42〜世界を変えた男〜

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 平成25年11月9日 <42 世界を変えた男>
阿久比ユナイテッドシネマ

 朔的には☆は3つ半(70点)でお勧めです。

 黒人初のアメリカ大リーガー、ジャッキー・ロビンソンの
伝記ドラマです。
 彼の背番号42は、アメリカ全球団の永久欠番です。
欠番というと、長島の3や王の1を思いだしますが、
それは巨人軍だけの欠番で、
それが全球団ということだけでも、
ものすごい選手だったことが伺えます。

 成績もルーゲーリックと同時に野球殿堂入りを果たすほどの
ものでしたが、彼の存在は成績以上の意味がありました。
それは、黒人初の大リーガーであるということ、
それによって大リーグを世界に開いたことで、
野茂、イチロー、上原へと道が続きます。

 時は1947年のアメリカ。
ロビンソンは、ドジャースと契約をして、メジャーリーグで
最初の黒人選手となりました。

 1947年といえば、世界大戦の終戦の2年後のことです。
この時すでにアメリカでは、大リーグが行われていて、
野球観戦が娯楽となっていたことは驚きです。

 たとえ本土が戦火にまみえていないとはいえ
この事実は、圧倒的なもので、文化力、経済力を合わせて
国の力にゆとりがあったわけで、
そんな国とすべてを犠牲にして戦ってきた日本の、
愚かさを感じないわけにはいきません。

 それと同時に、この映画から、
当時のアメリカにおける黒人差別のすごさを知りました。
白人と黒人はトイレが別になっていたり、
野球場の入場口が別だったり、
時には飛行機の搭乗を拒否されたりしていました。

 特に南部での差別が激しく、
今年見た映画『リンカーン』の南北戦争の当時と、
ほとんど変わっていない気がしました。
根底にある意識は同じだと思います。
この差別と、アメリカは自由の国、人権の国である
というギャップがものすごいですね。

 その当時の大リーガー200人はすべて白人の選手で、
野球は白人のものであるとの意識が強くありました。
黒人だけのリーグがありましたが、
その優秀な選手はメジャーにあがることはできませんでした。

 ドジャースのゼネラルマネージャーの
ブランチ・リッキー(ハリソン・フォード)は、
これからの時代は黒人の選手を入れるべきだと考えていました。
それはその頃の常識を覆すもの、
野球ファンやマスコミを始め、
あらゆるものからの非難を受ける覚悟の上で、
それでも、野球界の発展のため、
彼の存在が必要だと考えます。

 その先見性と勇気が奇跡を起こし、
アメリカの黒人差別撤廃への先駆的な動きとなりました。

 リッキーは、ロビンソンに行動する勇気より
耐える勇気を求めました。

 メジャーでの初めての黒人選手、
その拒絶反応はすさまじく、
観客はブーイングと差別的なやじで応えましたが、
彼のファイト溢れるプレーによって、徐々に認められていきます。

 また相手チームの選手や監督ばかりでなく、
自軍の選手からも差別され、嫌がらせやプライドを傷つけられましたが、
愛する妻や、自分の後に控えている黒人選手達のために、
必死で耐えます。

 何事でもそうですが、未知の世界に入り、
それを切り開いていくことは、並大抵のことではなく、
強い勇気が必要です。

 彼の場合は、人種差別との戦いであり、
自分のプライドを抑える戦いでした。
まさに自分との闘いであり、差別主義者の挑発に
感情的になって戦えば、そこに落とし穴があり、
敗北がありました。
彼は冷静に耐えることができたから、そこから勝機を見いだしました。

 彼が登場し徐々に受け入れられたのは、
アメリカ社会の流れに沿ったものであると、
アメリカの人種差別との闘いの動きとも
呼応するものであります。
 

 

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