小さな村の小さなダンサー h22.9.18 名演小劇場
朔的には☆は4つ(80点)で、超お薦めです。
あまりの感動に涙が止まりませんでした。
クラシックバレーの好きな人は必見で、
<白鳥の湖>を始め、有名なクラシックバレーが堪能できます。
中国からの亡命を経て世界的な名ダンサーとして活躍した
リー・ツンシンの自伝(毛沢東のバレエダンサー)の映画化です。
主演をつとめた英国バーミンガム・バレエ団のプリンシパル、
ツァオ・チーの華麗な舞台シーンもたっぷりと楽しめます。
クラシックバレーが全てのダンスの基本であることがよくわかりました。
主人公は11才から、バレー一筋で鍛えられ、
その与えられたセンスと努力でスターになって行きます。
私の大好きな<ウェストサイドストーリー>の
ダイナミックなダンスの原点をそこに見た気がします。
1970年代の中国は、文化大革命が全土に吹き荒れた暗黒の時代でした。
その時は江青(毛沢東夫人)が中心となった4人組が
中国を牛耳っていた時代でした。
中国山東省の田舎に江青の命を受けて
バレーの素質のある少年少女を捜しに、北京から使節団が来ます。
11才の少年、リー・ツンシンは、
人並みはずれた体の柔らかさで選ばれ、
村の英雄として北京舞踏学院に入学が許可され、
厳しいバレー尽くしの毎日が続いて行きます。
不器用でなかなか上達しないツンシンを
チェン先生だけが慰め励ましてくれました。
そんなある日、学院を訪れた江青は、
学院の演目が革命的でないと批判し、書き直しを命じます。
これに黙って従う学院、
それに対して、ただ一人チェン先生は
バレーの美しさが失われると強く反対をしますが、
それが原因で彼は左遷されます。
学院から追われたチェン先生から、
ツンシンは密かにクラシックバレーのビデオを渡されます。
そこにはクラシックバレーの美しさ・すばらしさが描かれていて、
ツンシンはビデオのように、自分も踊れるようになりたいと、
強く願い、今まで以上に体力を鍛え、バレーに精進して行きます。
その努力が実り、ツンシンはアメリカでの
3ヶ月のバレー研修のチャンスをつかむことができます。
そこで彼が見たアメリカは、中国で教えられてきた暗黒の世界ではなく、
自由で豊かな世界でした。
そのあまりの格差に驚き恐れながらも、
国にいる母や家族のことを思い、バレーに打ち込んでいきます。
そんな彼にも、同じバレーを志す美しいアメリカ人の恋人ができ、
楽しい日々を送っていました。
そんなある日、主役がけがをして、
その主役をツンシンがやるという大抜擢があり、
彼はそのチャンスをつかみ、
成功させることで人気者となります。
楽しく充実した日は、あっという間に過ぎ、
国に帰る日が近づいてきます。
必死の滞在延長も認めれず、諦めていた時、
アメリカ人と結婚すれば、アメリカに滞在できることを知り、
さっそく恋人と結婚をしますが、中国はそれを認めず、
強制的に帰国させようとします。
友人や弁護士の助けと、
人権問題ということでマスコミが騒ぎ国際問題となりますが、
ケ小平の許可により一転亡命が認められます。
ただし、中国へは今後帰ることができないという条件で‥‥。
その後さらなる努力と精進をし、
アメリカで活躍をし、一流のプリンシパルとなります。
そんなある日、劇団の主宰者の好意から、
中国から両親が彼の公演を見に来ます。
これが何とも言えぬ感動的なシーンで、
私は涙が溢れて止まらなくなりました。
自分が亡命をすることで、
中国にいる家族がどんな目にあうか分りません。
その状況は中国にいた時に自分でも目の当たりにしたし、
チェン先生もひどい目にあいました。
そんな彼の気持ちを考えるとものすごく辛くなります。
それでもクラシックバレーを
アメリカに残ってやりたいという強い思い
それと中国に残る家族への思いの
板挟みの苦しさはいかばかりだったでしょう。
その状況を考えた時、中国に住む両親が
アメリカのバレー公演を見に来るということは奇跡と、言っても良いことです。
これを演出できたのは、毛沢東が死んで、
ケ小平 (とうしょうへい)が実権を握っていたからできたことでしょう。
確かに政治的な臭いがプンプンだけど、
それでも素晴らしい事だと思います。
昨今の尖閣諸島を巡る船長の問題における
頑な中国の姿勢を見るにつけ、
その柔軟さに大きな違いがある気がします。
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