ゼロの焦点

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ゼロの焦点 h21.11.29 半田コロナ

 朔的には☆は3つ(55点)です。
松本清張のこの小説は高校生の時に読みました。
どうしてこの男は二重生活をするのか?
その時はよく理解できませんでしたが、
何か子供にはわからない、
どす黒い秘密の味がしたものです(*^_^*)。
そして北陸の寒さと暗さだけが残りました。

 その寒さと暗さは冬の北陸の持つそれであり、
戦争の傷痕を引きずった人のそれでもあります。

<あらすじ>
 見合い結婚でしたが、信頼に足る憲一と結婚した禎子にとって、
幸せな結婚生活が送れるはずでした。
しかしその夫が結婚式から七日後に、
仕事の引継のため金沢に出かけ、
そのまま行方不明となります。

 夫を心配した禎子(広末涼子)は
夫を捜すために金沢へ行きます。
そこで禎子の見たのは夫の全く知らない顔でした。
そして夫のことを調べる内に、この失踪には二人の女
久子(木村多江)と佐知子(中谷美紀)が
関わっていることがわかってきます。

 一年ばかり前に久我美子主演・野村芳太郎監督の
「ゼロの焦点」(白黒映画・1961年制作)を見たので
小説で忘れていたストーリーも、しっかりと思い出しました(*^_^*)。
その映画は白黒であるため、
物語の寒さと暗さは十分に伝わってきましたが、
それでも原作ほどの感動はありませんでした。

 今回はストリーよりも、
前宣伝のように3人の女優に注目し、どのように演じるか?
またどのような脚色がなされるかを注目して見てきました。

 導入で二人が結婚に至るまでの経過を描いたことや
金沢市に初の女性市長が誕生することを入れたり
佐知子の夫が妻の罪をかばって死ぬという等々、
小説とは違う展開にしていたことは新鮮でした。

 でも3人の女優がいまいちぱっとしません。
というか活かされていません。
それから一番大事な推理小説としての面白みが出ていません。
それは私が原作を読んでいたからとばかりは、言えない気がします。
結果この映画も、原作を上回ることができなかったと私は思います。

 私にとっては原作の小説があまりにも凄い出来なので
それを超えることはよほどのことがない限り無理だと思っています。

 「生まれ変わる」がテーマでした。
生まれ変わることができる人とできない人。
過去を清算できる人とできない人。
これは個人の考え方・生き方の問題です。

 人間は誰でも大なり小なりの秘密を持って生きています。
それをカミングアウトする勇気があれば
どんなに楽に生きられることか…………。

 今持っているものが多くて、
それに価値があり、絶対になくしたくないと思っている人は
それができず、この映画のように
過去に怯えて生活をして行くしかありません。

 今もあの時代と同じで、
すべて人の過去を許し、受け入れることのできる社会にはなっていません。
果たして人間って進歩しているんでしょうか?
 

 

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