愛を読むひと h21.7.4 半田コロナ
朔的には☆は3つ半、超お薦めです。
中年のご婦人が二人、私の席の前の列で見ていましたが、
始まってすぐに過激なセックスシーンの連続で、
さぞびっくりしただろうと想像して、にんまりしていました(*^_^*)。
私は一人で見ていたので全然大丈夫でしたが、
この映画は一人で見る映画で、デートには向いていませんね(>_<)
でも「ラストコーション」と同じく、そのシーンは絶対に必要です。
二人が年の差を超えて、深く、強くひかれていく様が
このシーンを重ねて行くことではっきりとしてきます。
そしてその描写も全くいやらしさがなく、良い感じでした(*^_^*)。
これは本にはできない映像の特典ですね。
1958年のドイツ、
15才の少年ミヒャエル(日本で言う少年という感じではなく
肉体的には立派な大人)は、
21才年長のハンナ(36才)と出会い恋に落ちます。
初々しい少年と、円熟した女性の愛、
少年にとって彼女とのめくるめく日々は、
彼の一生を左右します。
ハンナ役のケイト・ウインスレットは
ものすごく綺麗で、魅力的で、そして、実にうまい。
今では彼女でなければこの役は無理ではないかとさえ思っています。
彼女はこの作品で、昨年度のアカデミー賞主演女優賞をとりましたが、
十分に納得できる演技でした。
36才から80才近くまでを演じていましたが、
自然で違和感は全くなかったです。
そして、ミヒャエルの大人時代を、イングリシュ・ペーシェントの
レイフ・ファインズが演じていて、彼の愁いを秘めた存在が
映画をさらに深めていた気がします。
ハンナの秘密は絶対に言えません(^_^;)。
それがこの映画の映画たらしめていることだからです。
私は小説(朗読者、ベルンハルト・シュリンク著)を
9年くらい前に読んでいたので、彼女の秘密は知っていましたが、
それでもこの映画は十分楽しめました。
記憶の糸をたどるように、9年前に小説を読んだ時の衝撃と感動を
まざまざと思いだせてくれました。
今また小説を読み返しています。
そこから、小説の筋を的確にたどりながら、要所要所を省き
実にうまく映画化しているのがわかりました。
そして、彼女の秘密よりも、二人の関係(恋愛)に重きをおいて
描いていた気がします。時間の問題もありますしね……。
********
9年前に小説(朗読者)を読んだ時の感想を箇条書きにしてありました。
それを、<つぶやき日記>の方へのせておきますので、
興味のある方は読んでください。
なお、こちらは完璧なネタバレですから、
まだ映画を見ていない人、これから本を読んでみようと思っている方は
読まないでくださいね。
***********<つぶやき日記>
朗読者
作者 ベルンハルト・シュリンク
箇条書きのメモのみ
◎ 裁判でハンナが裁判長に言った言葉「あなたならどうしますか?」
◎ 文盲であることをなぜそこまで隠したのか?彼女の出生は?全ての原因が文盲にある。あれほど努力をする女性ならどうして文字を勉強しなかったのか?それとも、文字を勉強することで、自分が文盲とわかることが恥ずかしかったのか?
◎ 青年の冷たさを感じる。あれほど愛した女性なのに突然いなくなっても探しもせずに平静なような気がする。次に会うのが裁判の時である。
◎ 青年は裁判長に彼女が文盲であることを告げなかった。
◎ ナチの収容所のこと。身体の弱い女性を自分の朗読者として指名した。身体の弱い仕事のできない人間からガス室送りになる。それを彼女は回避した。
◎ 捕虜を連れ命令で移動をする時教会に泊まった。そこで火事になったのを助けなかった。
◎ ドイツにとってナチスの傷は相当深い。我々の理解の及ばない歴史的なものがあるのだろう。ユダヤ人の存在も日本人にはわからない部分だ。長い歴史の中で民族がどのように関わってきたかが……。それにしてもナチスのした行為は許されるものではない。
◎ 人間は弱いものである。徴兵制に反対して忌避し投獄されるのはほんのわずかな人で、ほとんどの人がお国のために戦争へ行く。戦争に行けば、自分の命のために相手を殺す。上官の命令であれば人も殺す。それをやらなければ自分が殺される。そんな弱い人間をさばけるのか?裁判長あなたならどうしますか?これがこの本のテーマである。
自分も逆らえないだろう、だから、国が大きく動く、全体として動くことが怖い。全体主義、自分の意志でなにもできない。今でも、徴兵制があればいかなければならない。
◎ 朗読の相手をさせることで命を救うつもりが違う見方をされてしまう。
◎ ハンナのすごさは、事実を否定しないことだ。それを認め、やったことについて償おうとする。(彼女の心の中ではやったことは事実だが、それは仕事をしただけだと思っている。)しかし、その仕事を実行したことがいけないと言われれば、それに従う。
◎ ハンナは最後自殺をしてしまうが、青年と再会し再び昔のように戻れるとわかってから、出所するほんのわずか前である。彼に迷惑をかけたくないという気持ちからか、それとも昔の夢はそのままとっておきたかったからか……。
◎ ハンナは刑務所に入って、青年から本を読むために文字を勉強する。そして、それを克服していく。
◎ 文字が読めないという劣等感。それをいわれない罪をかぶっても知られないように守る。一つの嘘を守るために、もう一つの大きな嘘をつく。
◎ 劣等感は人を消極的にする。常にそのことが触れられるのではないかと考えている。それがわかってしまうのではと考え、行動を躊躇してしまう。
◎ ハンナとミヒャエルとの関係は恋愛だったのか?少年はハンナを性のための便利な道具として使ったのか?そういう部分があったかもしれない。大人への憧れ、大人の女性への憧れ、魅力を感じていた。
妻とはうまく行かなくて離婚し、ハンナの刑が決まってから刑務所にテープを送り、出所後の面倒をみようとする。彼の初恋が彼の一生を決定づける。
初恋は実らなくても、そのままの形で残しておきたいものだ。それがむごい現実(彼女の過去をあばくという)となって、彼の淡い思いをうち砕いていく。
◎ ハンナは少年を……。若い人を好きなのは男でも女でも関係がない。恋愛に年齢差はない。好きと思えばそれだけのことである。彼女は自分の子供の頃を彼に重ねていたのかも……。事情があって学校に行けなかった。それだから、ミハエルが学校に行きたくないと言った時しかった。何を贅沢なことを言っているのか?私は行きたくてもいけなかったと……。
◎ 次は読めなくても本が好き、勉強することが好き、教養を積みたい。人からバカにされたくない。字を読めないのを隠すためにも本を読んで教養を身につけたかったのか?
◎ 恋人に本を読んだやる。これは一つの愛の形、教養を共にする。同一体験をすることで、二人の関係を深めている。
◎ 本を声を出して、その声から読むのと、自ら読むのでは受ける印象が違う。その読み手の感情移入があるから。
◎ ハンナにとってユダヤ人の収容所での少女への朗読の延長として、ミヒャエルに頼んだ。幼きものに頼むことことで、ばれないようにした。自分の自尊心を保つために。
◎ 少年はハンナという大人の恋人とのつき合いによって、同級生の女には興味を示さなくなった。幼稚に感じたのだろう。優越感、同じ年代の男の子に対して、得意の絶頂だったかもしれない。
◎ 突然ハンナはいなくなった。しかし、時がそれを忘れさせ結婚する。しかし、離婚する。ハンナの思いが身にしみていたのか……、香りが忘れられない。心のどこかでハンナと同じような女性を求めている。それが叶えられなくて離婚する。
◎ 法廷で会って、彼女が文盲であったことを、裁判長になぜ言わなかったのか?彼女が命をかけてまで守ろうとした秘密を彼も守って行こうと決意したのか、彼はその時ハンナを愛していたのか?彼は彼女のために何をすべきだったのか?
◎自分が朗読した本のテープを刑務所に送る。しかし、会いにはいかない、これはなぜか?
☆ 文盲という劣等感がその人の一生を左右する。縛っていく。人生を変え、運命に翻弄される。
☆ 国家権力の犯した過去の戦争犯罪を現在で裁く。それも権力の末端にいる小市民が裁かれる。あなたならどうする?
◎ 全編が「あなたならどうしますか?」
@ ハンナのように秘密を隠すために人生を棒にふりますか?言われなき罪をかぶって。
A ミヒャエルのように、ハンナを助けるためには、あなたはどうしますか?
B ハンナのように、過去のナチスに利用される、あなたならどうしますか?
◎ ハンナはなぜ、自殺をしたのだろうか?
・ 少年の思い出を大切にしたい。いまさら、自分の恥をさらすことで、彼に迷惑がかかる。イメージをこわす。
・ 自分が無実のつみであることへの証明。裁判(国家権力)への反抗。
・ 刑務所に入って文字を勉強し、教養を積む内に自分の犯した罪の意味が理解できた。それを精算(刑期をおえれば罪が終わるわけではない。それでは償えないものがある。)したのでは・。
|