ノーカントリー

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ノーカントリー no country for old man DVD h20.8.7

 ノーカントリーをDVDで見ました。
昨年度のアカデミー賞の作品賞に輝いた作品で、
気合いを入れて見たのですが、
正直言って何が言いたいのかよくわからなくて、
そのあっけないエンディングを見ながら、
ぽかーんとしていました(^^;)。

 ただ、主題はすっきりしないとしても、
作品としてはものすごく迫力があり印象に残っていて、
よい作品だと思います。
さすが、コーエン兄弟で、
朔的には☆は3つ半で超お薦めです(*^_^*)。

 1980年代のアメリカ(テキサス)が舞台で、
テキサスはカウボーイの国であり隣はメキシコになります。

 この映画には3人の主要な人物が登場します。
麻薬取引の現場で偶然2億円という大金を手にし、
持ち逃げしたモス(ジョシュ・ブローリン)と
大金を見つけるために組織から派遣された
殺し屋のシガー(ハビエル・バルダム)と
地元の保安官のベル(トミー・リー・ジョーンズ)です。

 この中で特に演技は光っていたのは、
シガー役の、ハビエル・バルダムです。
彼が、「海を飛ぶ夢」の主人公役であったことを
後で知り、なるほどと思ったものです。
なお、この「海を飛ぶ夢」は感動の名作でお薦めです。

 映画のおもしろさは、逃げるモスを執拗に追いかける
シガー、この二人の駆け引きです。
冷徹で何の感情もなく人を殺すシガー、
事件に関係のない人間もばったばったと殺して行きます(^_^;)。
その殺し方が、圧縮空気を使ったエアガンというのも
不気味ですが格好いいですね(^o^)。

 何の感情もなく、ロボットのように、
与えられた命令に従っていくかと思いきや、
ボスさえも自分を裏切ったとわかれば
簡単に殺してしまうのですから、
人からの命令ではなく、自分の論理、自分の判断で動いている人物です。
コインの裏表で人を殺すのですから、なんのことかわかりません(>_<)。
圧倒的にタフで、自分で手術をして
けがを治してしまうのですから、不死身みたいですが、
でも、そのタフさ加減が人間的であり、決してSFの世界ではないことに
共感を覚え、親近感を感じさせます。

 逃げるモスはいわゆる悪党ではなく、
狩りが趣味であるテキサスの普通の市民ですが、
偶然、麻薬取引のいざこざで大金が置き去りにされていることを知り、
覚悟の上で金を盗み逃亡をします。
そして、臆病ではないモスは
ただ、逃げるだけでなく、組織の殺し屋の行動を予想し対策を練って
ある時は裏をかいて戦っていきます。
そんなお互いの駆け引きが面白かったです。

 この二人のバトルに迫力と臨場感があり、
緊張のしっぱなしで目が離せません。
人間的で、かつその限界を超えての戦いでした。
これで十分映画の価値はあるのですが、
それだけでアカデミー賞の作品賞をとったわけではありません。
真の主役は保安官のベスです。

 映画はこの保安官のナレーションで始まります。
3代続いた保安官の仕事、
父の背中を見ながら保安官の仕事に励んできたこと。
でも、このごろのアメリカの犯罪は
自分の想像を超えるものばかりで、
とてもやっていられない。
それと昔の保安官は、
ピストルをもっていなかったということも語っていました。

 西部劇に登場する 保安官は警察官というよりも、
警察署長のような役割で、強い権限と信頼がありました。
今のアメリカにも州によっては保安官制度があり、
保安官は選挙で選ばれるそうです。

 保安官のベルは、退職間近で、
(ひょっとしたら、保安官には退職という制度がなくて
勇退するまではその職にとどまっているのかもしれません)
この事件がきっかけで退職をします。

 自分の身近で起こった麻薬を巡る大量の殺人、
そして大金をもって逃げたのが、自分の知っているモスであり、
それを追いかけるのが残忍冷酷なシガーであること。
モスを何とか助けたかったが、
力及ばず、シガーも逮捕できなかった。
これらは自分の想像を超えた犯罪であり、
自分の力の限界を感じて職を辞します。

 題名の<no country for old man>は、
古き良きアメリカを知っている老人には
今のアメリカは理解不能で、生きていけないという感じかな?
アメリカの変化がどのくらい急激であったのかは、
日本人には理解ができず、
それがこの映画がわからないことにつながるかもしれませんが、
今の日本でも昨今の殺人の<誰でもいいからとか>
<人を殺したいから>の考え方は理解できず、
よく似た状況である気がします。

 退職をして最初の朝の食卓で奥さんに夢の話をして終わります。
父が出てきて、ハイキングに一緒に行き、
父は先に行ってしまった。
先で待っていてくれると思ったが、待っていてくれなかった。
これはどういう意味なのか?

 この後、一気に画面が暗くなってエンディングです。
あっけにとられました(^^;)。

 父とは昔のアメリカのこと、それをめざして自分は頑張ってきた
でも、アメリカは変わってしまった。
今のアメリカは昔のような良きアメリカではなくなってしまった。

 1980年代のアメリカを描くことを通して、
今のアメリカの状況を訴えた作品です。
シガーの不気味さは、9.11以後のテロの不安につながり、
1980年でもそうなのだから、今ならもっとそうであると言いたいのかな?
 

 

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