ぐあいと <副>[意]うまい具合に。[例]どうも、ぐあいといかんのお(どうも、うまい具合にいかんなあ)。
くう <動・五>[意]食う。標準語とは活用形が一部異なる。
〔未〕くわん [意]食わない。
〔用〕くた、くうた [意]食った。「た」につながる連用形が「食った」とならない。またウ音便の形で「食うた」となるのは比較的若い世代で、中高年以上の世代は「くた」という人が多い。[例]よう、くたのお(よく、食ったねえ)。
〔仮〕くわ、くや [意]食えば。[意]まっと、ゆっくり、くわいいに(もっとゆっくり食えば良いのに)。
くえっと(くえと) <名>[意]崩れ落ちた土砂。「崩(く)え土」か。[例]あっこん、くえっとを、はよどくるよう、羽田野組に電話しちくれなあ(あそこの崩れ落ちた土砂を早くどけるように、羽田野組に電話してください)。
※緒方・入道さん
くける <動・五>[意]植物の苗などを間引くこと。大分市あたりでは「わく」という。
〔未〕くけらん [意]間引かない。
〔仮〕くけら [意]間引けば。
※清川・千枝さん
くさきり <名>草切り[意]草刈り。
※緒方・入道さん
くさらかす <動、五>[意]食べ物などを腐らせてしまうこと。標準語とは活用が一部異なる。
〔未〕くさらかさん [意]腐らせない。
〔用〕くさらけえた [意]腐らせた。
〔仮〕くさらかさ [意]腐らせれば。
【邦訳日葡辞書】「クサラカス」腐敗させる、腐敗するままに放置する。
くされ <名>腐れ[意]@意地悪で言う言葉。[例]あん子は、いっつも、くされんじょう言いよるなあ(あの子は、いつも意地悪なことばかり言っているね)。A意地悪な人。[例]あいたぁ、くされじゃ(あいつは、意地悪だ)。
くさる <動・五>[意]腐る。標準語とは活用形が一部異なる
〔未〕くさらん [意]腐らない。
〔仮〕くさら [意]腐れば。
くさるる <動、中三>[意]腐れる。
〔未〕くされん [意]腐れない。
〔未〕くさりゅう [意]腐ろう。
〔仮〕くさるら [意]腐れれば。
〔命〕くさりい [意]腐れろ。
【邦訳日葡辞書】「クサルル」腐り始める、または、いたみ損ずる。
くし <連語>[意]くせに。[例]おとっこんくし、ままごとやらしよら(男の子のくせに、ままごとなんかしているんだ)。
くじ <名>[意]文句、不平不満。[例]くじゅう、いうちょらんじ、しごつぅしよ(文句を言っていないで、仕事をしろ)。
<参>古語で訴訟のことを指す「公事(くじ)」が語源か。『忘れられた日本人』(宮本常一著、岩波文庫)には「何か事があるとすぐ公事をしかけてくる」(抗議を申し込んでくる)という愛知県北部の老人の話を収録している。。
【邦訳日葡辞書】[クジ]訴訟沙汰。。
くじい <副>[意]くどい。強調する場合は「しちくじい」を使う。[例]いっかい、いや、わかるが、くじいやっちゃのお(一回言えばわかるよ、くどいやつだな)。
くずす <動・五>[意]壊す。標準語とは活用形が一部異なる。[例]こうたばっかれじゃに、もうくずしたんか(買ったばっかりなのに、もう壊したのか)。
〔未〕くずさん [意]壊さない。
〔未〕くずそう [意]壊そう。
〔用〕くじいた [意]壊した。
〔仮〕くずさ [意]壊せば。
くずるる <動・中三>[意]壊れる。命令形は「くずりい」となるので、大分独特の下二段活用の変形「中三段活用」である。[例]そげん使い方しよら、くずるるが(そんな使い方をしていたら、壊れるよ)。
〔未〕くずれん [意]壊れない。
〔未〕くずりゅう 〔意]壊れよう。
〔仮〕くずるら [意]壊れれば。
〔命〕くずりい [意]壊れろ。
くぜ <名>[意]くず。農作物などで見かけが良くないなどの理由から商品として問題があるものなど。人に対しては使わない。[例]こいたぁ、くぜじゃけんど、味ゃあいいんで(これは見かけは悪いけれど、味は良いんだよ)。
※清川・千枝さん
くせる <動・五>[意]竹などが癖がついて曲がった様子。
※緒方・入道さん
くちもがい <名>[意]口答え。
ぐつ <名>[意]@要領。[例]あんしゃ、ぐつがきれん(あの人は要領が悪い、仕事がさばけない)。A按配。[例]どうも、ぐつがわりい(どうも按配が悪い)。
くど <名>[古]竃(くど)[意]かまど。京都などでは丁寧に「お」をつけて「おくど」という。
<参>『竹取物語』に使用例
くとじる <動・五>[意]寝る。床に就く。
〔未〕くとじらん [意]床に就かない。
〔仮〕くとじら [意]床に就けば。
〔命〕くとじれ [例]いつまじでん、おけちょらんじ、はよ、くとじれ。
くねる <動・四>[意]捻る。
〔未〕くねらん [意]捻らない。
〔仮〕くねら [意]捻れば。
〔命〕くにい [意]捻れ。
※緒方・みっこさ
くびる <動・五>括(くび)る[意]ひもなどで縛る。古語辞書には「首をしめて殺す」の意あり。
〔未〕くびらん [意]縛らない。
〔仮〕くびら [意]縛れば。
【邦訳日葡辞書】「クビル」結び付ける、または、しばる。
くびるる <動・中三>[意]くびれる。命令形は「くびりい」となるので、大分独特の変形下二段活用「中三段活用」である。
〔未〕くびれん [意]くびれない。
〔未〕くびりゅう [意]くびれよう。
〔仮〕くびるら [意]くびれれば。
くぶる <動・中三>[意](火に)くべる。標準語は下一段活用だが奥豊後では独特の下二段活用の変形「中三段活用」であり、命令形は「くべろ」ではなく「くびい」となる。
〔未〕くべん [意]くべない。
〔未〕くびゅう [意]くべよう。[例]ひに、くびゅうか(火にくべようか)
〔仮〕くぶら [意]くべれば。[例]ひに、くぶらいいに(火にくべれば良いのに)。
〔命〕くびい、くべよ [意]くべろ。[例]それも、くびい(それも、くべろ)。
【邦訳日葡辞書】「クブル」薪やその他の物を火の中におく、すなわち、入れる。
ぐも <名>[意]蜘蛛。がに(蟹)と同じく、昔は濁ったものらしい。
※緒方・入道さん
くゆる <動・中三>[古]壊(く)ゆ。「崩」の字を当てることもある。[意]大雨などで山や土手の斜面、あぜ道などが崩れること。大分独特の下二段活用の変形「中三段活用」であり、命令形は「くえろ」ではなく「くいい」となる。[例]うらんやまぁ、おおあめいふら、ようくゆるんじゃ(裏の山は大雨が降れば、よく土砂崩れを起こすんだ)。
〔未〕くえん [意]崩れない。
〔未〕くゆう [意]おおあめい、ふら、くゆうで(大雨が降れば崩壊するだろうよ)。
〔仮〕くゆら [意]あぜい、くゆらこまんなあ(畔が崩れれば困るねえ)。
<参>鎌倉の 見越しの崎の 岩崩(いはくえ)の 君が悔ゆべき 心は持たじ(鎌倉の見越の崎の岩くえのように、あなたが悔いるような不実な心はありません=萬葉集3365)
<参>宮崎県北部にある大崩山(おおくえやま、標高1643.3m)は大崩山地の主峰。
ぐらぐらくる <句>[意]腹が立つ。[例]信号待ちしちょったら追突された。ぐらぐらくるがのお(信号待ちしていたら追突された。腹がたつなあ)。
くらす <動・五>懲らす?[意]殴る。[例]言うこつ聞かんと、くらすぞ(言うことを聞かないと、殴るぞ)。
〔未〕くらさん [意]殴らない。
〔未〕くらそう [意]殴ろう。
〔仮〕くらさ [意]殴れば。[例]そげなやたぁ、くらさいいんじゃ(そんなやつは殴ればいいんだ)。
〔命〕くらせ [意]殴れ。
くらすみ <名>[意]暗闇。
※緒方・入道さん
くらっそ <句>[意]殴るぞ。本来の形は「くらすぞ」だが、勢いが付いて促音便になったうえ、「ぞ」が清音化している。[例]わらうな、くらっそ(てめえ、この野郎、殴るぞ)。
くらさるるど <句>[意]殴るぞ。直訳すれば「殴られるぞ」と受け身の形だが、大分では「殴る」の意味である。「くらっそ」に同じ。[例]なん。いよのんか、くらささるるど(何を言っているのか、ぶん殴るぞ)。
くらぶる <動・中三>[意]比べる。命令形は「くらびい」となるので、大分独特の変形下二段活用「中三段活用」である。
〔未〕くらべん [意]比べない。
〔未〕くらびゅう [意]比べよう。
〔仮〕くらぶら [意]比べれば。
〔命〕くらびい、くらべよ [意]比べろ。
くらるる <動・中三>叱らるる[意]叱られる。命令形は「くらりい」となるので、大分独特の変形下二段活用「中三段活用」である。[例]あいたのぉ、またくらるるが(しまった、また怒られるよ)。
くりい <形>黒い[意]黒い。強調する場合は「くうりい」、更に強調する場合は「まっくりい」。
〔用〕くろなる、くろうなる [意]黒くなる。
〔仮〕くろから [意]黒かったら
ぐるり <名>[意]周囲、周辺。
くる <動・カ変>[意]来る。標準語とは活用形が一部異なる。
〔未〕こん [意]来ない。[例]もう、まったく、こんど(もう二度と来ないぞ)。
〔未〕きゅう [意]来よう。[例]また、きゅうえな(また来ようね)。こうち、きゅうか(買って来ようか)。
〔仮〕くら [意]来れば。[例]あんたも、くら、いいに(あなたも来ればいいのに)。
〔命〕きい、きよ [意]来い。[例]わが、いちきい(お前、行って来い)。こっちぃ、きよ(こっちに来なさい)。
くる <動・五>繰る [意]涎を垂らすこと。[例]また、よだれをくりよる(また、涎を垂らしている)。
【邦訳日葡辞書】「ヨダレクリ」涎繰り。涎を垂らす人。
ぐる <動・五>[意]卓上の物などを手渡しで移す。標準語に「順繰り」という言葉がある。[例]しょうゆなり、こっちかり、ぐるで(?油ならこちらから手渡しで順に移すよ)。
〔未〕ぐらん [意]順繰りに移さない。
〔仮〕ぐら [意]順繰りに移せば。
※清川・邦友さん
くるる <動・中三>[意]呉れる。命令形は「くりい」となるので、大分独特の変形下二段活用「中三段活用」である。
〔未〕くれん [意]くれない。[例]なし、くれんのな(なぜ、くれないの)。
〔未〕くりゅう [意]くれよう。[例]たのま、くりゅうで(頼めば、くれるだろうよ)。
〔仮〕くるら [意]くれれば。[例]くるら、いいにのお(くれれば、いいのになあ)。
〔命〕くりい、くれよ [意]くれろ。くれ。[例]そるう、おりい、くりい(それを俺にくれ)。
【邦訳日葡辞書】「クルル」呉。
くるる <動・中三>[意]暮れる。命令形は「くりい」となるので、大分独特の変形下二段活用「中三段活用」である。
〔未〕くれん [意]暮れない。[例]なかなか、ひがくれんのお(なかなか日が暮れないなあ)。
〔未〕くりゅう [意]暮れよう。[例]やんがち、くりゅうで(やがて暮れるだろうよ)。)
〔仮〕くるら [意]暮れれば。[例]くるら、すいしゅうなる(暮れれば涼しくなる)。
【邦訳日葡辞書】「クルル」暮。
ぐるる <動・中三>[意]ぐれる。不良になる。堕落する。標準語では下一段活用だが、奥豊後では下二段活用の変形「中三段活用」であり、命令形は「ぐれろ」ではなく「ぐりい」となる。
〔未〕ぐれん [意]ぐれない。
〔未〕ぐりゅう [意]ぐれよう。
〔仮〕ぐるら [意]ぐれたら。[例]ぐるら、せちいなあ(ぐれたら嫌だねえ)。
くれえ <形>[意]暗い。<反>あかりい
〔用〕くろうなる、くろなる [意]暗くなる。[例]くろうなるのが、はよなった(暗くなるのが早くなった)。
〔仮〕くらから [意]暗かったら。[例]くらから、ひをつけちょくれ(暗かったら明かりを点けてください)。
くれえよう <動・五>[意]大酒をくらって酔っぱらう。「酔いくらう」を逆さにした言葉か。[例]どうせ、また、くれえようんじゃわ(どうせ、また、大酒を飲んで酔っ払うんだよ)。
〔未〕くれえよわん [意]大酒を飲んで酔わない。
〔用〕くれえようた [意]大酒を飲んで酔っぱらった。
〔仮〕くれえよわ [意]大酒を飲んで酔っぱらえば。
※緒方・みっこさ
くれなあ <句>[意]ちょうだい、おくれ。[例]それ、くれなあ(それ、おくれ)。ちょっと、てっとうちくれなあ(ちょっと、てつだっておくれ)。
くれわり <名>塊割り [意]くれは「塊(かたまり)」の意。耕運機やトラクターのないころ、稲刈り後の田を牛に曳かせた鋤で起こすと、あとに大きな土の塊が出来、そのままでは麦を蒔けないので槌で細かく砕く必要があった。その作業を「くれわり」といった。古くは「くれ」単独でも使われたようだが、今では「土くれ」「石くれ」と使われる。[例]きょうはいちにち、むぎたんくれわりじゃ(今日は一日、麦田の土の塊を砕く作業だ)。
※緒方・悦ちゃん
くろ <名>[古]畔(くろ)[意]隅。[例]たのくろ(田の畔)。
<参>古語辞典では「田と田の間の土の仕切り、あぜ」とある。松尾芭蕉の「奥の細道」には「柳は蘆野の里にありて、田の畔に残る」というくだりがあり、『くずし字で「おくの細道」を楽しむ』には「くろ」と読み仮名が振ってある。
【邦訳日葡辞書】「クロ」畔、田に沿って、または、田と田の間にある耕作をしないところ。
くろがき <名>畔柿[意]田畑の周囲に植えられた柿。
※清川・康晴さん
くろぎり <名>畔切り[意]田畑の畔やその周囲の草を刈ること。
※竹田・たかちゃん
くろぼり <名>畔掘り[意]田畑の隅を鍬などで掘り広げること。
※清川・康晴さん
くろにえ <名>黒煮え[意]打ち身で出来たあざ。
くろにゆる <動・中三>黒煮ゆる[意]打ち身で青あざができること。「煮える」は標準語では下一段活用だが大分では下二段活用となる。ただし命令形は「にいい」になるので正確に言うと中三段活用である。
〔未〕くろにえん [意]あざにならない。
〔未〕くろにゆう [意]あざになろう。
〔仮〕くろにゆら [意]あざになれば。
くわする <動・中三>[意]食わせる。命令形は「くわしい」となるので、大分独特の変形下二段活用「中三段活用」である。
〔未〕くわせん [意]食わせない。[例]なんも、くわせんど(何も食わせないぞ)。
〔未〕くわしゅう [意]くわせよう。[意]なぬう、くわしゅうか(何を食わせようか)。
〔仮〕くわすら [意]食わせれば。[意]なんでん、くわすらいいわ(何でも食べさせればいいよ)。
〔命〕くわしい、くわせよ [意]食わせろ。[例]なんか、しち、くわしい(何か料理を作って食べさせろ)。
くわゆる <動・中三>[意]加える。大分では「足す」の方が使用頻度は圧倒的に高い。「仲間に加える」は「かつる」を使う。命令形は「くわいい」となるので、大分独特の変形下二段活用「中三段活用」である。
〔未〕くわえん [意]加えない。
〔未〕くわゆう [意]加えよう。
〔仮〕くわゆら [意]加えれば。
くわゆる <動・中三>[意]咥える。命令形は「くわいい」となるので、大分独特の変形下二段活用「中三段活用」である。
〔未〕くわえん [意]咥えない。
〔未〕くわゆう [意]咥えよう。
〔仮〕くわゆら [意]咥えれば。
〔命〕くわいい、くわえよ [意]咥えろ。
くわるる <動・中三>[意]食われる。[例]かにくわるるで(蚊に食われるよ)。
〔未〕くわれん [意]食われない。
〔未〕くわりゅう [意]食われるだろう。
〔仮〕くわるら [意]食われれば。
くんづく <動・五>屈んづく[意]かがむ、四つんばいになる、俯く。
〔未〕くんづかん [意]かがまない。
〔仮〕くんづか [意]かがめば。
〔命〕くんづけ [意]かがめ。
くんまき <名>[意]首巻、襟巻き。
※緒方・入道さん