、百姓の実状を知る藩の役人、
この百姓の窮状を救うためにある決意をします。
野江(田中麗奈)は最初の夫に早く死なれ、
再婚した家で苦労をしています。
この二人がある日、山桜が縁で出会い、
秘かに愛を育てていきます。
果たして二人の運命は?
<山桜>のイメージは、
抑えられた、品のある華やかさ、でも桜としての潔さもあります。
地味でめだたないけど、生き方の清く美しい、
そんな山桜のような若い男女の物語です。
自分にとって大切なものを信じて生きていく、
これは、今の時代にもっともかけているものであり、
それを信じて生きることが真の幸せかもしれません。
二人にとって決して良い状況ではなくても、
幸せな二人と感じるのは、そのせいでしょう。
そして、その一途さが感動を呼びます。
野江(田中麗奈)は芯が強く、毅然としていて、
再婚の夫の横暴にも、
耐えることは耐えるが、だめなものははっきりとだめと言えます。
江戸時代、女性の弱さが強調されますが、
そんな人ばかりではないんですね(*^_^*)。
手塚弥一郎(東山紀之)は、
義を重んじる、さわやかな武士です。
映画の中では、一度しか立ち回りのシーンはありませんが、
殺陣の鮮やかさ、切れの良さは圧巻です。
藤沢周平作品には、剣術の達人がでてきますが、
今回は圧倒的に強く、
それがものすごく気持ち良かったです(*^_^*)。
会話が非常に少なく、それを補うように、間とか目が物語っています。
これは日本人にしかわからないことかもしれませんね。
遠回りの愛。
遠回りしなければわからない愛もあります。
野江は2度の結婚を失敗した後、本当の愛にたどり着きました。
野江を取り巻く3人の女
自分の母、叔母、そして手塚の母親
それを手本に野江は生きています。
特に叔母のこと。
結婚して早死にした夫の家を出て
一人で暮らして死んでいきますが、
この姿が野江の人生とオーバーラップします。
野江の母(檀れい)はまさに日本の古き母親像、
やさしさと耐える心をもっています。
そして、手塚の母(富司純子)の凛とした姿。
手塚の母はどんな人が演じるかと思っていたら、
富司純子が出てきたので、
その瞬間から涙が止まらなくなりました(*^_^*)。
義のため罪人となった息子のため、
誰一人尋ねて来ない家で、凛として耐えています。
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