まあだだよ(1993) DVD h21.6.28
朔的には☆は3つ半でお薦めです。
『百鬼園随筆』などの随筆家である内田百閨i夏目漱石の門下)と
その教え子達との心のふれ合いを描いた作品です。
百聞は人とは違うユニークな発想ができる、頭の柔らかい人物であり、
世の中の瑣事に関心がなく、
泰然自若として、王道を歩いているような人物です(*^_^*)。
主人公の内田百聞を松村達雄が演じていましたが、
実に味のある名演技で、誰をも彼を好きにさせてしまいます。
映画の中に、彼のユニークなエピソードがいくつか語られていました。
「泥棒を防ぐ方法」
裏口に泥棒入口と張り紙があり、次々と矢印で通路を示し
途中泥棒用の休憩室を経て、泥棒出口へと誘導をします(*^_^*)。
「立ち小便を防ぐ方法」
人間はなぜか同じ場所に立ち小便をする、
だから立ち小便をするなと書いても効果がない。
そこで、先生は立ち小便無用と書いた下に、
はさみの絵を描いておきました(*^_^*)。
「無限に泳ぐ鯉」
新築した家の庭に池をつくり、
そこに大きな鯉を泳がせたいと先生は考えました。
しかし鯉のためを思えば、どんなに長い池を作っても限りがあります。
太平洋でも、アメリカまで行けば行き止まりです(*^_^*)。
その点池に中の島をつくり、円形に池を作れば
鯉は永遠に泳げ回ることができます(*^_^*)。
そんなユニーク百聞先生を慕う教え子が集まり
昭和21年に第一回の『摩阿陀会(まあだだ会)』が開かれました。
それは還暦を過ぎても、まだまだ元気な先生はなかなか死なないので、
そこを洒落て、先生死ぬのは『まあだだかい?』と聞くわけです。
昔子供の頃にかくれんぼをしました。
鬼が隠れる子に対して「まあだだかい」と聞くと
まだ隠れていない子は「まあだだよ」と答えます。
そうしてようやく準備が整うと、
「まあだだかい」に対して「もういいよ」となるわけです。
この声を聞いて鬼が探し始めます。
「死ぬ=隠れる」
死ぬと隠れるは同義語です。
そのため、位の高い方が亡くなることを
<おかくれ>になるといいますよね。
戦前の旧制高校、古き良き時代の師弟関係です。
今は先生を尊敬しなくなりました、
というか尊敬できる先生が少なくなりました。
これも、時代の流れなんでしょうか?
映画の冒頭で、先生が旧制高校の生徒を前にして、
突然自分が退職するとうち明けます。
その時の先生の話のうまさ、面白さに思わず聞きいってしまいました(^o^)。
品があって、質の高い笑いで元気をもらえる笑いですね。
百聞先生は旧制の高校で、ドイツ語を教えていますが、
生徒達はそれ以外に多くの知識、生き方、考え方を教えてもらいます。
家に遊びに行き、一緒に酒を飲み、泊まっていきます。
奥さん(香川京子)とも懇意にしていて、
一つの大きな家族のようですね、
そんな先生を慕う卒業生が集まり、
「摩阿陀会(まあだだ会)」ができました。
我が道を行き、ものにほとんど動じない先生も
ノラの件では全くの形無しでした。
家に迷い込んだ捨て猫を拾い、ノラと名付けて可愛がっていたら、
そのノラがある日突然いなくなります。
子供がいない夫婦にとって、
ノラはその身代わりでした。
いくら待っても帰って来ないノラのことが心配で、
先生は何も手に付かず、食事も喉に通らないし、
眠ることもできません。
先生の世話を親身になってする、まあだだ会の幹事達
井川比佐志、所ジョージ、油井昌由樹、寺尾聡の面々、
戦中・戦後の物資の乏しい時代を考えると、
まさに「仰げば尊し」の世界ですね(^o^)。
引っ越しや新居の世話までしますが、
みんなものすごく楽しそうです。
そこが先生の人徳です。
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