あなたへ 8月28日(火) 阿久比ユナイテッドシネマ
<あなたへ>を阿久比のユナイテッドシネマで見ました。
朔的には☆は3つ半(75点)で、
心に潤いの欲しい人にお勧めです(*^_^*)。
地元の映画館、それも平日の午後(2:15〜)に
あれほどの入りは久しぶりです。
観客の年齢層は70代以上の女性が多く、
まばらな男性もほとんど夫婦連れで、
私のように一人で見ていた男性は珍しかったです。
テレビのCMをばんばん流していますから、
その効果なのでしょう、大ヒットの予感がします(*^_^*)。
俳句的な映画だと思いました。
俳句は17音(575)しかないので、
省略の文学といわれています。
言外のニュアンスを大事にし、
読み手に想像力をかき立てさせるのが良い句だと言われています。
決して言い過ぎないこと、説明すぎないことが大事で
足りない分は、読み手の想像力に任せます。
主演の高倉健の寡黙さがそれを何より
物語っています。
登場人物も、今現在の姿は見せていますが、
どのような過去があるのかなどは語られずに
見る側の想像に任せています。
特に、なくなった奥さんからの絵手紙は
文面が非常に短く、
その意味を知るには、見る側の努力が必要です。
散骨の途中で知り合った
自称元中学の国語教師(ビートたけし)が
放浪と旅の違いを話します。
放浪には目的がないし、戻る所もない。
それに対して旅は目的があり、帰る所もある。
なるほどと感心しました(*^_^*)。
自分と英二との違い、
自分は放浪で、英二は旅だと言いたかったのかもしれません。
放浪の代表格として
種田山頭火を上げて、彼の句を読んでいます。
<分け入っても 分け入っても 青い山>
山頭火は自由律俳句、575や季語にもとらわれずに、
自分の気持ちを素直にダイレクトに句にしていることが、
人の心を打ちます。
というわけで、この<旅と放浪>の違いが、
この映画のテーマになっていた気がします。
特にラストは良かったですね。
ネタバレにならないように気をつけなければなりませんが、
「鳩を飛ばす」とは、受刑者が刑務所の中の情報を
外にもらすことを言うのだそうです。
最後に、刑務官である英二が
<自分は鳩を飛ばしてしまいました>
としみじみと告白します、
高倉健ならではの間で、これは泣けました。
淡々と描いているのが良かったですね。
感動の押し売りをしたり、無理に泣かしてやろうという
いやらしさがなかったので、
ゆっくりとじんわりと感動が起こり、涙が滲んできました。
大泣きというよりも、しっとりと泣けるという感じです。
私の右隣の男性は泣いていました。
でも、左隣の女性は泣いていませんでした(*^_^*)。
田中裕子は上手に年を重ねて、
相変わらず素敵で可愛らしかったです。
若い時は彼女の大ファンで、
娘の名前に付けたくらいでした(*^_^*)。
慰問先で童謡(宮沢賢治作)を
歌う時の彼女の表情の暗さ、
そこからなにかとてつもなく深い悲しみを感じました。
ロードムービーは楽しいですね、
そこに名作が生まれる素地が溢れています。
現地で知り合った人との触れ合い感動を与えてくれます。
また、主人公が立ち寄る場所が、
自分の行ったことがある場所であると、
一気に親近感が沸き、さも自分が主人公と
一緒に旅をしている気がしてきます。
倉島英二(高倉健)は刑務官で、
年をとってから、刑務所に慰問にきていた
童謡歌手の洋子(田中裕子)と結婚をします。
洋子の人生はほとんど語られないので、
想像するしかないですが、
わけありの人生があることだけは確かです。
刑務官は転勤が多く落ち着いた生活ができない、
さらに子供も年齢を考えて作らないけど、
仲むつまじい夫婦二人だけの生活。
でも突然に彼女がガンで入院します。
そんな洋子に英二は、手作りのキャンピングカーで
定年後は一緒に旅行しようと話します。
その甲斐もなく彼女は亡くなります。
2通の絵手紙を夫に残します。
一つは自分の骨は故郷の海(平戸)へ散骨して欲しいとかかれ、
もう一つは、長崎県の平戸の郵便局の
局留めとなっていました。
それも10日以内に受け取りの期限があるものでした。
なぜそんなことをするのか?そこには何が書かれているのか?
英二は休暇を取って、キャンピングカーで
富山から長崎の平戸まで散骨の旅に出ます。
その道中でいろいろな人と知り合います。
その中で、亡くなった妻との関係を考えていきます。
局留めの絵手紙に書かれた、
たった一言だけの<さよなら>は何を意味しているのでしょうか?
あなたにはあなたの人生がある
だから、もうこれ以上私のことは引きずらないで、
自分の人生を生きてほしいとの願いなのかもしれませんね。
自分のことを引きずらないで
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