☆は朔的には3つ半(70点)でおすすめです。
映画のタイトルである、<青天の霹靂(へきれき)>とは、
青く晴れ渡った空に突然激しい雷鳴が起こることで、
そこから予期しない突発的な事件が起こることを言います。
この言葉の語源は、陸游の詩『九月四日鶏未だ鳴かず起きて作る』にある、
「青天に霹靂を飛ばす」に基づくものです。
「霹靂」とは激しい雷鳴のことであり、
この詩の中では筆の勢いの激しさを雷鳴に例えて言った言葉です。
そのため「晴天の霹靂」と書くのは誤りとあります。
青天の霹靂は、昔はよく聞いたけど、
最近はあまり聞かなくなった言葉です。
私はこの言葉を<突然、予期せぬ悪いことが起きること>と理解し、
さらに「晴天の霹靂」と書くと思っていました(*^_^*)。
でも、語源からすると、
必ずしも「悪い」ことばかりが起こるわけではないのですね。
売れないマジシャンの轟晴夫(大泉洋)は、
マジックバーで働き、
自分を惨めな人間だと思い、そんな自分を嫌悪しながら生きています。
そして自分が売れないのは、
自分の出生と家庭環境にあると思い込み、
すべてのことをそれで責任転嫁をしています。
この映画はそんな晴夫が、青天の霹靂の一撃によって、
タイムスリップして、自分の出生の秘密を知るという物語で、
なかなか感動的な物語となっています。
映画がタイムスリップした所は、昭和48年の浅草、
そこで父親(劇団ひとり)とコンビを組んで
マジックの舞台に立つことになります。
そして、そこには自分を身ごもっている
美しき母(柴咲コウ)がいました。
タイムスリップした昭和48年は、
ちょっとレトロに描き過ぎかなと思いましたが、
そのくらいにした方が、
現在との差が出て、タイムスリップした感じが出るという
演出だったかもしれません。
タイムスリップは入る時よりも、出る時の方が難しいので、
どのようにして元の時代へ戻るのか?注目して見ていました。
その時は、自分が生まれてくる出産シーンと、
自分の将来を賭けるためのオーディションのシーンを並列に描き、
徐々にクライマックスへと持っていく演出はなかなか良かったです。
そして、自分が生まれると同時に、元の時代へと戻っていきます。
大泉洋はマジックのために4ヶ月の特訓をしたそうですが、
その努力の成果は十分に出ていたので、
映画の内容だけでなく、マジックショーを見る楽しみもあります。
最近は番宣が激しくなっていますが、
この映画もテレビに劇団ひとりと大泉洋が何度も出ていて、
執拗にこの映画の番宣をしていました。
その番宣の様子から、もっとお茶れけた映画だと思っていましたが、
良い意味で裏切られました。
それにしても大泉洋はうまいですね。
私は清須会議での秀吉役を見て、彼のファンになりましたが、
それまではどちらかと言うと軽薄な感じがして、
あまり好きではありませんでした。
清須会議の後、テレビの明石家さんまの
「ほんまでっか」で明らかになったように、
普段の軽いイメージは作られたものであり、
実際は礼儀正しく、人に気遣いができる真面目な人です。
柴咲コウはこんなに綺麗なんだと驚きました。
私的には彼女は顔立ちがきつくて、あまり好きではなかったのですが、
この映画で随分イメージが変わりました。
自分の命をかけて子供を産むその苦悩や
自分の子供を思う優しい母の表情が良かったです。
劇団ひとりは、駄目親をうまく演じていました。
さらに、脚本もよく、監督としての才能も十分に発揮していました。
映画には無駄なシーンが一つとしてなく、
ありふれた話を上等な人情話に仕上げていました。
|