麒麟の翼

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麒麟の翼〜劇場版・新参者〜 h24.1.29 半田コロナ

朔的には☆は4つ(80点)で超お勧めです(*^_^*)。

 2010年4月に阿部寛主演で「新参者」という
テレビドラマができました。
それは東野圭吾の<加賀恭一郎シリーズ>からのものでしたが、
今回の<麒麟の翼>は、そのシリーズの最高傑作であると
作者自らが呼んでいるそうですが、納得です(*^_^*)。

 東京の日本橋で、
カネセキ金属の製造本部長の青柳武明(中井貴一)が殺害されます。
 彼は腹部にナイフを刺したまま、
殺害現場から8分間も歩き続け、
日本橋の麒麟像の下で命尽きます。

 なぜ、彼はここまで歩いて行かなければならなかったのか?
この謎の解明こそが、この事件の解決の鍵を握ります。

 この事件を担当するのは、
日本橋署の刑事、加賀恭一郎(阿部寛)です。

 さすが東野圭吾です。
意外性のある謎解きも面白いが、
それだけではない、親子関係や今時の労働問題など
強い社会性を感じます。

 いつものように、
加賀恭一郎(安部寛)の推理がさえ渡ります。
彼も刑事であった死んだ父親との確執を抱えています。
この親子関係をベースに、被害者の親子関係が描かれています。
 
 父と子の関係は、難しいですね。
何もしない父親と妻から言われるのが辛いので、
何かをしなければと思っても、
正直何をしていいのか?わかりません。

 子供とのべたべたした関係は嫌だし
そうかと言って、力づくで押さえるタイプでもありません。
結局当たり障りのない関係を作ってしまい、
妻からは父親の役割を果たしていないと言われ、
子供からは相手にされません(^_^;)。

 人からみたら逃げていると言われるかもしれませんが、
<基本的には自分のことは自分で解決しろ>というのが
私の考え方です。
自分もそうしてきたし、
悩みを親に相談したことは、ほとんど記憶がありません。
それが子供というものだと思っていました。

 これもまた、人から見たら
冷たい父親だと言われると思いますが、
正直、子供にはあまり執着を持っていません。
いや子供だけでなく、家族とか親戚とか、友達とかも…。

 だから、世間の父親が娘可愛さのあげく、
どんな相手が来ても結婚には大反対だとかいう、
そういう気持ちがよくわかりません。

 子供は子供の考えで主体的に生きて行けば良いと思っています。
私も親から干渉をされるのは嫌だったので、
自分も子供に干渉をしたくはありません。
もちろん、助けを求められれば、援助は惜しみませんが……。

 だからこそ、
この映画のような親子関係を見せられると
自分の子育ての反省の意味を込めて、
こうあるべきだったのではないかと、
思ったりしてしまいます。

 日本橋の橋の袂にある、麒麟の翼。
日本橋は東海道五十三次(江戸日本橋から
京の五条大橋まで)の出発点です。

 今の日本橋は昔の面影はありませんが、
精神的な意味では、今も出発点であることに変わりはありません。
いろいろな旅立ちのための出発点であり原点です。
人は何かに迷ったりしたら、原点、出発点に戻るものです。

 麒麟とは想像上の動物で、
麒麟ビールのロゴを見ればどんなものか分かります。
本来翼はありませんが、なぜか日本橋の麒麟像には翼があります。
それはそこから全国へ羽ばたくという
象徴的な意味を彫刻家は込めたそうです。

 この映画は日本橋の麒麟像の持つ
象徴性が大きな意味を持っています。

 夫婦でも、親子でも、恋人でも
相手のことを知っているようで、
ほとんど知らないものです。

 まあ、私は知る必要はないと思っていますが、……。
プライバシーは尊重されるべきであり、
それがその人の魅力でもあります。

 ただ、この映画のように、
父親の考えていたこと、していたことが
自分のためであったことを死んだ後で知ることは
心を強く揺さぶるものです。
 

 

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