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 列車の時間を気にしながらの会話。

 「今、何分になったかの」(今、何分になったかな)
 「今、12時前10分」(今、1210分前)

 大分では、1150分を別の言い方で表現する際、「12時前10分」と言う。
 標準語だと「1210分前」と言い、大分弁とは「前」の位置が異なる。

 12時」を省いて言う場合も、標準語では「10分前」と言うが、大分では「前10分」と言い、やはり「前」を先に置く。

 標準語の場合、最後まで聞かないと「1210分」なのか「1150分」なのかが分からないが、大分弁の場合は「12時より前」であることが、先ず分かる。

 「こんな少ない言葉の中で、前が先であろうが最後であろうが、大した時間差はない」と思う人もいるだろう。
 しかし、時間を気にして気が急いている時に、
12時の前なのか、12時を過ぎているのかは、先ず知りたい情報だろうと思う。その意味で、前が先に来た方が心理的な余裕につながるような気がするが、どうだろうか。

 しかし、あらためて考えてみると、この表現方法は一体全体、どういう経緯で、だれが、いつごろ言い始めたのだろうか。時計が一般的になって以降のことだろうから、大正から昭和の初めごろにかけてではなかろうか。
 また、それが定着するからには、それなりの事情もあったに違いない。どうして大分でという疑問も含めて、謎だらけだ。
                                  (2013年4月24日)


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