舟を編む

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舟を編む h25.19 阿久比ユナイテッドシネマ

朔的には☆は3つ半(70点)で、お勧めです。

 2012年本屋大賞に輝いた<三浦しをん>の小説を映画化したものです。

 玄武書房に勤務する馬締光也(松田龍平)は
職場では変人扱いされていましたが、
その言葉に対する鋭い感性と真面目さを見込まれて、
辞書編集部に引き抜かれます。

 そこで新しい辞書「大渡海」(広辞苑や大辞林のような辞書)の
編纂を中心となって取り仕切ることになりますが、
彼と共にこの辞書作りに
関わった人々を描いています。

 人付き合いが苦手な馬締が、
辞書づくりを通して、人間的に成長をして行きます。
職場での人間関係、大家の孫娘香具矢(宮崎あおい)との恋愛と結婚、
彼は時間的な経過とともに、徐々に成長をしていきます。

 一つの大きな辞書を作るには、
構想から出版までに、20年近くかかるそうです。

 大海を渡るのに舟がいるように、
社会を渡るには言葉が必要です。
それがこの辞書の名前(大渡海)の意味する所です。

 また題名の「舟を編む」は、
言葉を編むこと、
すなわち良き辞書を作る仕事を意味していると思います。

 小説より映画の方が良かったと、私が感じたのは
辞書編集部の西岡役を演じた、オダギリジョーがうまかったためで、
彼の存在が作品に現実感を与えてくれました。

 人付き合いがうまく、適当で、要領がよく、
好い加減で軽薄な男に見える西岡ですが、根はまじめであり、
時々見せるそのギャップが笑わせてくれます。

 そして真面目で堅物な馬締との対比が
さらにおもしろみを際立ててくれました。
でも決してごますり男ではなく、
根性や男気も見せてくれました。
 
 それに比較して、松田龍平はあまり良くなかったと私は感じました。
それは極端すぎるから…。
本人の意志か、監督の演出かは知りませんが、
ぎこちない歩き方や言葉の詰まり方は、
あまりに<お宅>過ぎます。

 映像で典型的な<お宅>を描くと
どうしてああなってしまうのでしょうか?
実際はそんなことはなく、
普通の行動の中に<お宅>っぽさが時々感じられるものだと思います。

 というよりも、馬締は人付き合いが下手で、
内向的で引っ込み思案ですが、
ガチガチの<お宅>ではないと思います。
彼がもしそうであったとしたら、
営業部への配属はあり得ないし、
それを承知で彼を営業部に入れていたとしたら、
そんな会社は絶対につぶれてしまいます(*^_^*)。

 馬締が編集部に引き抜かれる時のテストで、
<右>とは何か?と問われます。
それに対して彼は、<人が西を向いた時の北側>と答えました。
私などはすぐに箸を持つ方と言ってしまいますが、
それはだめですね、左利きの人もいるから、
もっと普遍的な表現が辞書には必要です。
そして、この大渡海では、<右の定義>を
<数字10の右側の方>と表現しました(*^_^*)。

 ここしばらく全くと言っていいほど辞書を引かなくなりました。
学生の頃は結構辞書好きで、
勉強とは辞書を引くことと考えて、
できるだけ早く引ける練習をしたもので、
明解国語辞典(金田一京助編)を愛用していました。

 今はわからない言葉があると、
インターネットのグーグル検索をすぐやってしまいます。
そこにはあらゆる辞書が入っていて、
どんな言葉でも複数の解答が出てきて便利です。

 でもそれも紙媒体の辞典があってのもので、
それを考えるとこれから先も辞書は作られていくのでしょう、
それがどんな形になるかは別にして…。
 

 

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