ある海辺の詩人ー 小さなヴェニスで

映画の目次へ 

 

ある海辺の詩人 -小さなヴェニスで-
h25.4.20 名演小劇場

 朔的には☆は3つ半(70点)でお勧めです。

 小さなヴェニスとも言われる、美しいイタリアの漁師町が舞台です。
子供を中国に残し、出稼ぎのためにイタリアで働く中国人の女性と
地元の漁師で、30年前ユーゴから移民した老いた男性との
出会いと別れを描く、感動的で切ない映画です。

 シュン・リーは8歳の息子を、かつては漁師で、
今は年金で一人暮らす中国の父親の元に残し、
イタリアに出稼ぎに来ています。

 異境の地で彼女が頑張って働けるのは、
いつか子供を自分の元へ呼びたいからです。
 
 彼女にとって子供と外国で一緒に暮らすことが全てで、
そのためならどんなことも我慢でき、
苦労も意味があると思っていました。

 彼女がなぜ一人なのか、なぜ中国を出たのかは、一切語られません。
語られないけど、彼女が「屈原の詩」を愛し、
それを支えにしていることから感じられるものがあります。

 ある日ボスの命により、
縫製工場から海辺の酒場へと職場を移動させられます。
そこは地元の漁師が集う憩いの場所で、
そこで彼女はベーピと知り合います。

 ベーピは、老いた漁師で一人暮らしでしたが、
遠くの町に住む息子夫婦から同居を強く促されていました。
しかし、自分の居場所であるこの海辺の町を離れることができません。

 今も漁師として働き、この酒場に行くことが唯一の楽しみで、
彼女とは<詩>を愛するということを通して知り合います。

 ベーピはかつてのユーゴスラビア(中国と同じ共産主義の国家)から
イタリアに移民をしたのに、
30年経っても自分を余所者と思っています。

 二人は友達のような、親子のような関係でしたが、
それをやっかみ、嫉妬して、面白く思わない常連達は、
二人の関係をいろいろと詮索します。
やがて、その噂がボスのもとへ伝わり、
怒ったボスは子供を呼びたいなら、ベーピとの関係を絶てと、
元の縫製工場へと戻してしまいます。

 そしてそこで思いがけない子供との再会。
でも、子供を呼ぶにはまだお金が足りないはず、
誰がこのお金をだしてくれたのか……?
ベーピではないかと思った彼女はそれを確かめるために、
海辺の酒場へ行きます。

 そこで失意のままに死んでいったベーピの話を聞きます。
それを聞いた彼女は、彼に屈原を重ね、
国に残した父を重ね、自分の身勝手さを強く反省します。

 <屈原>…ネットより

 中国の戦国時代(約2300年前)の
楚(そ)の国の国王の側近に、屈原(くつげん)
という政治家がいました。
 詩人でもあった彼はその正義感と国を思う情は強く、
人々の信望を集めていました。

 しかし、屈原は陰謀によって失脚し、国を追われてしまいます。
その時の想いを歌った長編叙事詩「離騒(りそう)」は
中国文学史上、不朽の名作と言われています。
故国の行く末に失望した屈原は、汨羅(べきら)という川に
身を投げてしまったのです。

 それを悲しんだ楚の人々は、小舟で川に行き,
太鼓を打ってその音で魚をおどし,
さらに<ちまき>を投げて,「屈原」の死体を魚が食べないようにしました。

 その日(屈原の命日が5月5日)が中国の年中行事になり,
端午の節句へとつながっています。
また、川に投げたものが<ちまき>の起源です。

ジャンゴ 繋がれざる者 h25.3.17 半田コロナ

  朔的には☆は3つ半(75点)でした。

 良い映画の条件の一つにわかりやすいストーリーがあると
私は思っています。特に洋画の場合は……。
その要望に応えこの映画は、勧善懲悪に徹した
ものすごくわかりやすい映画でした。

 悪人を片っ端から殺してしまう、タランティーノらしい映画で、
ハラハラドキドキの連続、そしてラストはスカッとさせてくれ、
3時間も決して長くは感じませんでした。

 最近リンカーンに関する映画が話題になっています。
リンカーンと言えば南北戦争、そして奴隷解放ですが、
この映画は1859年(南北戦争の2年前)のアメリカ南部の物語です。

 主人公は黒人の奴隷から自由人となった
ジャンゴ(ジェイミー・フォックス)、
今のアメリカは黒人の大統領ですから、隔世の感があります。

 人が人を売買する、どんな権利があって?
この暴挙も、法律があれば合法という名の下で
誰もがそれを認めてしまう怖さがあります。
黒人さえも……。

 黒人奴隷のジャンゴは、ドイツ人の賞金稼ぎに助けられ、
自由人となります。
二人は一緒に逃亡犯を探し殺して賞金を稼いでいきますが、
その間にもジャンゴは、拳銃の鍛錬を絶やしません。
そしていつしか、彼の右にでるもののない程の
拳銃使いの達人となります。

 彼には愛する妻がいました。
一緒に農園を逃げますが捕まり、別々の所へ売られてしまいます。
その妻を捜し、もう一度一緒に暮らすこと、
そして自分と妻を苦しめた白人に復讐することが夢でした。

 妻が売られた農園が分かり、妻を助けるために、
賞金稼ぎと共に一計を立てます。
その大農園主をデカプリオが演じました。

 彼の残虐で非道な振る舞いは実にうまく、
その名演技には引き込まれてしまいました。
果たして妻の奪還計画はうまくいくのでしょうか?

 同じ黒人の中にも、支配階級の白人に手を貸し、
一緒になって黒人を支配するグループがいます。
ナチスのユダヤ人収容所でも同じようなことがありました。
人間の悲しい性です。
 

 

上に戻る