こ <接尾>[意]人の名前の最後につけて、親しみを表す。[例]よんべ、しげるこが、よいくろうちなあ(昨夜、しげるさんが酔っ払ってねえ)。
<参>古典落語に出てくるで長屋の「はちこう」くまこう」の「こう」だとすれば「公」が縮まったものか。
※緒方・入道さん
〜こ <副助>[意]〜など。[例]うわやきぃ、文句ぅ、言うたりこしなんなえ(上司に文句を言ったりなどしてはいけませんよ)。
こいい <形>[意]濃い。
〔用〕こゆうなる、こいなる [意]濃くなる。
〔仮〕こいから、こゆから [意]濃ければ。
こいたいかれん <句>[意]しまった、どうしようもない。[例]こいたいかれん、カメラぃ、みじぃ漬かっちしもうた(しまった、カメラが水浸しになってしまった)。
こうかのき <名>[意]マメ科の落葉高木、合歓の木。
※清川・康晴さん
こえ <名>肥え[意]肥やし。辞書に載る標準語だが、大分では「肥やし」より「肥え」が一般的。
こえたご <名>[意]肥溜め。[例]よなけえ、であるきよると、こえたごぃはまるんど(夜中に出歩いていると、肥溜めに落ちるんだぞ)。
こえまけ <名>[意]肥やしに触れて皮膚がかぶれること。
※『岡藩のひらくち』
こえまつ <名>[意]赤松の根を使った松明。お盆の迎え火、泊まり火、送り火として、夕方に門前で焚く。
<参>柱松(はしらまつ)。
※清川出身・和弘さん
こえむし <名>肥え虫[意]カブト虫をはじめとした甲虫類の幼虫。堆肥の中にいることが多いためか。
こお <感>[意]ほら、そら。自分の持っている物を人に見せる際などに使う。[例]こお、いいもんもろうたんで(ほら、良い物をもらったんだよ)。
【邦訳日葡辞書】「カゥ」このように、こんな具合に。
こおん <感>[意]してはならないことをした相手に対して爆発寸前の怒りを込めて言う言葉で、「このやろう」とか「この馬鹿野郎」といった意味を持つ。
※緒方出身・前田芳男さん
こかす <動、五>[意]転ばす。
〔未〕こかさん [意]転ばさない。
〔用〕こけえた [意]転ばせた。
〔仮〕こかさ [意]転ばせば。
【邦訳日葡辞書】「コカス」山から下へ石などを転がす、あるいは落とす。
こきぃ <句>[意]ここ・に。[例]鎌なり、こきぃあるで(鎌なら、ここにあるよ)。
ごきぃつかん <句>[意]仕事に就かずぶらぶらしている状態を言う。[例]いいわけえもんが、ごきぃつかんじ、こまったもんじゃ(いい若い者が、仕事もせずにぶらぶらしていて困ったものだ)。
※清川・千枝さん
こくる <動・中三>[意]転ぶ。標準語では「こける」とも言い、標準語だと下一段活用だが、大分では下二段活用となる。しかし、命令形が「こきい」となるために正確には中三段活用」となる。[例]あんまれ、いそいじ、こくんなや(あまり急いで、転ぶなよ)。
〔未〕こけん [意]転ばない。
〔未〕こきゅう [意]転ぼう。
〔仮〕こくら [意]転べば。
こぐる <動・五>[意]くぐる。藪の中を歩くことを「藪漕ぎ」というが、類語と考えて良さそうだ。
〔未〕こぐらん [意]くぐらない。
〔未〕こぐろう [意]くぐろう。
〔仮〕こぐら [意]くぐれば。
※緒方・入道さん
こぐる <動・中三>[意]火に焼けて黒くなる。焦げる。標準語では下一段活用だが、大分では下二段活用となる。ただし、命令形が「こぎい」となるので、正確に言うと中三段活用である。
〔未〕こげん [意]焦げない。
〔未〕こぎゅう [意]焦げよう。
〔仮〕こぐら [意]焦げれば。
こけ <名>[意]垢。菌類の苔と同じ読みである。
こげえ <形動>[意]このように、こんな風に。[例]こげえ、おもから、かるいきらんがえ(こんなに重ければ担げないよ)。
こけこうろう <名>[意]イラクサ科の多年草、刺草。葉と茎にあるとげはぎ酸を含み、触れるとヒリヒリと痛く、水泡ができることもある。「こけこうろう」の語源は不詳。
こげなん <連語>[意]こんなもの[例]こげなん、いらん(こんなもの、いらん)。
こげん(こげな) <形動>[意]こんな、このような。[例]こげんこてぃ、なっちょんのか(こんなことになっているのか)。
ここんこ <句>[意]此処の子。[例]あんた、ここんこな(あなたは、ここの家の子ですか)。
ここんし <句>[意]此処の人。[例]ここんしゃ、おらんごとあるなあ(この家の人は、いないようだなあ)。
こさぐ <動・五>[意]こそぐ。強くこする。[例]やまみちゅう、車じ行ったら、はろぉこさいだ(山道を車で走ったら、車の底をこすった)。
〔未〕こさがん [意]こそがない。こすらない。
〔未〕こさごう [意]こそごう。こすろう。
〔用〕こせえだ [意]こそいだ。こすった。。
〔仮〕こさが [意]こそげば。こすれば。
〔命〕こさげ、こさぎよ [意]こそげ。こすれ。
ごさんぴん <形>御三品?
【解説】200CCのコップに砂糖を大さじで軽く一ぱい、酢と醤油を半分ずつ入れて良く混ぜる。生野菜や鳥天など揚げ物にかけて食べると美味。酢の代わりにカボスを使うともっと美味。
こしい <形>[意]ずるい。「こしきい」に同じ。[例]そらあ、こしいわ(それは、ずるいよ)。
〔用〕こしゅうなる [意]ずるくなる。
〔仮〕こしから、こすから [意]ずるければ。
こしかけじる <名>腰掛尻?[意]嫁入りしたが居つくか出るか決まらない状態の人。
※岡藩のひらくち
こしきい <形>[意]ずるい、こすからい。「こしい」に同じ。[例]あんしゃ、こしきい(あのひとは、ずるい)。
〔用〕こしきゅうなる [意]ずるくなる。
〔仮〕こしきから [意]ずるければ。
こじょく <名>小食[意]食が細いこと、小食。[例]あんた、いつかり、そげえ、こじょくになったんな(あなたは、いつからそんなに食が細くなったんですか)。<反>ううばらとり。
※清川・千枝さん
こしらゆる <動・中三>[意]@着飾る。A荷造りする。
〔未〕こしらえん [意]@着飾らない。A荷造りしない。
〔未〕こしらゆう [意]@着飾ろう。A荷造りしよう。
〔仮〕こしらゆら [意]@着飾れば。A荷造りすれば。
〔命〕こしらいい [意]@着飾れ。A荷造りしろ。
※清川・邦友さん
こじりゅうつまむ <句>こじりをつまむ[意]人の些細な言い間違いを一々指摘する。上げ足を取る。「こじり」は刀剣の鞘(さや)の末端「鐺」か。
※緒方・入道さん
<参>辞書には「鐺(こじり)咎め」という言葉が載っている。江戸時代に武士が往来などすれ違う際に刀の鞘がぶつかることを無礼だとして咎めることで、転じて些細なことで喧嘩をすることを言った。
ごしんどうでした <句>[意]お疲れ様でした。「ごしんどでした」ともいう。関西地方で「ああ、しんど」(ああ、疲れた)という場合の「しんど」に「御」を付けたものではなかろうか。大辞林には「しんど」が「心労」の転という説が載る。
こするる <動・中三>[意]擦(こす)れる。命令形は「こすりい」となるので、大分独特の変形下二段活用「中三段活用」である。
〔未〕こすれん [意]擦れない。
〔未〕こすりゅう [意]擦れよう。
〔仮〕こするら [意]擦れれば。
こぜ <名>[意]細かな気配り。気働き。[意]あんしゃ、こぜいきかんきなあ(あの人は、小さなことに気が回らないからねえ)。
※清川・千枝さん
こぜわしい <形>[意]忙しい。これといった大きな仕事はないのだが、なにやかやと用事があって忙しいこと。
〔用〕こぜわしゅうなる [意]忙しくなる。
〔仮〕こぜわしから [意]忙しければ。
こそばいい <形>[意]くすぐったい、こそばゆい。
〔用〕こそばゆうなる、こそばいなる [意]くすぐったくなる。
〔仮〕こそばゆから [意]くすぐったければ。
【邦訳日葡辞書】「コソバイイ」くすぐったい。
こそぐる <動・五>[古]擽(こそぐ)る[意]くすぐる。二葉亭四迷の「片恋」に使用例。
〔未〕こそぐらん [意]くすぐらない。
〔未〕こそぐろう [意]くすぐろう。
〔仮〕こそぐら [意]くすぐれば。
〔命〕こそぐれ [意]くすぐれ。
ごそごそ <副>[意]さっさと[例]そんくれんこたあ、ごそごそかじめっしまいなあ(そのくらいのことは、さっさと片付けてしまいなさい)。
※緒方・みっこさ
こそっと <副>[意]こっそりと。人の見ていないうちに、そっと。言外に「ずるい」という印象がこもることが多い。
※清川・ひろさん
こだい <名>小松明
【解説】「虫送りの行事」と言われ、虫の「走光性」を利用した稲の害虫駆除。水田に面した道端やあぜ道沿いに2、3bの間隔をおいて立てた竹の棒の先端にろうそくをつけて火を点ける。地区によっては、ろうそくの火が風で消えにくいようにちり紙をろうそくに巻きつけたり、ろうそくの代わりに灯油を入れた空き缶を使う所もあった。昔は赤松の根を使った松明だったらしい。旧暦の八朔(八月一日)に行ったようだが、現在は8月中旬から9月上旬にかけて行われている。緒方の行事が規模が大きく、よく知られているが、他の集落でも続けられている。。集落で協力して取り組む行事で、家族連れで涼みながらその眺めを楽しむのが真夏の夜の風物詩となっている。
ごたる <句>ごと・ある[意]のようである。「ごつある」に同じ。[例]こんばんあたり、雪が舞うごたるで(今晩あたり、雪が降るみたいだよ)。
こたゆる <動・中三>[意]応える。きつい仕事や運動で体に負担がかかること。[例]こんしごたぁ、こたゆるのお(この仕事はきついなあ)、
〔未〕こたえん [意]体がきつくない。[例]いっこん、こたえんで(ちっとも、きつくないよ)。
〔用〕ことうた [意]体がきつかった。[例]きょうは、ことうたのお(今日は、きつかったねえ)。
〔仮〕こたゆら [意]体がきつければ。
こだれ <名>木垂れ[意]繁茂した木のせいで出来る陰。[例]田にこだれぃでけちしもうちょるき、あんきゅう切らせちょくれ(木が茂って田に陰が出来るようになったから、あの木を切らせてください)。
※緒方・みっこさ
こちょこちょのき <名>[意]ミソハギ科の落葉高木、百日紅。
※清川・千枝さん
こつ <名>[意]雄の子牛。[例]牛の子い二つもでけちな、それいふたつともこつじな(子牛が二頭も生まれてね、それが二頭とも雄でね)
※清川・三代子さん
こつ <名>[意]事(こと)。[例]おまえんこつ、まっちょったんじゃが(おまえのことを待っていたんだ)。
ごつ <助動>[意]〜のように。「ごと」に同じ。
〜ごつある <句>[意]〜のようである。「ごたる」に同じ。[例]あめい、あがったごつある。
こっけむくさん <副>[意]一目散に。一散に。「こっけむくり」に同じ。[例]おずうじたまらんき、こっけむくさんにげちもどった(怖くて堪らないから一目散に逃げて帰った)。
※『あさじ昔ばなし』
こっけむくり <副>[意]一目散に。一散に。「こっけむくさん」に同じ。[例]へびがでたき、こっけむくりぃ、にげた(蛇が出たものだから、一目散に逃げた)。
※『宮城 おらが村ん方言 がまだす』
ごっこん <擬音>[意]ごくんごくん、どんどん。飲み物を大量に飲む様。[例]よんべ、さきゅう、ごっこんぬうだら、今朝ぁどうかわりい(夕べ、酒を沢山飲んだら、今朝はどうも気分が悪い)。
こっちょう <名>[意]主に動物で、年をとったものをさす。[例]きょうみたきつねは、しっぽんさきがしろかったき、あらあ、こっちょうじゃ(今日見た狐は尻尾の先が白かったから、あれはかなり年をとった古狐だ)。
※清川・千枝さん
【解説】辞書には「骨頂(こっちょう)」があり、その中に「経験あり、技能に優れていること。老練・有能であること」という説明がある。「老練」が「年経る」に通じるものがあるようだ。標準語の「愚の骨頂」は「愚かさも極まった」という意味であり、やはり通じるものがあるように思われる。
【邦訳日葡辞書】「コッチャゥ」骨張。何かの技に習熟していること、巧みであること。
こってぃ <名>[意]雄牛。 <反>うなめ(おなめ)。
※緒方・入道さん
【解説】大辞林には「ことい」が「特牛」「特負」の字で収められている。また、「こというし」として「特牛、牡牛。強く大きな牡牛。こといのうし。ことい。こってい。こっていうし。こってうし。こっとい。」との説明がある。「ことい」が転じて「こってい」「こってぃ」となったものと思われる。
山口県下関市には「特牛(こっとい)」の地名があり、その地を走るJR山陰本線には「特牛(こっとい)駅」がある。
【邦訳日葡辞書】「コトイ」「コットイ」去勢をしていない牡牛、または純粋種の牡牛。
こづむ <動・五>[意]積み上げる。<参>わらこづみ
〔未〕こづまん [意]積み上げない。
〔未〕こづもう [意]積み上げよう。
〔仮〕こづま [意]積み上げれば。
【邦訳日葡辞書】「コヅム」堆積する、あるいは、重ねて積む。
こで <名>小手?[意]手先。
ごてしん <名>御大身?[意]怠け者。しなければならないことを嫌がり、先延ばしにする人。[例]せなならんこつが分かっちょんのなり、さっさとせんか、こん、ごてしんが(しなくてはいけないことが分かっているのなら、さっさとしないか、この怠け者が)。
【解説】身分の高い「御大身」(ごたいしん)の人は、身の回りのことを何でも人に任せて自らは手を出さないことから、昔の庶民がそれを皮肉って言ったものではないだろうか。語源について、仏教の「五体死に」からの転ではないかとする説もあるが、豊語林の主宰者としては「御大身」を採る。
〜こと <終助>[意]文末に付けて、強調の意を表す。丁寧な言い回しで、主に女性が使う。[例]ご飯炊いちょいてち、言うたこと(ご飯を炊いておいてと言ったじゃないの)。
〜ごと <助動>[古]如[意]〜のように。「ごつ」とも言う。[例]わがんごと(ごつ)、おうちゃきいやたおらん(お前のように生意気な奴はいない)。
<参>さ寝らくは 玉の緒ばかり 恋ふらくは 富士の高嶺の 鳴沢のごと(寝たことはほんのわずかだ、恋のすさまじさは富士の高嶺の鳴沢の音並みだ=萬葉集3358)。
こどり <名>[意]杵と臼で餅をつく際に、杵の合間に手で餅をひっくり返す役のこと。
※『緒方町誌』
【邦訳日葡辞書】「コドリ」大工の手伝いをする若者。
ことわり <名>[意]謝罪、お詫び。
ことわりゅういう <句>[意]謝罪する。詫びの言葉を言う。「ことわり」と大分独特の目的格の格助詞「う」、動詞「いう」で構成されている。
こなす <動・五>[意]いじめる。[例]ゆみちゃん、こんめぇ弟ぅ、こなすもんじゃねえんで(ゆみちゃん、小さい弟をいじめるもんじゃないよ)。<参>古語「熟(こな)す」には「ばかにする」「けなす」の意有り。
〔未〕こなさん [意]いじめない。[例]こんめえもぬぅ、こなさんごといいよ(小さな者をいじめないように言いなさい)。
〔未〕こなそう [意]いじめよう。[例]また、うちんこを、こなそうどしよる(また、うちの子をいじめようとしている)。
〔用〕こねえた [意]いじめた。[例]わが、おれんおとうつう、こねえたんちのう(お前、俺の弟をいじめたんだってなあ)。
〔仮〕こなさ [意]いじめれば。[例]こんだ、こなさ、しょうちせんど(今度いじめたら承知しないぞ)。
〔命〕こなせ [意]いじめろ。[例]だれい、こなせちいうたんか(誰がいじめろと言ったのか)。
【邦訳日葡辞書】「コナス」圧しつけ締め付ける、または、責めさいなむ。
こねくる <動・五>[意]@捻る。[例]やめぇのぼっち、おりかけぃ、あしくびゅう、こねくった(山に登って下りがけに足首を捻挫した)Aこねまわす。
〔未〕こねくらん [意]ひねらない。
〔未〕こねくろう [意]ひねろう。
〔仮〕こねくら [意]ひねれば。
〔命〕こねくれ [意]ひねれ。
こぬる <動・中三>[意]こねる。標準語だと下一段活用だが大分では下二段活用となる。ただし命令形が「こにい」となることから正確には中三段活用と呼ぶべきかも知れない。
〔未〕こねん [意]こねない。
〔未〕こにゅう [意]こねよう。
〔仮〕こぬら [意]こねれば。
〔命〕こにい、こねよ [意]こねろ。
ごぬる <動・中三>[意]死ぬ。[例]みちじ、たぬきんやつい、ごねちょった(そこの道で狸が死んでいた)。
〔未〕ごねん [意]死なない
〔未〕ごにゅう [意]死のう。
〔仮〕ごぬら [意]死ねば。
〔命〕ごにい [意]死ね。
※『宮城 おらが村ん方言 がまだす』
このうち <連語>[意]この間。先日。[例]このうち、いいよったことじゃけんどなあ(この間、言っていたことだけどねえ)。
※清川・康晴さん
このよに <句>[意]こんなに。[例]みやぎゅう、もっちいったら、おかえしゅう、このよにようけもろうた(土産を持って行ったら、お返しをこんなに沢山もらった)。
こびってえ <形>[意]子供を甘やかす親。
※緒方・みっこさ
こびり(こびる) <名>[意]午前十時、午後三時のおやつ。
※緒方・みっこさ
こぼるる <動・中三>[意]こぼれる。命令形は「こぼりい」となるので、大分独特の変形下二段活用「中三段活用」である。
〔未〕こぼれん [意]こぼれない。
〔未〕こぼりゅう [意]こぼれよう。
〔仮〕こぼるら [意]こぼれれば。
ごま <名>[意]独楽。
こまむる <動・中三>[意]@小さくする。[例]テレビん音をこまめちくれなあ(テレビの音を小さくしてください)A両替をする。いずれも奥豊後独特の下二段活用の変形「中三段活用」であり、命令形は「こまめろ」ではなく「こまみい」となる。 <同>こんもする。
〔未〕こまめん [意]小さくしない。両替しない。
〔未〕こまみゅう [意]小さくしよう。両替しよう。[例]おとを、こまみゅうえ(音を小さくしようよ)。
〔仮〕こまむら [意]小さくすれば。両替すれば。[例]もちっと、おとを、こまむらいいになあ(少し音を小さくすればいいのにねえ)。
〔命〕こまみい、こまめよ [意]小さくしろ。両替しろ。[例]なあちゃ、おとをこまめよ(ねえってば、音を小さくしてよ)。
こまや <名>[意]厩の一部で、牛馬の糞や敷き藁を一時的に寄せ集めておく場所。「おとし」「こんや」に同じ。
※緒方・入道さん
こむっから <名>小麦藁[意]小麦の藁。
※清川・康晴さん
こむる <動・中三>[意]籠める、込める。命令形は「こみい」となるので、大分独特の変形下二段活用「中三段活用」である。
〔未〕こめん [意]こめない。
〔未〕こみゅう [意]こめよう。
〔仮〕こむら [意]こめれば。
〔命〕こみい、こめよ [意]こめろ。
ごもく <名>芥 [意]ごみ、塵、あくた。辞書に載る言葉だが、標準語で聞くことは稀。[例]かわに、ごもくい、ようけながれよるで(川にごみがたくさん流れているよ)。
【邦訳日葡辞書】「ゴモク」塵やあくた。文書語。
※荻・はらよしえさん
こゆる <動・中三>[古語]肥ゆ。[意]太る。肥える。大分では標準語の「太る」は「成長する」を意味し、「肥満する」ことと厳密に使い分ける。奥豊後では独特の「下二段活用の変形「中三段活用」であり、命令形は「こえろ」ではなく「こいい」となる。
〔未〕こえん [意]太らない。[例]こえんほうがいい(太らない方が良い)。
〔未〕こゆう [意]太ろう。[意]もちっと、こゆうえ(もう少し太ろうよ)。
〔仮〕こゆら [意]太れば。[例]こゆら、こまる(太れば困る)。
〔命〕こいい、こえよ [意]太れ。[例]あんた、もちっと、こえよ(あなた、もう少し太りなさい)。
こゆる <動・中三>[意]越える。超える。標準語では下一段活用だが大分では下二段活用となる。ただし命令形が「こいい」となることから正確には中三段活用と呼ぶべきである。
〔未〕こえん [意]越えない。超えない。
〔未〕こゆう [意]越えよう。超えよう。[例]あっこぅ、こゆうえ(あそこを越えようよ)。
〔仮〕こゆら [意]越えれば。超えれば。[例]あるぅ、こゆら、みゆるで(あれを越えれば見えるよ)。
〔命〕こいい、こえよ [意]越えろ。超えろ。[意]はよ、こいい(早く越えろ)。
【邦訳日葡辞書】「コユル」肥、越。
こよる <動・五>小寄る[意]小さく集まる。寄り集まる。[例]集合写真を撮るき、ちょっとこよるど(集合写真を撮るから、ちょっと集まるぞ)
〔未〕こよらん [意]寄り集まらない。
〔仮〕こよら [意]寄り集まれば。
※久住・強さん
こらえじょうね <名>堪え性根[意]忍耐力。[例]あんしゃあ、こらえじょうねぃ、いい(あの人は、辛抱強い)。
こらえちょくれ <句>[意]勘弁してください。[例]すまんじゃったなあ、こらえちょくれ(悪かったですねえ、ごめんなさい)。
こらどうか <感>[意]感に堪えない。「こらまたどうか」とも。[例]こらどうか、なんちゅう美しい紅葉じゃろうか(これはこれは、なんという美しい紅葉だろうか)。
こらまたどうか <句>[意]直訳をすると「これはまたどうだろうか」だが、感動を覚えるような場面を前に感極まって発する言葉で、慣用句的に使われる。「こらどうか」に同じ。
こらゆる <動・中三>[意]@我慢する、堪える。[例]せつかろうけんど、こらゆるんで(嫌だろうけれど、我慢するんだよ)。A許す。[例]ごめんな、こらえちゃってな(ごめんね、許してあげてね)。
大分独特の変形下二段活用「中三段活用」であり、命令形は「こらえろ」ではなく「こらいい」となる。
〔未〕こらえん [意]我慢しない。
〔未〕こらゆう [意]我慢しよう。
〔仮〕こらゆら [意]我慢すれば。
〔命〕こらいい、こらえよ [意]我慢しろ。
ごり <名>[意]水などに浮くごみや不純物。[例]くんじきたみずぃ、ごりがういちょん(汲んで来た水にごみが浮いている)。
※緒方・みっこさ
こりゃ <感>[意]目下の者に対する呼びかけの語。「これ」。[例]よい、こりゃ(おい、これ)。
こるぅ(こりゅう) <句>これ・を[意]これを。大分では格助詞「を」の代りに「う」を用いるために語尾がこのように変化する。[例]こるぅ、郵便局に出しちきちくれなあ(これを郵便局に出してきてください)。
ごろ <接尾>[意]人をいやしめる言葉に付ける。[例]やせごろ(やせっぽち)。
※『緒方町誌』
ころす <動・五>[意]殺す。標準語とは活用形が一部異なる。
〔未〕ころさん [意]ころさない。
〔用〕こりいた [意]殺した。
〔仮〕ころさ [意]殺せば。
こわかり <名>[意]細部が聞き取れること。主に「こわかりがせん」(細部が聞き取れない)と使う。[例]なんかいいよるな、わかるが、こわかりがせん(何か言っているのは分かるが、細部が聞き取れない)。
※清川・康晴さん
こわくらん <句>[意]効果がないこと。たいして変わりがないこと。作業がはかどらないこと[例]たまにかえっちきち、てつだいよるが、こわくらんのお(たまに帰って来て手伝っているが、あまり効果はないなあ)。
※清川・康晴さん
こわす <動・五>[意]お金を両替する。「くずす」に同じ。標準語とは活用形が一部異なる。
〔未〕こわさん [意]両替しない。[例]どっかじ、一万円札ぅ、こわさんとなあ(どこかで一万円札を両替しなければねえ)。
〔用〕こええた [意]両替した。
〔仮〕こわさ [意]両替すれば。[例]あっこじ、こわさ、いいわ(あそこで両替すればいいよ)。
※緒方・入道さん
こわるる <動・中三>[意]壊れる。標準語では下一段活用だが、大分では下二段活用となる。ただし命令形が「こわりい」となるので正確に言えば中三段活用である。
〔未〕こわれん [意]壊れない。[例]めって、こわれんで(滅多に壊れないよ)。
〔未〕こわりゅう [意]壊れよう。[例]どうせ、じき、こわりゅうで(どうせすぐに壊れるだろうよ)。
〔仮〕こわるら [意]壊れれば。[例]こわるら、しよいねえわ(壊れたら仕方がないよ)。
〔命〕こわりい、こわれよ [意]壊れろ。
こん <連体詞>[意]この。[例]こんはなは、なんちゅう名前な(この花は、なんという名前ですか)
こんこ <名>[意]つけもの全般。「こうこ」は「香香」と書き「香のもの」のこと。[例]ここんいえん、こんこんこぁ、うめえなあ(ここの家の、この漬物はおいしいねえ)。
こんこ <句>[意]この子[例]こんこぁ、こんめえころかり、ねごつぅ言いよった(この子は、小さいころから寝言を言っていた)。
ごんごん <擬音>[意]@ごくんごくん。「ごっこん」に同じ。[例]さきゅう、ごっこんのみよる(酒を次から次に飲んでいる)。A高いびきでぐっすり寝入っている様。[例]あっこじ、ごんごんねちょるで(あそこで、高いびきで寝ているよ)。
※竹田出身・水瀬さん
こんし <句>[意]この人。[例]こんしで、こないだ言うたしは(この人だよ、先日、話した人は)。
こんだ <連語>こんど・は[意]今度は、この次は、次回は。[例]こんだ、芋焼酎にしゅう(次は芋焼酎にしよう)。
こんめえ <形>[意]小さい。
〔用〕こんもうなる、こんもなる [意]小さくなる。[例]だれでん、としゅうとると、こんもなるんじゃ(誰でも年を取ると小さくなるんだ)。
〔仮〕こんもから、こんまから [意]小さかったら。[例]こんまから、おおきいのにかえよ(小さかったら大きいのに替えなさい)。
こんもする <句>[意]@小さくする。[例]話しが聞こえんき、テレビんおとぉこんもしてえ(話しが聞こえないから、テレビの音を小さくしてよ)。A紙幣を小さくする[例]ちょっと、五千円札ぅこんもしちょくれ(ちょっと、五千円札をくずしてください)。 <類>こまむる
こんや <名>[意]厩の中で堆肥を貯めておく場所。牛馬のいる位置より一段低く作られている。
<類>「おとし」、「おとしごんや」、「こまや」。
※『緒方町誌』
こんやたあ <句>この・やつ・は[意]この野郎。喧嘩の際には必須の言葉。[例]なぬしよんのか、こんやたあ(何をしているのか、この野郎)。
※別府出身・松崎菊也さん