ぼうぜる(ぼうでる) <動・中三>[古]忘(ぼう)ずる[意]のぼせ上がる。古語の「忘ずる」には「我を忘れる」の意あり。命令形は「ぼうじい」となるため、大分独特の変形下二段活用「中三段活用」である。[例]たからくじぃ、あたらあ、だれでん、ぼうぜる(宝くじに当たれば、誰でものぼせ上がる)。
〔未〕ぼうでん [意]のぼせない。
〔用〕ぼうでた [意]のぼせた。[例]うれしゅうじ、ぼおでたごとなっちょった(うれしくて、のぼせたようになっていた)
〔仮〕ぼうずら [意]のぼせれば。
ぼうでがらす <名>[意]繁殖期の烏。繁殖期になると鳴き声が変わるという。[例]ぼうでがらすんごと、カウ、カウ言うち歩きよろうで(繁殖期の烏のように、カウ、カウと言って歩いているだろうよ)。
ほうな(そうな) <句>[意]そうですか。[例]ほうな、そげんこっちゃったんな(そうですか、そういうことだったんですか)。
ほおたん <名>頬たん[意]頬。
ほかう <動・五>[意]仏壇に供える。辞書には「ほがう」があり「平安時代は清音だった」とある。[例]ぶったんに、ほかうこちい、しゅう(仏壇に供えることにしよう)。
〔未〕ほかわん
〔用〕ほこうた
〔仮〕ほかわ
※清川・千枝さん
ほぐ <動・五>[意]穴をあける。
〔未〕ほがん [意]穴をあけない。
〔用〕ほいだ [意]穴をあけた。
〔仮〕ほが [意]穴をあければ。
ほぐる <動・五>[意]突く。[例]牛にほぐられた(牛に角で突かれた)。
〔未〕ほぐらん [意]突かない。
〔仮〕ほぐら [意]突けば。
ほぐる <動・中三>[意]穴があく。命令形は「ほぎい」となるので、大分独特の変形下二段活用「中三段活用」である。
〔未〕ほげん [意]穴があかない。
〔未〕ほぎゅう [意]穴があこう。
〔仮〕ほぐるら [意]穴があけば。
【邦訳日葡辞書】「ホグル」穴があく。
ぽくと <形動>[意]突然に、急に。[例]ぽくと、そげんこつぅ言われてん困るがえ(急にそんなことを言われても困りますよ)。[類]はなち
ぼくる <動・中三>[意]呆ける。暈ける。命令形は「ぼきい」となるので、大分独特の変形下二段活用「中三段活用」である。
〔未〕ぼけん [意]ぼけない。
〔未〕ぼきゅう [意]ぼけよう。[例]なんもせんじ、おら、ぼきゅうで(なにもしないでいると、ぼけるでしょう)
〔仮〕ぼくら [意]ぼければ。
ほげ <名>法外?[意]大風呂敷、法螺話。[例]あんしゃ、いってんかってん、ほげんじょう言うちょる(あの人はいつも法螺話ばかりしている)。
ほげほっぽう <名>[意]「ほげ」の強調形。
ほごゆる <動・中三>[意]人が住まなくなった家屋が傷むこと。畳がかびたり、建具の立てつけが悪くなったりすること。[例]ひとが住まな、家はほごゆるんじゃ(人が住まなければ、家は傷みやすくなるんだ)。
〔未〕ほごえん [意]傷まない。
〔未〕ほごゆう [意]傷もう。
〔用〕ほごえた [意]傷んだ。
〔仮〕ほごゆら [意]傷めば。
※清川・千枝さん
ぼすか <名>[意]レモンではなく、かぼすの果汁に炭酸水を入れた飲み物。カボス・スカッシュを縮めた名前。かつて三重駅前の喫茶店のメニューにあった。
ぼそ <名>[意]藪。[例]おまえどぉ、ぼそんなかじ、なぬしよったんか(お前たち、やぶの中で何をしていたのか)。
ぽそ <名>[意]ぼんやりとした人。[例]ぼぉっとしちょんじゃねえ、そげなんぬぽそちゅうんじゃ(ぼぉっとしているんじゃない、そういうのをぽそと言うんだ)。
ぽそっと(ぽそぉっと) <副>[意]ぼんやりとした様子。[例]やっちゃんな、あさかりぽそぉっとしち、かわぉみてんじょうおるで(やっちゃんは、朝からぼんやりとして川を見てばかりいますよ)。
ぽそんぽそん <感>[意]@所在なさげ、頼りない様子。はっきりとしない様子。[例]なぬ、ぽそんぽそんいいよんのな(なにを、はっきりしない風で話をしているんだい)。Aこれといった目的もなくぶらぶらとする様子。[例]あんしゃ、川端をぽそんぽそん歩きよったで(あの人は、川沿いをぶらぶらと歩きよったで)。
※緒方・みっこさ
ほたくりかやす(ほたりかやす) <動・五>[意]乱雑にしてある。散らかし放題散らかしてある。
※緒方・みっこさ
ほたりこむ <動・五>[意]放り込む。[例]あいたぁ、かあちゃんにかうぇえ、ほたりこまれち、泳ぎを覚えたんじゃ(あいつは、母親に川に放り込まれて泳ぎを覚えたんだ)。
〔未〕ほたりこまん [意]放り込まない。
〔用〕ほたりくうだ [意]放り込んだ。ウ音便の形となる。
〔仮〕ほたりこま [意]放り込めば。
※清川出身・三鷹んあんちゃん
ほたる <動・五>[意]@放り投げる。[例]ごみゅう、そげんとこりぃほたるなや(ゴミをそんなところに投げるな)。Aそのままに放置する[例]あいたぁ、言うこつぅ聞かんき、ほたっちょいち来た(あいつは言うことを聞かないから、放置して=おいて来た)。
〔未〕ほたらん [意]放らない。
〔用〕ほたった [意]放った。
〔仮〕ほたら [意]放れば。
〔命〕ほたれ [意]放れ。
ほづ <名>[意]ほど、物事の度合い。[例]いうほづんこたぁねえ(言うほどのことはない)。
ほっぽほうらい <名>[意]乱雑で雑然とした状態。[例]あんしゃ、きちぃっとしちょるごたるけんど、家んなかあ、ほっぽほうらいで(あの人はしっかりしているように見えるけれど、家の中は散らかし放題なんだよ)。
※荻・はらよしえさん
ぼつぼつ <副>[意]ぼちぼち、そろそろ。[例]ぼつぼつ、いぬるかの(そろそろ帰るかな)。
ほとくら <名>[意]懐。「ふところ」からの転か。
※緒方・入道さん
ほどくる <動・中三>[意]ほどける。命令形は「ほどきい」となるので、大分独特の変形下二段活用「中三段活用」である。
〔未〕ほどけん [意]ほどけない。[例]ほどけんごと、ひづう、くびれ(ほどけないように、強く縛れ)。
〔未〕ほどきゅう [意]ほどけよう。
〔仮〕ほどくら [意]ほどけたら。
ほな <感>[意]親しい間柄で交わす軽い別れの挨拶。さようなら。「ふな」に同じ。
※竹田出身・水瀬さん
ほにゅうこづむ <句>骨・う・小積む[意]直訳すれば「骨を積み上げる」となるが、「横になって体を休める」ことを言う。標準語の「骨休めをする」に近い。
※清川・康晴さん
ほむる <動・中三>[意]褒める。命令形は「ほみい」となるので、大分独特の変形下二段活用「中三段活用」である。[例]あんしが、ひつう、ほむるのを、きいたこといねえ(あの人が他人を褒めるのを聞いたことがない)。
〔未〕ほめん [意]褒めない。[例]めって、ひつう、ほめんしじゃ(滅多に他人を褒めない人だ)。
〔未〕ほみゅう [意]褒めよう。[例]よから、ほみゅうえ(良かったら、褒めようよ)。
〔仮〕ほむら [意]褒めれば。[意]ほむら、すぐ、そんきになる(褒めれば、すぐにその気になる)。
ほめく <動・五>[意]陽気が暖かく汗ばむ。[例]今日は朝かり、ほめくなあ(今日は朝から暖かいねえ)。
〔未〕ほめかん [意]汗ばまない。
〔仮〕ほめか [意]汗ばめば。
【邦訳日葡辞書】「ホメク」非常な暑さである、または、非常に熱い。
ほや <名>火屋[意]電球。元はランプの火屋(ほや)が語源で、電気の時代となっても、ガラス製の電球のことをこう呼んだが、他県では通用しない。なお、電気が普及し始めたころは電圧が一定しなかったために明かるさが安定せず、その様子を「ほやほやする」と形容したことから電球のことを「ほや」と呼ぶというのは、良くできた解説だが、こじつけであろう。
※清川・康晴さん
ほやけ <名>[意]痣(あざ)。[例]かじゅうみると、ほやけぃでくるちゅうなあ(火事を見ると、あざが出来ると言うねえ)。
<参>緒方町誌には、「妊婦が火事を見ると赤ほやけ、葬式を見ると黒ほやけの子を産む」という言い伝えが載っている。
※緒方・みっこさ
【邦訳日葡辞書】「ホヤケ」身体にできる黒いあざ。
ほゆる <動・中三>[意]吠える。標準語では下一段活用だが、大分では下二段活用となる。ただし、命令形が「ほいい」となるので、正確には中三段活用である。
〔未〕ほえん [意]吠えない。
〔未〕ほゆう [意]吠えよう。ウ音便の形となる。
〔未〕ほゆう [意]吠えよう。
〔仮〕ほゆら [意]吠えれば。
ほらくる <動・中三>[意]落ちる、転落する。「ずぼらくる」は強調。命令形は「ほらきい」なので、大分独特の下二段活用の変形「中三段活用」である。[例]あんやたぁ酔いたくろうち田ん畦やら歩きよるが、見ちょっちみよ、ほらくるど(あいつは酔って田の畦など歩いているが、みていなさい、落ちるよ)。
〔未〕ほらけん [意]落ちない。
〔未〕ほらきゅう [意]落ちよう。ウ音便の形となる。
〔仮〕ほらくら [意]落ちれば。
ぼる <動・五>[意]水などが漏れる。[例]そんばけたぁ、ほげちょるごたるぞ、みずいぼりよるが(そのバケツは穴が開いているみたいだよ、水が漏れている)。
〔未〕ぼらん [意]漏らない。
〔仮〕ぼら [意]漏れれば。
ほろけえ <副>[意]壊れやすい、もろい。ほぼ「ほろけえ」の形で使用されるので副詞に分類した。
※『緒方町誌』
ほろせ <名>[意]発疹。[例]あんた、かきにでん、当たったんな、ほろせぃ、出ちょんやねえな(あなたは牡蠣にでも当たったんですか、発疹が出ているじゃないですか)。
ほんこ <名>本こ[意]真剣勝負。メンコやビーロン(ビー玉)で勝った方が負けた方のメンコあるいはビーロンを戦利品として自分のものにする。[例]今日んぱっちんな、ほんこど(今日のメンコは真剣勝負だぞ)。<反>かしこ
ほんこし <副>[意]本気でやる気になること。標準語では「ほんごし(本腰)を入れる」というのが一般的だが、大分では「ほんこしいなる」と表現する。[例]たまにゃあ、ほんこしいなっちみよ(たまには、本気になってみろよ)。
ぽんじぃ <名>[意]アオイ科の落葉低木、槿(むくげ)。
ぽんず <名>[意]お椀にカボスの汁を絞り入れてお湯、砂糖少々を加えたもの。風邪で熱のある時にこれを飲んで寝ると、大概の風邪はひと晩で治る。オランダ語では柑橘類の果汁を「ポンス(pons)」というそうで、これが語源であるとみてよさそうだ。
ほんとむく <句>[意]ひとの嘘や作り事の冗談を本気にする、信じ込む。[例]あげんしん、いうこつぅ、ほんとむくたなあ(あんな人の言うことを信じ込むなんてねえ)。
※緒方・みっこさ
ぼんとんぼ <名>盆蜻蛉[意]蜻蛉目不均翅亜目トンボ科に分類されるトンボ、ウスバキトンボ(薄羽黄蜻蛉)。お盆のころに人里を群れて飛ぶためこの名がある。小さな昆虫を捕食する。
※緒方・みっこさ
ぽんぽんぐさ <名>[意]イラクサ科の多年草、苧(からむし)。折って漏斗状にした葉を緩めた拳に乗せ、空いた手で上から叩くと「ポン」と良い音がする。この遊びが「ぽんぽん」の語源か。
※清川・康晴さん