人生、ここにあり

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人生、ここにあり  名演小劇場 h23.9.17

 朔的には星は3つ(60点)です。

 1983年、ミラノの労働組合員
ネッロ(クラウディオ・ビジオ)は、
過激な組織改革論を唱えたために、
上から疎まれ、精神病患者の社会復帰のための
協同組合に左遷されます。

 そこで組合員の様子を見た彼は、
封筒の切手貼りなどという単純作業ばかりでなく、
もっとやりがいのある仕事をしようと提案します。

 そこでの議論の末、
床の寄木張りの仕事を請負うことになります。
最初はどうなることかと思いましたが、
独創的なデザインの寄せ木が評判となり、
仕事は順調に進んで行きますが……。

 健常者でも、多様な人がいるのに、
まして精神を煩っている人はなおさらです。
それをリーダーとしてまとめていくには、
強い意志と根気強さが必要です。
リーダーとして、協同組合を引っ張っていく
ネロの苦労と喜び、
それを支えていくデザイナーの妻との
夫婦愛を描いています。

 このイタリア映画は、本国では大ヒットを記録し、
イタリア・ゴールデングローブ賞を受賞したそうです。

 精神病院廃絶法であるパザリア法(1978年制定)により、
精神病患者たちが一般社会で暮らせるような地域づくりに、
世界で初めて挑戦したイタリアのある施設の取り組みを、
感動的に描いた実話を元にした映画です。

  イタリア映画らしく、描いた題材が暗くなりがちのものでも、
根底に明るさ、楽観主義的なものが感じられました。
 
 この映画のような絵に描いたようなハッピーエンドは、
イタリア映画だからできることで、
そこがフランス映画と映画に対する考え方が
根本的に違うのでしょう。

 精神病患者を病院に閉じこめておくのではなく、
社会生活を通じて治療をしていくべきであるという、
この法律の精神は立派だとは思います。
ただ、受け入れていく社会の中にも、
いろいろな考え方の人がいるもので、
現実的にはなかなか難しい問題が多々あります。
結局どの程度の精神病なのかが問題であり、
そこには自ずと限度というものがあると思います。

 精神的な疾患を持った人
(大きな意味で傷害を持った人)を許容できる社会、
生産性が低く、非能率でも我慢し
許せる社会的コンセンサスが必要です。

 この映画のような共同組合は
イタリア社会独特の制度で、
日本ではあまり馴染みのないものです。
協同組合と聞くと、私は「生協」くらいしか
思い浮かびません(^_^;)。
 

 

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