タイ旅行

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 平成15年の7月20日から、4泊5日で家内とタイに行って来ました。飛行機に乗っている時間が6時間、現地の観光も暑い中(最初の日は34度でした)歩き詰め、さらに最終日が深夜12時50分発の飛行機と、家に帰ってきてどっと疲れがでました。帰ってきてから、何時間寝たことでしょう(笑)。一緒にツアーで回って女子大生が言っていましたが、『海外旅行は体力勝負』なんでしょう。

 旅行中ほとんどタイ料理だったので、日本食が恋しくなりました。海外旅行者の経験談から、そのようなことを聞いていましたが、自分もそうなるとは予想をしていませんでした。<現地に行ったら、現地のものを食べる。>そんな風に粋がっていましたが、あまりにタイ料理がまずくて限界でした。最初はもの珍しさもあって食欲もあったのですが、途中から同じようなものばかりで飽きて来ました。

 特に独特の臭いがたまりません。肴の腐ったような臭いがどこに行ってもついて回ります。料理に入れる<ハーブ>の性だと現地のガイドさんは言っていましたが、ちょっと私には辛かったです。韓国に行くと<キムチ>の臭いがするのと同じように、タイには<トムヤンクン>の臭いがどこでもしました。

 タイ料理というと、トムヤンクン(エビ入りの酸味辛味スープ)を思い出します。私もそれしか思い浮かびません。韓国のキムチ、日本のみそ汁といった感じでしょうか、毎食必ず付いてきます。まず匂いがきついですね、これはハーブを使った香辛料のせいだそうですが、ココナッツミルクの匂いにも似ています。国中どこに行ってもその匂いがします。特に、屋台のあるところや食事をする場所には、この強烈な匂いがしてきます。トムヤンクンは初めて食べましたが、酸っぱさ(酢の酸っぱさ)と辛さ(唐辛子かハーブ)の混ざったスープです。味は店によって少しずつ味が違いますが、日本人好みに味をまろやかにして、匂いも抑えているのだと思います。

 タイ料理は、観光地のレストランで食べましたが、バイキングがほとんどでした。白身魚の揚げたもの、肉(鳥か豚のみ)の揚げたもの、野菜とビーフンを炒めたもの、タイ米を使ったチャーハン、カレー(ココナッツミルク味)、日本の焼きそばに似たもの、芋を揚げたもの、トムヤンクンのなどです。味は別に添えてあるたれ(唐辛子などの香辛料)をつけることで、いくらでも辛くできます。間違って唐辛子を食べたら、口の中が火事になり、涙が出て、水や果物で薄めるのに大変でした。デザートは必ず、スイカ、パイナップル、マンゴーの3種でした。

 タイ人の食生活についてガイドさんに聞きました。タイの女性は男性より働きもので、家で食事を作って旦那の帰りを待っている人はいないそうです。ほとんど外に働きに出て、食事は屋台で食べるか、そこで買って家で食べるのだそうです。市内を走る車の中から見ていると、その様子はよくわかりました。至る所に屋台があり、そこで簡単な椅子とテーブルを出して食事をしています。食事と言っても、ご飯に何かかけている(カレーのようなもの?)だけで、それを手で食べています。日本のおかずみたいなものは無いようでs。あとは、果物を食べる。

 外は、車がひっきりなしに走っています。埃と排気ガスでとても衛生的とは言えません。気温が34くらいで湿度も日本と同じくらいだから、クーラーの効いた部屋の中で食べればいいのにと思うのは、日本人的な感覚なんでしょう。その土地にはその土地の住み方があります。<抗菌グッツ>が大流行の日本では、汚くて屋台のものは食べられたものではありません。<その土地の食べ物>を食べようと、行く前は意気込んでいたのですが、現場を見るとその気はなくなりました。

 ナイトバザール(観光客を相手にした、屋台のおみやげ屋の集まったもの)は、日本の朝市を盛大にしたようなものでしょうか、路地裏の方へ限りが無いほど続いています。売っているものは、衣類(Tシャツ、タイシルクのシャツ、婦人用の民族衣装など)やアクセサリー、時計、バック、おみやげ品、果物をカットして袋に詰めたもの、焼き鳥風のものなどです。値札はついていません。全て交渉です。1円は約3バーツですから、日本円に換算するには、3で割るわけです。最初にTシャツを手に取ると、電卓を片手に売り子が声をかけてきます。<いくら?>と聞くと、600バーツと電卓に入れる。ダメだと手を振ると、いくらなら?と電卓を渡されるので、100バーツと入れると、今度は500バーツと入れる、そんなやりとりを繰り返して、結局200バーツ(600円)くらいでOKとなるわけです。600を200にまけたのですから、こちらとしては大もうけしたようで、気分がいいわけです。

 でも、値段は怖いですね、行く観光地の店によって全て違う、最後に伊勢丹のデパートに買い物に行ったのですが、そこでは60バーツで同じTシャツが売っていました。そこはデパートですから、正札がついています、でも、交渉で20%くらいはまけてくれるんですよ。結局最後に行った伊勢丹が一番安くて、他の所は2倍から3倍は高かったです。同じようなタイシルクのシャツも900バーツから250バーツまで値段の差がありました。それを商売にしているのですから、仕方ないとは言え、この値段の差には驚きより怒りを感じました。もし、最初に言われた値段で買う気の弱い観光客がいたら、ぼったくりもいいとこで、<詐欺>みたいなものです。

 お昼時に工場地帯を車で移動した時、どのようにお昼を食べるのか?興味があり、見ていると、工場から出てきた人の大半は、門の近くにある屋台に入ってそこで食べていました。大きな工場の周辺には、お昼のお客を見込んで多数の屋台が出ています。日本での社員食堂や、周辺のランチのできる店があるのと大違いです。束の間の休憩を炎天下の屋台で簡単に済ませる、食事を楽しんでいる雰囲気は全くありません。日本人は、食を楽しんでいる、それは生活のゆとりです。ゆとりのないところに<食文化>は育ちません。

 タイ人の平均月収が1〜3万円程度だそうです。単純に比較すると日本の1/7〜1/10くらいの生活レベルです。バンコクのマンション暮しなら、クーラーはあると思いますが、一般の庶民にはクーラーは無いような気がします。せいぜい扇風機があれば良い方、とても、そんな余裕はないというたたずまいでした。生活のゆとりより、食べること、生きることに精一杯というのが実感です。タイ人は男女とも、小柄でスレンダーな人が多かったです。それは、生活苦のためにたくさん食べられないこと(特に、肉とか魚などの贅沢品)に原因があるような気がします。それに、連日真夏日のような日が続くから食欲もなくなるでしょう。

 観光客としての私の目から見たバンコクの労働事情は、観光関係、屋台関係、日本など外国資本の工場で働く労働者の3つが主なものに見えました。そのうち、特に観光に依存をしていることを強く感じました。ホテルの前には、タクシーやツクツク(3輪車の安いタクシー)が列をなしていますし、道には観光客や一般の人のために屋台が並んでいます。どこの観光地に行っても、売り子(若い女性が多い)が一杯いて、<安いよ><買ってよ>と日本語で話しかけてきます。ちょっと関心をしめすと、後ろを付いてきて必死に売ろうとします。

 観光客からは、お金をたくさん取るのは当たり前だと思っていて、罪悪感は無いのかもしれません。おみやげ品の売り子がそうです。今回は私達夫婦とその他3人の計5人のツアーでしたが、最初の夜、パンナム通り(屋台街)に行くのに、ホテルから5人乗って130バーツでした。相場は35バーツでしたが、2台で行くよりはと納得して行きました。帰りは、そこからタクシーに乗ってホテルに来たのですが、最初のメーターが35バーツでしたが、ホテルの近くになって周辺を回りはじめ、結局75バーツになってしまいました。普通に行けば、35バーツなのに、メーターが上がることを計算して遠回りをしたわけです。そんなわけで、メーターのあるタクシーなら安全と聞いていたのですが、こんな調子なので、全て交渉次第のツクツクには乗っていません。

 アユタヤ遺跡に向かう途中(バンコクから車で1時間)に車窓から見える風景は、日本の田舎の田園風景でした。バンコク市内のビル群は、車で20分も走りるととぎれ、後はまっすぐに続く道路と一面の緑の草原。人はほとんどいませんでした。

 所々に見える民家は、高床式(1階が柱のみで、2階より上が住居部分)の粗末な、バラックのようなものばかりです。(高床式は洪水から守り、涼しい環境を作ってくれます。)でも、ある間隔ですばらしく美しい寺院が現れます。

 華麗な寺院……。日本のお寺を陰とすれば、タイのお寺はその対極となる陽の代表です。その違いは、大乗仏教(中国、韓国、日本)と小乗仏教(東南アジア)の違いか、はたまた、民族性や環境の違い、他の宗教(ヒンズー教)の影響か?調べて見る価値はあると思います。

 極彩色の建物(1p四方の鏡に色をつけて、壁にはり付けてある。それが、太陽の光に反射して、まばゆいばかり。色調はあくまでも明るく原色である。さらに独特の屋根と装飾)が異国情緒を醸し出しています。

 華麗なタイの寺院と貧しい民家とのアンバランスがタイを象徴しているのでしょうか?仏教国でお坊さんを大事にする国。自分の食べ物が少なくなっても、お布施をする庶民。でも、この立派な寺院のほとんどが私立のもので、お金持ちの個人のお寺(その家族と親類のために建立された)です。これも、日本と違いますね。

 タイの民族舞踊に出てくる<悪魔>は剽軽で明るいキャラクターで、何か憎めません。同じ悪魔が寺院の守り神として一杯出てきます。日本の<鬼>との違いを痛感します。これも、民族性かな?

 ツアーの中に象に乗る体験があり、20分ばかり象に乗って帰ってきたら、サービスだと言って、ココナッツ(椰子)の実にストローを通したものを出され、半分無理矢理に飲まされたが、その独特の味と匂いには一瞬たじろいだ。でも、何とか残さずに飲みました。飲んだ後の椰子の実はゾウのえさになるわけです。それを持ってゾウの所に行くと、ゾウは鼻でうまくつかみ、鼻で潰して口に入れました。

 一番観光ですばらしかったのは、ワット・プラ・ケオ(エメラルド寺院)です。ワットとはお寺のことです。日本では、<日光を見ずして結構というなかれ>ということわざがありますが、きっと、タイでも<エメラルド寺院を見ずして……>と言われているのでしょう。夢の国、おもちゃの国みたいでした……。人間は美しいものが、それもたくさん集まっていると、現実感がなくなり、ただあきれて<凄い、凄い>と言うしかないものです。

 ここは王宮専門のお寺で(タイで唯一お坊さんがいないお寺だそうです)時の権力者が自分の極楽浄土への夢を実現させたものです。エメラルド寺院の由来は、本堂に安置されている仏像(高さ86センチ)が、翡翠(ひすい)でできている。この翡翠の色がエメラルド色をしていることから、この名が付きました。

 旅行の費用が一人6万7千円でした。4泊5日で観光と食事が全てついているわけですから、本当に安いと思います。日にちも夏休みになってからですから、お得だと思います。もっとも、夏休みを避けた平日だと、4万5千円からあるのでさらにお値打ちです。だから、定年になったら海外旅行に行きまくるぞと考えもするのですが、<体力と気力>が問題ですね。<親孝行したい時には親はなし>と同じく<海外旅行したい時には体力なし>になりそうです。そういう意味では、お金以上に健康が大切ですね。