ピアニスト

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ピアニスト h20.9.27 DVD

 朔的には☆は3つ。
隠された記憶のミヒャエル・ハイネ監督の作品ということで
この映画を見ました。
 なお、この映画は2001年カンヌ国際映画祭グランプリ、
最優秀主演女優賞、最優秀主演男優賞受賞をとった作品ですが、
シネパラの女性陣にはあまりお薦めではありません(^_^;)。

 とにかくびっくり仰天の映画で、
前半はピアノのレッスンでクラシックの名曲がながれ、
格調高い音楽の話題に終始していたのに
半ば辺りから突然、彼女の異常な行動が飛び込んでくる。

 厳格なピアニストにあんな隠れて性癖があるとは……。
抑圧された性は、増幅されて心の奥深く潜ってしまう。
エリカ(イザベル・ユペール)は少女の時から、
母親にコンサートピアニストになることを仕組まれて
すべてを犠牲にして、ピアノに打ち込んできた。
恋愛は一切御法度で、
男と話すこともきっと禁じられていたのでしょう。

 いけないと言われると人はやりたくなるもの。
セックスは特にそうで、妄想がどんどん膨らんで
自分では収拾がつかなくなる。
そして、エスカレートしてアブノーマルで危険なものとなる。
そんな彼女の気持ちはよくわかります。
自分も学生の時に、勉強ばかりしていて、
同じような経験をして
セックスのことが頭から離れずに困りました。

 想像するに、彼女は40代後半で未婚の女性、
おそらく処女でしょう。
コンサートピアニストにはなれなかったけど、
ピアニストとしては一応成功をした彼女ですが、
あまりにもバランスが悪く、人間的には未熟です。

 そのバランスを保つために彼女は<アダルトビデオを見たり>
<カーセックスを覗いたり>して発散していが、
いつしか、妄想は男とセックスをして、しばられたり
殴られたりするマゾの世界へと広がっていく。

 何ともエリカは不思議な女で、
行動がよく理解できません。
厳格なピアニストで、指導も厳しく、
自分も厳しく律しているかと思いきや……。
まったく正反対の行動をとる。

 母親との確執を見ると、本当は母親を愛しているのか
憎んでいるのかわからなくなる。
この母親は、娘の成功が自分の幸せだと思っていて、
徹底的に娘を管理して自由にさせないので、
エリカはその束縛から逃れたいと強く思っている。

 教え子の娘に才能があり、自分を超えるのではないかと恐れて、
ガラスの破片をコートのポケットに入れてけがをさせる。
「私はすべてを犠牲にしてきた」と
その母親が言ったのに対して、「それは娘さんでしょ?」と……。
この言葉は彼女の心の叫びで、
母のためにすべてを犠牲にしてきた自分が
そこから今も抜けることができないでいる。

 エリカの演奏を聴いて、彼女に恋をする青年が現れる。
一途にエリカに思いをよせるワルター (ブノワ・マジメル)、
それをつれなく避けて行く彼女。
しかし行動とは裏腹に、エリカの心は強くワルターにひかれていく。

 そして、トイレのショッキングなシーン。
彼女はどうしてあのような行動を起こしたのか?
青年の愛を素直に受け容れることができないエリカの
鬱屈した性が悲しい。
青春のすべてを犠牲にしなければ、ピアニストにはなれないのか?
でも、それでピアニストになれたとしても幸せといえるのか?

 エリカは彼に手紙で、自分の性癖を詳しく書く。
そこには、マゾである自分を愛してほしいと書いてあるが、
それを読んだ彼は、嫌悪感で彼女を突き放す。
彼の意外な行動にあわてて、彼にわびるけど、
愛は帰ってこなかった。

 そして、ピアノ演奏会の日、
スカートにナイフをしのばせて、ワルターの来るのを待っていたが、
結局彼を刺すことはできず、
ナイフで自分の胸を刺してどこかへ去っていく。

 ハケネ監督は<隠された記憶>と同様に、
彼女のとった不可解な行動の答を出してしません。
それは、見る側が好きなように考えてくださいと
言っているようです(*^_^*)。
 

 

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