さや侍

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さや侍 h23.6.12 阿久比ユニバーサル

 朔的には☆は3つ半(75点)です(*^_^*)。
 この映画はものすごく評価が分かれる作品だと思います。
(ダウンタウンが好きかどうか、松ちゃんの芸風に好感がもてるかどうか
それにかかっていると思います。)
 私はおふざけ(それも相当な……)のその奥に
ものすごく深いものを感じました。

 一時私はダウンタウンが大嫌いでしたが、今は大ファンです(*^_^*)。
木曜10時からの「ダウンタウンDX」は、
毎週欠かさず見ていますが、
そこでは二人の笑いのセンスが光ります。
特に松ちゃんの「ぼけ&突っこみ」は
天才的なものを感じます。

 芸能人の会話の中のちょっとしたエッセンスをつかんで
その中に入り、話をふくらませて、笑いに変えていきます。
もちろん番組ですから、作られたものかもしれませんが、
それにしても、あのアドリブ力、
鋭い反応力には驚ろかされます。

 以前大嫌いだったのは、人の悪口を言って
それで笑いを取っていると思っていたからです。
でも考えて見れば、それは芸人やタレントのことであり、
傷つくというよりも、
ある意味ではお互いに「おいしい」わけです(*^_^*)。

 この映画<お笑い>と<時代劇>という
取り合わせがまずユニークです。
さらに、時代劇の御前試合と言えば、剣豪同士の真剣勝負が常識なのに、
笑顔を忘れた若君を
芸によって笑わせるという、真剣勝負に置き換えた所が、
良かったと私は思います。

 タイトルの「さや侍」とは、
刀の本身のない鞘だけを腰に差している侍のことですが、
こんな言葉は聞いたことがないので、
おそらく松ちゃんの造語でしょう。

 どうして主人公が<さや侍>となったのかは、
映画の中では十分に語られていないので、よく分かりませんが、
刀を捨てたのは武士をやめたということなのでしょう。
ただ武士を完全に捨てたかというと
そこまでの決意はしていない気がします。
それは鞘まで捨ててはいないからです(*^_^*)。

 野見勘十郎は最愛の妻が死んで、生きる気力をなくし
藩の役職を捨てて脱藩をして、さや侍となります。
その後を追う一人娘。

 勘十郎は脱藩の罪でお尋ね者となり、賞金をかけられ
無様に逃げる日々を送っています。
そんな父を見て、娘は武士らしく、切腹することを願っています。

 勘十郎は多幸藩で捕らわれ、「三十日の業」を言い渡されます。
その藩の若君は愛する母を亡くし、生きる意味を失って、
心を閉ざしています。
この若君を「30日の業」で笑わせることができれば無罪放免、
できなければ切腹となります。

 「30日の業」(一日一回新しい芸によって若君を笑わせる)
そのお笑い芸の内容よりも一日に一つづつ芸を
知恵を絞り考え、練習をしていく、
必死で戦っていく姿が感動を与えます。
(始めは馬鹿にしていた娘も、しだいに父を応援するようになる)
彼はそれによって自分を取り戻し、
再び武士のプライドを持つことができました。

 ラストは想定外の展開でしたが、
感動的で涙が出てきました
とても良かったです。

 主役である、伊香藩水位微調役・野見勘十郎役の野見隆明は、
ずぶの素人でしたが、その寡黙が良かったと思います。
(きっとしゃべるとへたさ加減が分かるので、
演出であえて寡黙にしていたのでしょう)
でも、その寡黙が主人公が何を考えているか分からない存在へと
導いてくれました。
そして、どこか松ちゃんに似ている所も良かったです。
 

 

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