真夏の方程式

映画の目次へ 

 


 h25715 半田コロナ

 朔的には☆は4つ(80点)で、超お勧めです(*^_^*)。

 玻璃ヶ浦は、綺麗な海が唯一の売り物である寂れた観光地です。
その沖に、海底鉱物資源が発見され、
その開発か保存かで町は揺れ、説明会が開かれます。
そこに物理学者の湯川学(福山雅治)が招待されます。

 湯川は、行きの電車の中で知り合った少年(恭平)の叔父夫婦が
経営する緑岩荘に泊まります。
その日の夜、彼ともう一人だけ泊まっていた、
退職した元刑事が行方不明となり、
翌朝、堤防下の岩場で死体なって発見されます。

 この死体に不信を持った警察は、元刑事の身元を洗う内に
緑岩荘を経営する川畑夫婦(前田吟と風吹ジュン)の
秘密にたどり着きます。

 小説を先に読みました。
そこには、警察の地道な捜査が丹念に描かれ、
事件の真相にいかにたどり着いたかがよく分かりました。
これは映画にはできないことです。

 刑事の仕事は足で稼ぐもので、靴の底が減った分捜査が進展します。
予断や見込み捜査はしないこと、それが冤罪につながる怖さを
知っているからです。

 現場の刑事の発想や創造力によって、
捜査の能率が俄然と変わっていきます。

 原作がある場合、どちらを先にするかは、
意見の分かれる所です。
ただ、小説を読んでから映画を見ると、
自分が映画監督になったような気分で
細かい所まで目につくことは確かです。

 それは、ストーリーを知っているので、
画面に集中できるからです。

 小説とどこが違うのか、小説に描かれていた風景と、
自分が想像していた風景とどのような違いがあるのか、
この役者は原作のイメージに合致しているのか?
役者の演技やせりふ回しはどうかなどを
注意して見ることができます。

 なかなか原作を越える映画は少ないのですが、
この映画はその数少ない内の一つかも知れません。

 伝えたいことがわかりやすく簡潔に描かれています。
映画用に設定を変えている部分も少々あり、
それもうまく行っていました。

 特に、川畑節子役の風吹ジュンが良かったです。
まあなんと言っても、全ての出発点は
節子が魅力的であったことからですから……(*^_^*)。

 「子供は苦手ではない、嫌いである。
その理由は論理的ではないから……」
そう公言しているガリレオの今回の相手は
ある意味主人公である少年(恭平)です。

 恭平役の少年はうまく、
恭平とガリレオとの心のふれあいも面白かったです。
少年嫌いのガリレオが、恭平に心を許したのは、
少年の持つ純粋な好奇心が、
自分の子供の頃を思い出させたからかもしれません。

 殺人のトリックよりも、
家族を守ること、大切な人を守るとはどのようなことか?
これを考えさせるのが、この映画の主題でした。

 一つの嘘が次の嘘を、
一つの秘密がさらに大きな秘密を生みます。

 人は秘密を持つことは苦しく、
話して楽になりたいと思うものです。
でも、それによって相手が大きく傷つくこともあります。
だから、そこはぐっとこらえて、
秘密は墓場まで持って行く覚悟、これもまた愛です。
秘密を抱えそれに耐えることも、償いの一つです。

 親と子。
 子供の罪を親がかばって罪を償う。
そんなことができるのでしょうか?
それが愛情の深さに関係するなら、
人より家族に対する愛情が薄い私には、
到底できないような気がします。

 秘密を封印し、ひっそりと暮らしていたのに、
それを壊すように退職刑事が訪ねてきます。
その出現により、ある家族の暗い過去、
開かずの間が、無理にこじ開けられそうになります。

 「ある人物の将来をねじ曲げてしまう。」
ガリレオが執拗なまでに、真相を暴くことにこだわるのは
そのためでした。
 

 

上に戻る