桃(タオ)さんのしあわせ h24.11.3 名演小劇場
朔的には☆は3つ半(70点)でお薦めです(*^_^*)。
この映画は、昨年のヴェネチア国際映画祭で
桃さん役のディニー・イップが主演女優賞を獲得しました。
彼女の演技は、その受賞がなるほどと頷けるもので、
いぶし銀のような味わいのあるうまさでした。
桃さんは気が強くて、他人をなかなか受け入れることができないけど、
ひとたび受け入れ、心を許せばとことん優しくなれるという
そんな複雑な女性の心情をうまく演じていました。
桃(タオ)さん(ディニー・イップ)は
少女のころから60年間、香港の裕福な家庭に
メイドとして仕えてきました。
この家族は今はアメリカに移住し、
香港には映画関係の仕事をしている独身の
ロジャー(アンディ・ラウ)だけが残り、
彼の世話をしていました。
桃さんは掃除、洗濯、料理を完璧にこなし、
ロジャーはそれを当たり前のように感じていましたが、
ある日、桃さんが脳梗塞で倒れてしまい、
とたんに日常生活に不便を感じるロジャーでした。
そして、桃さんは自分のことでロジャーに迷惑をかけないようにと、
メイドを辞めて老人ホームに入る決意をします。
メイドと雇い主という、上下関係ではなく、
家族のような関係で2人はつながっています。
(2人だけでなく、アメリカに住むロジャーの家族とも)
それは人としての尊厳を元にし、
感謝の気持ちでつながっている関係でした。
そんなきれい事の関係は架空の話nように思えますが、
この映画は実話だそうです。
「金持ち=尊大で横柄」という図式はこの物語には成り立ちません。
それは雇い主の品格とか人格によるものでしょう。
老人ホームでの共同生活、そこにはいろいろなタイプの人間がいます。
痴呆、障害、病気、無気力……。
桃さんは老人ホームの人達からだんだんと愛されていきます。
それは彼女の人柄の良さが徐々に分かってもらえたからでしょう。
そして桃さんを精神的に支えたのがロジャーの存在でした。
身寄りのない桃さんにとって、
ロジャーの存在は輝くばかりの希望でした。
自分は一人ではない、愛する人がそこにいるという安心感が
彼女をやさしく包んでいました。
またロジャーにとっても、桃さんは母のような存在でした。
ロジャーは仕事が休みの時には、足繁く老人ホームに通い、
桃さんと外出する時は、手をつないで歩いています。
その時の桃さんのうれしそうな姿は、
まるで恋人と一緒にいるような、幸せな風景でした。
それが涙を誘います。
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