薬師寺、唐招提寺

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 奈良の薬師寺を訪れたのはこれで4回目になります。いつ訪れたかの正確な年月は忘れてしまいましたが、いつも蝉時雨の暑い日でした。最初は西塔がなかった時ですから、
30年近く前になると思います。その時は東塔の美しさに「ただただ感激」したことを覚えています。薬師寺の東塔の美しさは建築的に有名で、”氷れる音楽”と呼ばれています。建築史の教科書からその美しさを知り、初恋の女性を思うようなあこがれを持っていた私は、やっとその願いが叶ったわけです。

 そして、2回目が20年近く前に、金堂を修復している時に建設現場を見学させてもらったことがあります。その時現場で有名な西岡棟梁の話も聞きました。

 それからしばらくして、偶然奈良に旅行をした折(法隆寺と唐招提寺を見るため)、薬師寺の辺がにぎやかなので、ちょっと寄って見たら西塔と講堂の落慶法要でした。この時は人があふれんばかりで、建物の見学どころではありませんでしたが、完成したばかりの西塔と金堂の朱色と緑さらに金色の輝くばかりの建物が、回りの景色と不調和に浮き上がり落ち着きのないものであったことを覚えています。

 その時、管長の高田好胤師を見ました。彼が若い頃テレビに出ていろいろな話をされていました、わかりやすい話口と説得力のある話で大ファンでした。そして、テレビに出なくなったなと思ったら、薬師寺の管長に修まっていました。

 そして今回の旅になるわけです。講堂が新しく改装されていました。20年前に見た西塔と講堂は年月の経過と共に落ち着き、回りとの調和が少しずつとれてきた気がします。

 私の好きな古建築は、唐招提寺金堂と薬師寺の東塔です。二つの建物は対照的で、男性的な前者に対して、女性的な後者です。唐招提寺は屋根の建築といわれ、門から歩いて金堂の全容が見えるあたりから見ると、屋根が全体の2/3くらいを占める感じです。その荘厳さは何物にもたとえられません。特に、雨が降ったときは、その大屋根を音を立てて雨が落ちる迫力はものすごいものです。かつて訪れた時、半日近く座って、この金堂を見つめていたことがあります。

 それに対して、薬師寺の東塔は、氷れる音楽と言われるように、本当にきれいな建物です。3重の塔ですが、裳(もこしと読みます、ひさしみたいなもの)がついているので、5重の塔のように見えます。今は、西塔がたって、西塔の新しさ(鮮やかな朱色)が異様で釣り合いがとれません。しかし西塔を作った西岡棟梁によれば、1000年先を見越して、その時2つの塔が釣り合いがとれるように考えてあるとのことです。建物の高さも西塔の方が高く作ってあります。それは、長い年月を経ることで木が縮み、高さが1000年後には東塔と同じになるのだそうです。そんな先を見越してこの建物は作られています。10002000年のスパンでものごとを見ると、自分の悩みなど小さくてバカみたいに思えてきます。

 薬師寺と唐招提寺は歩いて10分くらいの所にあります。でも、唐招提寺は大改修をしていて、メインである金堂が工事用の建物にすっぽりと覆われて外から見ることができません。それでは意味がないので、門まで行ったのですが、中には入りませんでした。後5年くらいは改修工事がかかるとのことです。