リンカーン h25.4/21 阿久比ユナイテッドシネマ
朔的には☆は4つ(80点)で、お勧めです。
スピルバーグによる、リンカーの伝記映画です。
(リンカーンは、第16代アメリカ合衆国大統領で、
1861年に大統領となり、2期目の始めの年、
1865年4月14日に劇場で暗殺されました。)
でも単なるリンカーンの伝記ではなく、
リンカーンを通して、行き詰まった民主主義と
苦悩する現代アメリカの原点を描いています。
2期目の当選を果たしたリンカーンは、
南北戦争が北軍の勝利の元に終了してしまう前に、
どうしても、奴隷制度の廃止を謳った
憲法修正をしなければならないと考えていました。
そうしないと、奴隷解放宣言は戦争の勝利と共に
風化してしまうと考えていたためでした。
それを阻止するためには、はっきりと憲法に明記する
必要がありましたが、憲法を修正するためには
議会の2/3以上の賛成が必要で、
それはすこぶる困難な仕事でした。
その困難を乗り越え、憲法の修正を果たすまでの
リンカーンの苦悩とアメリカ議会の苦悩を描いています。
リンカーンは共和党でしたが、
奴隷制度の廃止を憲法に明記するのに積極的なのが共和党であり、
消極的なのが民主党でした。
今と逆な感じですね(*^_^*)。
今のアメリカ議会のような上下両院の捻れはなかったようですが、
それでも下院の2/3以上の賛成が必要なため、
反対する民主党議員の20人の叛意を促す必要がありました。
その切り崩しのために、リンカーンは自ら
反対する議員の家を訪ねて全力をあげて、説得をして行きます。
叛意を促すために議員を脅したり空かしたり、
妥協をしたり、地位を与えたりと、
手を変え品を変える権謀術数ぶりは、
そこまでやるの?と思えるものがありました。
でもリンカーンが、そこまでしたのは、
これが正義のための戦いであるという
揺るぎない信念があったためです。
議会でのやりとりが見物です。
裁判シーンはよくありますが、議会の方はあまり見ません。
そういえばイギリスの<奴隷船廃止の法案>を巡る、
映画「アメイジング・グレイス」の議会でも
よく似たことをしていました。
あの時代の列強諸国は奴隷を認めていましたので、
その既得権益を守るために、
アメリカの奴隷廃止には、強力に反対をしました。
それでも廃止を貫いたのは、
それがアメリカの建国の精神である
人権尊重に関わるものだったからです。
アメリカの下院は各地域の代表なので
地域のエゴが極端にでる議会です。
それは今も同じで、昨今の債務上限問題で嫌と言うほど知りました。
日本も衆参の捻れはありますが、
アメリカの下院と上院の対立は、この法律を通さなければ
明らかに国の損失となるとわかっていても、
お互いの主張を譲らず、チキンレースに明け暮れます。
この原因は議会の権限が強すぎることで、
時には大統領以上のものもあります。
もっとも、それがアメリカの民主主義なのですが…。
リンカーンは戦争で苦しみ(若い人が多数死ぬこと)
議会に苦しみ(憲法修正案をどうしても通さなければならないとの使命感)、
家庭問題で苦しみました。
彼は男ばかりの3人の子供を設けますが、
長男を病気でなくしてしまいます。
その時は大統領で仕事に集中して、家庭を顧みることができず、
そのことを根に持つ妻から、ことあるごとに何度もなじられます。
妻の子供への溺愛ぶりは、彼を窮地に陥れますが、
もともとリンカーンの妻は、ヒステリックな性格で嫉妬深かく、
悪妻として歴史的に有名でした。
ダニエル・デイ=ルイスは、
この映画で3度目のアカデミー賞の主演男優賞をとりましたが、
この映画を見れば、それは当然のことと納得します。
彼の演技力はその風貌も合わせてリンカーンそのもののと思えました。
[南北戦争](1861年〜1865年)……ネットより
アメリカで南北戦争が起こった原因は、
<奴隷制度>と<経済政策での対立>2点が主なものです。
南部は綿花を栽培するため、奴隷が必要で、
それをイギリスなどに売るためには自由貿易が必要でした。
それに対して北部は工業が盛んで奴隷は必要とせず、
工業製品を売るために、ヨーロッパとの価格競争に
負けないために保護貿易が必要でした。
リンカーンが大統領に当選したことを
きっかけとして、南部がアメリカ合衆国を離脱し、
南北戦争が始まりました。
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