蜩ノ記

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 朔的には☆は3つ半(75点)でお奨めです。

 木曜日の午後でしたが、年配の方を中心に結構な入りで、
ヒットの予感がしました。
最近は年寄りが見たいと思える映画が少ないから、
待望の作品だったのでしょう。

 世継ぎ騒動に巻き込まれ、藩のためにと、
一切の罪をかぶった戸田秋谷(役所広司)は、
10年後に切腹を言い渡され、
その日までは謹慎の上、家譜(藩の歴史)の編纂を命じらます。

 そして7年後、切腹まで後3年となった時に、
檀野庄三郎(岡田准一)が秋谷の監視役を、家老から命じられます。
庄三郎は秋谷の家族と共に暮らす内に、
秋谷が人格者であることを知り、
彼の関わった事件を調べるようになります。

 切腹までの日々を淡々と、そして重厚に描いていました。
特に感じたのは、武士とその家族の礼儀の、
その都度見せる美しさや姿勢の良さです。

 武道は「礼に始まり、礼に終わる。」と言われますが、
人の生き方も、礼儀によって、規律正しく、そして美しく生きられます。
秋谷とその家族が死を受け入れ、整然としているように見えるのも
礼儀のためかもしれません。

 一日一日を大事に、いとおしむように生きている家族。
それは夏の日を惜しむように鳴く蜩のようです。
いつか人間は死ぬといっても、
10年後の夏には確実に死が待っている世界、
それは死刑囚のような感じなのかな……。

 もし、自分が秋谷の立場だったら、とても平然と日々を
送っていく自信はありません。

 「武士道とは死ぬことと見つけたり」、これは葉隠の一節ですが、
武士は死を受け入れることを、子供の頃から教育されています。

 西洋は罪の文化、東洋は恥の文化といいますが、
名誉を守ること、恥ずかしくない死に方をすることが
武士の本分と考えています。

 この家族は静かに死を待っているのではなく、
村人と共に生き、時には権力を諭し、村人のために尽くす、
家族愛、夫婦愛、友情によって、
死ぬ時まで人間的な成長をし、子供を育て、
次の世代へと、その精神を伝えていっています。
 

 

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