朔的には☆は3つ半(70点)でお奨めです。
立山の美しい自然が堪能できるばかりでなく、
家族や山小屋に集う人々とのふれ合いの中に、
人間的な温かみが感じられ、幸せな気分にさせてくれます。
監督は日本映画界を代表する名カメラマンであり、
『劔岳 点の記』の木村大作。
笹本稜平の小説を原作に、
都会の生活を捨て父が遺した山小屋を継いだ青年長嶺亨(松山ケンイチ)と、
そこに働く高澤愛(蒼井優)、二人を取り巻く人々、
さらには山小屋に憩いを求めて集まる、人々との絆を描いています。
「一歩一歩、自分の足で歩いて距離だけが本物である。」
標高3000mの立山の山小屋へ行くのに、
雪の上を歩き岩場を登り、
さらに30〜40sの荷物を担いで上っていく世界。
自分には絶対無理だと思いながら見ていました。
でもその苦しさの後の喜び
(苦しみが大きいほど、喜びも大きくなる)が
たまらない至福であるという、
山登りの気持ちもわかるような気もします。
「人との関わりの中で人は幸せを感じる。」
これはラストシーンでの言葉です。
コンピュータを相手のトレーダーであった亨と
山小屋の主人となった今の亨とは、対極の世界であり、
それが血の通った現実の世界でもあります。
めずらしく悪人が一人も出てこない映画でした。
そして絵に描いたようなハッピーエンド……。
でも、安易な判断で山に登ることを強く警告していました。
冬山の怖さ、遭難すれば、救助隊に迷惑をかけ
家族に悲劇が生まれます。
蒼井憂のはれぼったいまぶた、大きな瞳と愛くるしい笑顔。
彼女は、女の魅力が一杯の女性で、
男を虜(芸能界でのいろいろなスキャンダル)にする
意味がよく分かります。
それから、松山ケンイチも良かったです。
亨はなぜ父の山小屋を継ぐと決めたのか?
それを考えて見ました。
@ 彼の仕事は外資系のトレーダーで、
人の金で投資をし、その手数料で儲ける会社に勤めています。
投資はうまく行けばものすごく儲かるが、
その反対のリスクもものすごく大きく、ストレスのたまる仕事です。
自分の金で投資しても、マイナスとなれば落ち込むのに、
まして人の金となると、その損失が大きくなれば、
責任を感じて、胃がキリキリと痛むと思います。
でも、そんなことを気にしていたらこんな仕事はできないわけで、
亨は向いていなかったのかもしれません。
相場は気まぐれで、どのようになるかは誰にもわかりません。
そのため綿密なデータ分析をして、間違いないと思ってしたことでも
自分の責任でないことで、
負けることが応応にしてあることは結構辛いことです。
父の死を知った時には、自分の担当する部門で400億円のマイナスで、
仕事の状況がうまくいっていなかったことから、
そんな勝った負けたの世界に限界を感じていたことは確かです。
トレーダーの仕事は非生産的で汗をかかない、山小屋経営とは対極の世界です。
出世や金持ちになるよりも、もっと大切なものがある。
それを仕事をしながら感じていた時に、父の死が訪れた。
A 山小屋の経営は難しく、
父の厳しさにも抵抗し都会に出ていたが、
立山連峰に住んでいた子供の時に、
時々父と一緒に立山に登り、山の厳しさと同時に楽しさを知っていたことも
その根底にありました。
亨は本来山が大好きで、
父の山小屋が人の命を助けたり、安らぎを与えていることに知って、
人の役に立つやりがいがある仕事であると知った。
B 父の山小屋に働いている娘(高澤愛)が可愛く素敵だった。
彼女と一緒に働けたらと思うのが自然で、
これが一番大きな理由だったかも知れません(*^_^*)。
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