村上龍と利根川進の対談

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 1月1日の夜9時からNHKで、村上龍と利根川進(ノーベル医学・生理学賞受賞者)の対談がありました。その中で興味深く感じたことを書いて見ます。

 利根川氏は、「人間の一番幸せな時は、目標に向かって進んでいる時」であると言いました。このことが、目標を達成した時ではないことが面白ですね。そのため、幸せを継続させるには、さらに次の目標を立てる必要があるわけです(笑)。それが人間の成長や進歩を促すわけです。

 また彼は言います。他の人と同じことをしていていたのでは成功はできない。研究者の道は、挫折の連続であり、それでもあきらめないねばり強さが必要だ。さらに、挫折してもそれをいちいち苦にしない、楽観的な考え方がなければ、研究者で成功はしない。

 それから、日米の教師のあり方についてこんなことも言いました。授業で子供に作文を書かせた。その子が「昨日、家ですき焼きをして肉を一杯食べました」と書いたそうです。その感想を、日本人の教師は「肉だけでなく、野菜も食べようね」と書き、アメリカ人の教師は「すき焼きおいしそうだね」と書いたそうです。ここに教師のあり方の違いがあると彼は言います。日本は先生が先に立ち生徒を導いて行こうとする。それに対して、アメリカの先生は後ろから、生徒のしたいことを援助をする、そんな違いがある。

 彼が育ったMIT(マサチューセッツエ科大学)の研究室では、5人のノーベル賞受賞者がでた、それは指導教授の<自由放任主義>の指導法の成果だと彼は言います。その人のやりたいことをやりたいようにさせる。そこに創造力を育む教育の原点がある。

 そんな彼も自分の子供の教育の難しさを嘆きます。そして、結論として「親が充実した生活を送っている、後ろ姿を見せることが、子供の教育の最たるもの」と言います。なるほどと納得できる答えです。自分の親が充実した生活を送っていることを知り、そのためにどのような努力をしているかを知れば、自ずと答えは出るものです。親が人生を楽しんでいる、幸せだと心から思っていなければ、子供がそれをまねするわけがありません。