◇動詞の“大分活用”◇
大分弁の動詞は、独特の活用を見せる。
大きな特徴のひとつに、未だに
文語的な活用形が多く残っていることがあげられる。標準語では上一段活用の動詞の多くが下二段に活用する。
また、大分弁には
仮定形の「ば」につながる活用がない。大分弁の主に五段活用の動詞は、仮定形の語尾に「ば」を付ければ、文語表現の「仮定形」となるものが多い。実際にそのように「ば」をつけて使用されることはないものの、文語体の名残と見ることが出来る。また、未然形は関西弁などと同様に、「ない」ではなく「ん」に活用する。
【五段活用】
「歌う」「かう(買う、飼う)」「まう(舞う、回う)」「あう(会う、合う、逢う、遭うなど)」「這う」「違う」などは、「た」につながる連用形が「うとうた」「こうた」「もうた」「おうた」「ほうた」「ちごうた」と、「ウ音便」の形で使われる。
口語の標準語では上一段活用の「借りる」「足りる」「飽きる」などが、大分弁では「借る」「足る」「飽く」と五段活用となる。また、文語の上一段活用の「煮る」「見る」が五段活用で使われる。
さらに、下一段活用の「寝る」も五段活用で使用される。
【下二段活用・中三段活用】
口語の上一段活用「降りる」が「降るる」、下一段活用「受ける」が「受くる」、「寄せる」が「寄する」などと、下二段活用で使われる。しかし、例えば「受くる」の未然形が「うけん」と「うきゅう」、命令形が「受きい」が使われることから、厳密に言えば“中三段活用”と呼ぶべきだろう。ただし、命令形は「うきい」だけでなく、丁寧に言う場合や女性の表現では「受け・よ」と言う。
【カ行変格活用】
口語のカ行変格活用と違って、命令形が「こい」ではなく「きい」あるいは「きよ」を使う。標準語では「こ・まい」となる推定否定の形が「き・めえ」となる。
【サ行変格活用】
カ行変格活用と同様、命令形が「しろ」ではなく「しい」あるいは「しよ」となる点が、標準語とは異なる。推定否定「する・まい」が「し・めえ」となる。
【ナ行変格活用】
標準語では五段活用の「死ぬ」などがナ行変格活用で使われている。ナ行変格活用は文語で使用されたが、標準語には残っていない。
※その他
「きる」が可能の助動詞として使われる[例]書ききる(書ける)、作りきる(作れる)
「〜ている」が
「〜とる」「〜ちょる」の形で使われる[例]寝ちょる(寝ている)。例えば、標準語では継続した状態「いつもこの部屋で寝ている」、現在の状態「父は寝ている」と、ともに「〜ている」の形をとるが、大分弁では「いつもこの部屋で
寝よる」「父は
寝ちょる」と使い分ける。
※この項は「総合国語事典」(大分県高等学校国語教育研究会編・昭和51年3月1日発行)を参考にしました。
(2005年03月20日)