フィクサー

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フィクサー h20.11.9 DVD

 朔的には☆は3つです。
 この作品は昨年度アカデミー賞で7部門にノミネートされ、
ティルダ・スウィントンが助演女優賞に輝いた作品ということで見ました。
彼女の演技は、助演女優賞受賞と言われてみればなるほどですね(*^_^*)。

 アメリカの大企業、農薬会社のU・ノースは、
農薬汚染で、ある地域の住民から集団訴訟を起こされています。
それを担当する会社側の弁護士は、
ある大手の弁護士事務所のパートナーである
アーサー・イーデンス(トム・ウィルキンソン)で、
彼は正義感の強い優秀な弁護士でした。

 ある時その訴訟について、
明らかに会社が悪であるという証拠を手に入れ、
悩みに悩んだ末、会社を裏切り原告側の住民の味方をすることを決意します。
それが世間にわかると、事務所の信頼は一気に揺らいでしまうので、
それをなんとか抑えようと、事務所はフィクサーと呼ばれる
マイケル・クレイトン(ジョージ・クルーニー)に、
そのもみ消しを依頼します。

 彼は親友のアーサーを心から心配し、助けようとしますが、
その甲斐もなくU・ノースの法律部門の責任者
カレン(ティルダ・スウィントン)によって消されてしまいます。
そして、マイケルも命をねらわれます。
そこで、悩んだ末出した彼の結論は……。

 でも、この作品がどうしてアカデミー賞の7部門に
ノミネートされたのでしょうか?
不思議と言えば不思議です(*^_^*)。
私の思うには、現代アメリカの病根の一つである
「訴訟の問題」と「弁護士の世界」を描いていたからではないかと思います。
昨年度の受賞作品である
「ノーカントリー」や「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」も、
広い意味で、現代アメリカの直面する問題を扱っていました。
それを考えると、アメリカに関する「メッセージ性の高い」ものが、
アカデミー賞では受ける気がします(^o^)。

 助演女優賞のティルダ・スウィントンは、
女性がキャリアとして男の世界で生きていくことの
栄光と挫折をうまく演じていました。
鏡に向かって、明日行われるテレビ局の
インタビューの練習をする所が特に良かったです。
彼女の役柄は、上に認められ、自分が出世していくために、
自分の能力の高さをアピールすべく
問題を一人で抱えこんで自滅していきます。

 訴訟王国アメリカ、誰もがちょっとしたことで訴訟を起こし裁判をします。
裁判も日本と違ってペリーメイスンよろしく、
弁の立つ弁護士が言葉巧みに陪審員の心をつかみ
明らかに黒であっても白にしてしまいます。
もっともペリーメイスンはそんなことはしませんが……(^_-)。

 裁判に勝つか負けるかは弁護士の力、
でも優秀で力のある弁護士はお金がかかります。
ということは、アメリカの裁判は金持ちに有利であるともいえます。
これを考えるとアメリカの陪審員制度も大きな問題で
「12人の怒れる男」でもその辺りのことが描かれていました。
また、「アリーマイラブ」には、弁護士によって左右される
アメリカの裁判制度や今時の弁護士の実態がよく描かれていました。

 「黒を白にさせてしまう」、
このことが弁護士の力によって可能な世界ですから、
高い金を払っている顧客は顧問弁護士に、
当然それを願うもので、
そのプレッシャーは並大抵のものではありません。

 良心の強い人にとっては、弁護士は辛い仕事ですね。
もし自分が明らかに犯人である人の弁護を依頼された時、
拒否することができれば良いのですが、
それができなかった時は、
その犯人にとって良い結果になるべく戦うのですから
時にはマスコミや国民を敵に回してでも
やらなければならないこともあります。

 まあ、それでも個人の犯罪の弁護であれば、自分に罪はないわけですが、
大会社の顧問弁護士ともなると、その会社のために弁護して行く過程で、
場合によっては犯罪に巻き込まれてしまう恐れがあります。
 

 

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