アメイジング・グレイス h23.4.16 名演小劇場
朔的には☆は3つ半(70点)です。
イギリスにおける奴隷貿易禁止法の成立において活躍した、
政治家を描いています。
歴史の重さ、それを骨太に描いた映画らしい映画でした。
18世紀のイギリスは専制君主国から立憲君主国へと移りますが、
貴族の社会であることは同じであり、
まだ市民革命は起こっていません。
この後、アメリカの独立戦争があり、
フランス革命を経てナポレオンの時代が来ます。
この映画はイギリスで「奴隷貿易廃止法」が成立して
200周年を迎えたことを記念して製作されました。
あの有名な「アメイジング・グレイス」の作詞者である
ジョン・ニュートンに師事していた
政治家ウィリアム・ウィルバーフォースの、
奴隷貿易禁止法成立までの戦いを描いた物語です。
人は人との比較において幸せを感じるもので、
この手の映画を見るといかに自分が恵まれているか、
幸運であるかと考えざるを得ません。
人は生まれる国、生まれる時代を選べません。
それを考えると、自分がこの奴隷達と同じ運命を辿ったとしても
決しておかしくありません。
奴隷制度は人間としてあってはならないことで、
それは理性では分かっていても
それが今のイギリスの繁栄、自分の生活を支えているとなると、
簡単に人は賛同できないものです。
私を含めて人は、自分の幸せが満されてから、
初めて他人のことを考えることができるものです。
アフリカで奴隷狩りによって、集められた奴隷達は
奴隷船でイギリスやその植民地へ運ばれて行きました。
アフリカの港を出発した時は、600人であったものが、
目的地へ着いた時には200人になっていたという悲惨な状況でした。
船の中で奴隷達に与えられた空間は、棺桶と同じくらいの広さしかなく、
そのあまりの過酷さ故に、自殺をすることものが絶えなかったので、
それを防ぐために、手かせ、足かせ、首輪をつけられました。
その奴隷船の実態を世間に知らしめ、
議員の関心を買い票を集め、
奴隷貿易禁止法を通そうと奮闘する議員、
しかしこれには紆余曲折があり、長い時間がかかる大変仕事でした。
奴隷貿易の禁止は今のイギリスの国益を大いに損するもの、
それによって豊かなイギリスは成り立っていました。
それを覆すには生やさしいことではありませんでした。
そしてそれを成し遂げることができたのは、
強い信念と彼を支える友人と妻がいたからでした。
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