君を想って海をゆく h23.1.29 名演小劇場
朔的には、☆は3つ半(70点)でお薦めです。
この映画は難民の問題を考えさせてくれました。
難民というと、戦争のために国を追われた悲惨な人々が
大きくクローズアップされますが、
難民が入ってくる国にとっても、それは大きな問題となっています。
難民の人権も大切ですが、
それと同じように自国民の人権も守る必要があります。
これは政府としての立場であり、そのために難民を規制しています。
それを積極的に支持する人々、
無関心で傍観する人々、
そして、人道的な気持ちから難民を助ける人々がいます。
この映画では2つの愛の対比を鮮明にして描いています。
一つは遙か彼方の恋人を得るために、ドーバーを泳いで渡って行く愛。
それに対して、近くにいて愛しているのに
手放すしかない愛がありました。
2008年、17歳のビラル(イラク国籍のクルド人)は、
今はイラクからイギリスに移住した恋人
(この家族は幸いイギリス在住の親戚がいて、
身元引き受け人となってくれたので移住ができた。)
と会うために、イラクから400㎞歩いて、フランスの最北端の町カレへ行き
そこから海を渡り、イギリスへ密入国をしようとします。
トラックの荷台に隠れて密入国をしようとしますが、
一酸化炭素検査を避けるための、袋をかぶることができずに失敗します。
それはトルコ軍の捕虜になった時、袋をかぶらされ、
何日も放置されたことがトラウマになっていたためでした。
そこで泳いでドーバー海峡を渡ろうと考え、
スイミングスクールで、クロールを習います。
そのコーチが、元メダリストのシモンで、
いつしか二人には、親子のような関係が築かれていきます。
シモンは水泳の選手で、元メダリストでしたが、
今はスイミングスクールのしがない水泳コーチでした。
彼は、妻のマリオン(小学校の先生)と離婚調停中でした。
彼女はボランティアで難民への援助をしていましたが、
この問題に無関心なシモンに嫌気がさして、
徐々に気持ちが離れて行ったためでした。
不法入国したクルド人のビラルを泊たり、
匿うことは犯罪になると何度も忠告する妻。
しかし、この少年との関わりの中で、シモンが徐々に変わって行きます。
恋人が無理矢理結婚させられると聞いたビラルは
シモンの忠告を無視して、
ドーバー海峡を泳いで渡ることを実行します。
ドーバー海峡を渡り切るとは、
水温10℃の中を10時間、それも頻繁に通るタンカーの間をぬって
泳がねばなりません。
その苦難を恋人に会うという一念に変えて泳ぎますが、
後わずかの所でイギリスの警備艇に見つかり、
必死に逃げますが、力及ばず死んでしまいます。
そして遺体はフランスのシモンの元へ……。
シモンはビラルの意志を伝えるために、
イギリスに渡り、ビラルの恋人と会います。
どうして、止めてくれなかったと泣く彼女……。
この行動には、シモンと妻マリオンとの再縁が暗示されています。
この作品は、フランスで公開5週で
100万人の動員を突破する大ヒットを記録し、
セザール賞で主要10部門にノミネートされました。
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