三丁目の夕日(3)

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ALWAYS 三丁目の夕日'64 h24.1.28 半田コロナ

 朔的には☆は4つ(80点)で
超お勧めです(*^_^*)。

 懐かしき、良き昭和を描く
<「ALWAYS」三丁目の夕日>シリーズの第3作目にあたります。
東京オリンピックに沸く1964年(昭和39年)の東京の下町に
スポットライトを当て、
いろいろな形で親から巣立っていく、子供達と親を描いています。

 1964年の東京オリンピックの時、
私は14歳で中学2年生でした。
とにかくその時の日本の興奮というか、
盛り上がり方は尋常ではなく、
一億総オリンピックという雰囲気でした。
学校でもオリンピックの番組に合わせて、
授業の途中であっても、視聴覚室に集められ、
競技を見た記憶があります(*^_^*)。

 今でも覚えているのが、重量挙げの三宅、
男子レスリングと体操、そして東洋の魔女の活躍です。

 あの頃は、日本の高度成長経済が軌道に乗り、
高速道路や新幹線の整備もあって、
もはや戦後ではないという言葉が流行っていました。

 あの頃の日本人は、働き蜂とか企業戦士とか言われ、
経済的な豊かさを求めて、遮二無二働いていました。

 先に見える明るい灯を信じて、がむしゃらに生きていた時は、
苦しくても、日本中が希望に満ちていました。

 頑張れば必ず豊かになれる、
アメリカのテレビドラマのような生活ができると思って、
苦しさに耐え前のみを見て、突き進んできました。

 そして2012年の日本、
あの当時思い描いたような日本になれたでしょうか?
確かにあの当時と比べれば、
物質的には豊かにはなれたと思いますが、
精神的な豊かさや幸福感は
かえって減ってしまった気がしてなりません。

 経済的な豊かさを得るために、
失ったものがいかに大きかったかを思い知らされます。
 
 このことから、豊かさ=幸せ、
お金=幸せだと考えていたことが間違いであり、
お金では幸せは買えないものであることがわかました。

 もちろん、<衣食足りて礼節を知る>のたとえのように、
お金が大切なものであることは間違いないですが、
お金だけでは幸福にはなれないことも事実です。

 今回の映画のテーマは、「幸せとはなにか?」でした。
金や地位や名誉がなくても、
家族、恋人、友人、隣り近所などとの、
絆や繋がりがあれば人は幸せを感じることができる。
そして今の日本はそれを失ってしまったので、
もう一度そのことを思い出してほしいと言っているようです。

 そして、人間にとって何よりも大切なものは「希望」であり、
これから先、良くなっていくという確信
つまり<希望の灯>みたいなものが必要です。
それがこの時代の日本にはありました。

 希望や夢は実現すればもちろん嬉しいですが、
たとえ叶わなくても、
それを目指して進んでいる過程そのものが幸せなものです。

 経済的に豊かになる、この夢を成し遂げてしまった現在、
国として次なる希望の灯が必要であるのに、
それが見つからず、あるのは不安ばかりというのが現実です。

 国としての希望の灯、目標がないなら、
個人個人でそれを見つけていくしかなく、
それを見つけることができるかどうかが
幸せになる鍵であると思います。

 このシリーズも3回目となり、
幼かった子供達も、それぞれ大きくなりました。

 鈴木オートの長男一平は高校三年生になり、
エレキギターに凝っています。
確かにあの頃は加山雄三やベンチャーズが一世を風靡し
世の中は大のエレキブームでした。

 学校の文化祭でも、エレキバンドが沢山出演し、
下手な歌をがなって大迷惑でした(^_^;)。
自分たちでは格好良いと思っているのですから、
始末に負えません。
 一平は進路に悩んだ末、父親の会社を継ぐことを決意します。

 鈴木オートの従業員六ちゃん(堀北真希)は、
病院の先生に恋をします。
二人の真剣な交際に、
親代わりの夫婦(堤真一と薬師丸ひろ子)は動揺をします。

 この先生は、出世には全く興味がなく、
将来は儲からない父の診療所を継ぐつもりでいます。

 そして病院に勤める傍ら無料診療をして、
貧しい人の役に立っています。
「喜んでくれる人の顔を見るのが楽しみ」という彼、
これも一つの生き方です(*^_^*)。

 先生の人柄、生き方を知ったことで、
夫婦はこの結婚に心から賛成をします。

 今回も大泣きしました。
子供は親の背中を見て育つもの、
ライオンが千尋の谷に我が子を突き落とし、
這い上がってきた子だけ育てるように……。
人の親は子供を突き放し、背水の陣をひかせます。

 小説家茶川竜之介(吉岡秀隆)は、
勘当された父親が死に葬式に行きます。
そこで叔母から、父親が竜之介の作品の
一番のファンだったことを知らされ愕然とします。

 父が小説家になりたいと言った彼を勘当したのは、
帰る場所を無くし、背水の陣をひかせて、
小説家としての大成を願った故のことでした。

 竜之介とヒロミ(小雪)に
親代わりとして育てられた淳之介(須賀健太)は、
東大への受験にまっしぐらです。
それは、育ててくれた二人に恩返しをしたいとの一心からで、
そのため、大好きな小説家への道をあきらめていました。

 でも心の中では、書きたいという気持ちは強く
抑えがたいものがありました。
「僕から書くことを奪わないでください」と
淳之介が竜之介に言った言葉が、強く印象に残っています。

 それを察した竜之介は一芝居打ち、
淳之介に小説家への道を歩ませるために、
家を追い出します。
自分の父が自分を勘当したように……。

 テレビは東京オリンピックの時に、白黒が普及し
皇太子ご成婚でカラーテレビが普及したと言われています。
それに併せて、茶川家では白黒、
鈴木オートでは、カラーテレビが入ります。
(鈴木オートは小さいとは言え、経営者ですからね(*^_^*))

 その時のテレビはナショナルでしたが、
その名前が懐かしく感じられました。

 ナショナルは今のパナソニックですが、
今期は7800億円の赤字決算で、テレビから手をひくと聞きました。
韓国や中国の安くて品質の良い製品に押されたためで、
時代を強く感じます。

 懐かしいブリキの看板が、あの頃を思い出せてくれます。

 濃密な隣近所とのつき合い、
私はそれが大嫌いだったのに、
映画をみると、なぜか懐かしく感じられます。
きっとないものねだりですね(^_^;)。

 悪人が一人も出てこない、これは前2作も同様です。
徐々に終盤に近づくにつれて、涙がとどめなく出てきます。
どうしてなのかな?

 それは日本人の気持ちがわかっているからでしょう。
どうしたら感動するか、どうしたら泣けるかをよく知っていて、
それをその通りやっているから、泣けて感動するわけです。

 

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