藁の楯

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藁の楯 h25年5月6日 半田コロナ

 朔的には☆は3つ半(75点)でお勧めです。

 映画の導入から画面に引きつけられ
ラストまで目が離せず、
肩に力が入り、疲れました(^_^;)。

 私の持っていた日本のアクション映画のイメージを
良い意味で裏切ってくれました(*^_^*)。
やや鼻につく所(例えば、大量のパトカーとか、機動隊とか、
群衆とか)もありましたが、
この映画はそれを上回るものがありました。

 刑事物のアクションというと、
やたらと拳銃をぶちはなしたり、派手なカーアクションがつきものです。
でもこの映画は、やや控えめではありましたが、
それでも迫力があり、臨場感や危機感が伝わってきました。

 財界の大物蜷川(山崎努)の孫娘が乱暴され惨殺されます。
「暗い森へ引きづり込まれた」という言葉が、
彼の深い闇を如実に物語っています。

 犯人は同じ犯罪を犯し、出所したばかりの清丸(藤原竜也)で
逃亡を続けていました。
清丸には反省の色がみじんもなく、
おそらく逮捕されても死刑はないと考えた蜷川は
清丸の殺害に10億円の懸賞金をかけます。

 この金額設定もうまいですね、1億ではだめですが、
10億なら考えてみようという説得力があります。

 清丸を匿っていた男もこの懸賞金のことを知り、
清丸を殺そうとします。
このままではいつか殺されると身の危険を感じた清丸は、
福岡署に出頭します。

 しかし、この清丸を殺し損ねた男にも、蜷川サイトから
一億円が支払われたことが伝わると、
誰でもこの殺人ゲームに加わる可能性が生まれてきました。

 蜷川の挑戦を退け、警察の威信を守るためには、
清丸の身柄を福岡から東京へと安全に送る必要がありました。
この人でなしの警護のために、
SP2人と3人の刑事がその任務に当たります。
果たして無事に東京まで身柄を移送することができるでしょうか?

 厳重な警戒と徹底した情報統制によって清丸移送計画が始まりますが、
なぜかことごとく清丸の居場所が蜷川サイトにわかってしまいます。
それは5人しか知らない情報であるため、
5人の中の誰かが裏切っているとしか考えられません。
それはだれか?この推理も面白い。

 清丸(藤原竜也)は幼い少女を暴行し殺すという極悪人、
その反省の色もなく、母の自殺にも動じません。
そして隙さえあれば薄ら笑いを浮かべて罪を犯します。
こんな人間のくずを命をかけて守っていく価値があるのか?
それがたとえ仕事であったとしても……。

 spの銘苅(大沢たかお)は取り憑かれたように
spの仕事に没頭します。
それは飲酒運転の車にひかれて死んだ妻の死を受け入れるためであり、
「あなたの仕事は人の命をまもることでしょ。」という
妻の声に動かされてのことでした。

 犯罪被害者の苦しみや無念さは、
犯人の死刑によって消すことができるものなのでしょうか?
いや消すまではできなくても、多少は心を休めることができるのでしょうか?

 しかし、現実は殺人犯であっても、しばらくすると出所し、
また再犯の可能性が高いものです。
それなら自分の手で犯人を罰したいと考えることも理解できますが、
それは許されないこと、正当化されないことです。

 犯人の人権と同時に被害者の家族にも人権があります。
犯人が死刑となったとして、
大事な人は帰ってこないと分かっていても、
せめて犯人に死刑を望むのは、人の自然の情であります。
でも、現実はそれすらも叶えられません。
それは「罪を罰して人を罰せず」なんていう、
きれいごとでは済まされない世界です。

 法が代わりに罰するという、保証は十分機能しているのでしょうか?
死刑の廃止論の大きな理由の一つに「冤罪」の怖さがあります。
それは一般論としては正しいと思いますが、
いざ自分がその立場になったとしたら、
認めることはできないと思います。

 この映画は犯罪被害者の家族の苦しみにスポットをあてて、
法の裁きの矛盾を論じています。
そしてもう一つ、SPとか警察は、
どんな人間のくずでも命をかけて守っていくのが、
仕事です。でも仕事だからと言って
自分の命や他人の命を楯にしてでも守っていくべき価値があるものか?
これも大きな問題提起です。

 今の世の中いつ犯罪被害者やその家族になるかわからない、
そのリスクの中で生きているのですから、
決して他人事ではありません。

 清丸役の藤原竜也がものすごくうまい。
さわやかな顔と裏腹の残忍さ、人を平気で裏切り、
自分勝手で人の恩を恩と感じません。
 「どうせ死刑になるんだったら、もっとやっておけばよかった。」という
清丸の裁判での発言に心の深い闇を感じました。

 山崎努の存在感によって、あんな現実感のない提案でも、
ありそうだと思わせてくれました(*^_^*)。

 SP銘苅(大沢たかお)はSPらしく、毅然とした態度と
心の葛藤を表面に出さない演技力が良かった。、
妻の死によって、犯罪被害者側の立場として同情や同感もあったが、
自分のspとして仕事を優先させます。
それが妻の意志だからと思うことで、妻の死に耐えています。
 

 

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