<百円の恋>をレンタルDVDで見た。
このタイトルから、軽薄な恋とか人生ドラマが想像されるが、
実際は深くて熱い人間ドラマとなっている。
レンタルで見た映画では、
久しぶりに引き込まれる映画でした。
リアル感をだすために、映像をわざと粗い感じにしたことが
成功したと思う。
作り物ではない、生身の生き様が、
こちらに迫ってくるものがあり、
怖くもあり、強く共感できるものがあった。
32才の一子(安藤サクラ)は独身で、
両親と共に自宅で暮らしている。
それは絵に描いたような怠惰な生活、
朝遅く起き、昼はだらりとゲームやテレビ、そして夜更かしをする、
そんな毎日の繰り返し。
何の目的も気力もない、
毎日がただ過ぎて行けばいいという、安易な考え方。
なぜそうなってしまったかの説明はなかったが
彼女の人生の中に、きっと何かがあったのだろう。
実家は弁当屋、でもそれを一切手伝わない、
出戻りの妹は子供のためと一生懸命に手伝っているが、
それを横目に何もしない怠惰な姉を許せない、
そのため二人の間に喧嘩は絶えなかった。
怠惰な生活振りは、妹の息子とネットの対戦ゲームをしている、
その後ろ姿からはっきりと分かる。
きっと、安藤サクラはこの演技のために無理やり
太ったのだろう。
そのかいあって、ぷよぷよの体、わき腹の贅肉、
自由、好きなままに生き、
自分を徹底的に甘やかしている体型となった。
妹との大喧嘩の末、啖呵切って、
家を飛び出し一人暮らしを始めるが、
食うために、深夜百円ショップの店員として働くようになる。
その風貌から、怠惰でやる気のない人間のように見えるが、
実際の仕事はまじめで、弱者には優しい気持ちがある。
ただ、その優しさを素直に表現できないところがある。
店の途中にある、ボクシングジムでもくもくと
練習をする狩野(新井浩文)に惚れ、
毎日練習を覗いては、今の自分の生活の癒しとしていた。
百円ショップでの仕事と人間関係、
初めて付き合ったボクサーが、我の強い男であったことから、
彼女の運命を変えていく。
そんな中、ボクサーの彼との別れをきっかけに、
彼と同じジムでボクシングを始めた彼女は、
次第にプロボクサーを目指していく。
(なぜ彼女がプロボクサーを目指したか?
その心境の変化に興味がある。)
日々の激しい練習から、ラストの試合までは
息も継げずに一気に見せる。
後半からの予想外の展開に一気に盛りあがる。
今までの怠惰だな一子からは考えられないが、
彼女の一つのことに向かって行く時のエネルギーと意欲はものすごく、
これが彼女の人生を変える原動力となる。
とにかく安藤サクラの演技力、存在感がすごい。
最後はプロのボクサーとなり、デビューをするが、
その壮絶な打ち合いのシーンも迫力があり、ドキドキさせる。
最初の頃の贅肉たっぷりの姿から、
プロボクサーの引き締まった狼のような精悍な姿
その変わり方に、役者魂や根性を感じる。
不器用な生き方しかできず、
自分の持っている優しさをうまく人に伝えられない、
そんな複雑な女性を見事に演じている。
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