な <感>[意]えっ?。人の言ったことが聞き取れずに聞き返す際に使う。[例]なっ、まちっと、おおけんこえじ、いうてえ(えっ、もう少し大きな声で言ってください)。
〜な <接尾>[意]〜ですか。[例]ぱりっとしち、どこいきですな。[例]ぱりっとした格好をして、どこに行くのですか)。
なあ <感>[意]@呼びかける際に使う。ねえ。「のお」と同じだが、「のお」は同等もしくは目下の相手に使う。[例]なあ、こおてんいいじゃろぉ?(ねえ、買ってもいいでしょう?)。A第三者に同意を求める際に使う。[例]そら違うちゃ、なあ(それは違うってば、ねえ)。
〜なあ <接尾>[意]〜しなさい。[例]さきぃ、ふりい、いっちきなあ(先に、風呂に入ってきなさい)。
なあえ <感>[意]相手に同意を求める際に使う。「なえ」「のおえ」に同じ。「のおえ」はぞんざいな言い方で、同等もしくは目下の相手に使われる。
なあちゃ <連語>[意]ねえってば。[例]もういのう、なあちゃ(もう帰ろう、ねえってば)。
なあん <感>[意]他人からの指示や指導、助言に対して拒否あるいは否定、時には嫌悪の意を込めて使う。「なん」と短く言うこともある。[例]いのこに水ぅくみにいっちくれんか。なあん、今いいところじゃに(共同水源に水を汲みに行ってくれないか。ええ〜、今良いところなのに・・・・・・)。
なえ <名>[古]地震(ない、なえ)[意]地震。「日本書紀」には「ない」と記載されている。「なえ」はこれからの転とみられる。
※緒方・入道さん
【邦訳日葡辞書】「ナエ」地震。
なえ <感>[意]相手に同意を求める際に使う。「なあえ」「のえ」に同じ。[例]きょうは日曜日じゃったろ? なえ(今日は日曜日だったよね、ねえ)。
なおす <動・五>[意]@しまう、しまいこむ。[例]つこうたもんが、なおせ(使った者が、しまえ)。九州で広く使用されており、方言だと自覚されていない。A修理する。
〔未〕なおさん [意]@しまわない。A修理しない。
〔仮〕なおさ、なおしゃ [意]@しまえば。A修理すれば。
【解説】「本来あるべき姿・状態、場所に戻す」のが元々の意味で、「仕舞う」と「修理する」の意味があったが、標準語では「修理する」の意味だけが残ったものだろう。
なおる <動・五>[意]@直る。治る。Aそれぞれのいるべき場所(席)につく。[例]遅かったじゃねえな、まあ、そき、なおっちょくれ(遅かったですね、まあ、そこの(貴方の)席に就いてください)。
〔未〕なおらん [意]なおらない。
〔仮〕なおら [意]なおれば。
【解説】「本来あるべき状態に戻る」の意。号令の「気を付け」「直れ」も「通常の状態に戻れ」の意である。ほかにも「起き直る」「向き直る」「居直る」など同様の語がある。また神事の後に行われる宴会「直会(なおらい)」も関連語だと思われる。
なかする <動・中三>[意]泣かせる。大分独特の変形下二段活用の「中三段活用」である。
〔未〕なかせん [意]泣かせない。
〔未〕なかしゅう [意]泣かせよう。
〔仮〕なかすら [意]泣かせれば。
〔名〕なかしい [意]泣かせろ。
ながせ <名>[意]梅雨。
※清川・郷思さん
【邦訳日葡辞書】「ナガシ」日本で長期間続く夏の雨、上(京都)ではツユ(梅雨)という。
ながせとしょうやは、あらぶればあがる <句>長瀬と庄屋は荒らぶればあがる [意]梅雨の末期に大雨が降ることと、村の庄屋は配下の百姓が騒動を起こせば罷免されることをいったもの。
※清川・康晴さん
ながせんゆうばれ <句>[意]梅雨の時期には夕方に晴れることが多い。[例]ながせんゆうばれちゅうちの、梅雨ん時期にゃひるに雨い降りよってん、夕方にゃはるることいおいいんじゃ(ながせの夕晴れと言って、梅雨のころには昼に雨が降っていても夕方には晴れることが多いんだよ)。
※清川・郷思さん
ながぶる <動・五>長降る[意]雨が長い間降り続く。[例]ようまあ、ながぶるのお(よくもまあ、雨が続くなあ)
〔未〕ながぶらん
〔未〕ながぶろう
〔仮〕ながぶら
※清川・千枝さん
なかま <名>[意]合間。[例]ちょっとんなかめぇ、もうおらんごつなったが(わずかな間に、もういなくなってしまったよ)。
※清川出身・三鷹んあんちゃん、緒方・みっこさ
ながむる <動・中三>[意]眺める。命令形は「ながみい」となるので、大分独特の変形下二段活用「中三段活用」である。
〔未〕ながめん [意]眺めれば。
〔未〕ながみゅう [意]眺めよう。
〔仮〕ながむら [意]眺めれば。
ながむる <動・中三>[意]長める。長くする。命令形は「ながみい」となるので、大分独特の変形下二段活用「中三段活用」である。<反>短むる
〔未〕ながめん [意]長くしない。
〔未〕ながみゅう [意]ながくしよう。
〔仮〕ながむら [意]長くすれば。
ながよこい <名>[意]大休憩。<反>ひとよこい。
〜なから <連語>[意]〜でなければ。「〜なからな」に同じ。[例]今日じゃなから、明日なりどげえな(今日でなければ、明日ではどうですか)
〜なからな <連語>[意]〜なければ。「〜なから」に同じ。[例]おまえじゃなからな、でけめえき、たのむんじゃが(お前でなければ出来ないだろうから、頼むんだ)。
なく <動・五>[意]泣く。鳴く。標準語とは活用形が一部異なる。
〔未〕なかん [意]なかない。
〔用〕ねえた [意]ないた。
〔仮〕なか [意]なけば。
なくる <動・中三>[意]泣ける。命令形は「なきい」となるので、大分独特の変形下二段活用「中三段活用」である。
〔未〕なけん [意]泣けない。
〔未〕なきゅう [意]泣けよう。
〔仮〕なくら [意]泣ければ。
なぐる <動・中三>[意]投げる。標準語では下一段活用だが大分では下二段活用となる。ただし命令形が「なぎい」となることから正確には中三段活用である。
〔未〕なげん [意]投げない。
〔未〕なぎゅう [意]投げよう。
〔仮〕なぐら [意]投げれば。
なぐるる <動・中三>[意]不良になる。脇にそれる。命令形は「なぐりい」となるので、大分独特の変形下二段活用「中三段活用」である。「なぐれ」の動詞形。
〔未〕なぐれん [意]不良にならない。
〔未〕なぐりゅう [意]不良になろう。
〔仮〕なぐるら [意]不良になれば。
【解説】大辞林は「なぐれる」を収録し「@横の方にそれるA落ちぶれるB売れ残る」の意味を掲載している。主に近世の言葉のようだ。江戸落語の古典に「火事息子」という噺がある。三代目古今亭志ん朝の高座で「この火事は直になぐれるよ」という件が出てくる。「この火事は、(風向きが変わって)間もなく脇にそれるよ」という意味だ。
なぐれ <名>[意]@野良。[例]また、なぐれい、きちょる(また、野良が来ている)。A定職にも就かず遊び暮らす者のこと、やくざ者、愚れてしまった者。[例]あいた、なぐれもんじゃあき、取り合わん方がいいぞ(あいつはやくざ者だから、相手にしない方が良いよ)。
なけべそ <名>泣けべそ[意]泣き虫。
なこうごたる <句>[意]泣きたいような気分だ。[例]ばあちゃんのはなしゅうききよると、なこうごたるで(おばあさんの話を聞いていると、泣きたいような気分になるよ)。
なご <名>名子[意]家が貧しく口減らしのために他家に住み込みで子守や仕事の手伝いをさせられる子供のこと。
※清川・千枝さん
なごうなる <句>[意]ゆっくりと体を伸ばして寝る。「なごうなっちねる」とも言う。[例]そげんせめえところじねらんでん、あっきぃいっち、なごうなりなあ(そんな狭いところで寝なくても、あっちに行って体を伸ばして寝なさい)。
※緒方・みっこさ
〜なさりい <句>[意]「〜なあ」の敬語形。〜なさい、〜なさってください。大分弁には珍しい敬語表現だが、近年では高齢者を除きほとんど使われなくなっている。[例]まあ、朝茶をのんじ、いきなさりい(まあ、朝茶を飲んで、お行きなさい)。
なし <副>[意]なぜ、どうして。[例]なし、振られたんか訳ぃわからん(どうして振られたのか訳が分からない)。
なしか <句>[意]なぜだ。[例]エンジンがかからん、なしか(エンジンがかからない、どうしてだ)。
〜なっと <名>[意]せめて〜でも。[例]べんきょうぃ、せちいんなり、いえんてつだいなっとしぃ(勉強が嫌なら、家の手伝いでもしろ)。
なづる <動・中三>[意]撫でる。命令形は「なぢい」となるので、大分独特の変形下二段活用「中三段活用」である。
〔未〕なでん [意]撫でない。
〔未〕なじゅう [意]撫でよう。
〔仮〕なづら [意]撫でれば。
なにしてん <句>[意]なんにしても。「大変に」「非常に」という意味合いで使われることが多い。[例]なにしてん、あちいのぉ(なんにしても、暑いなあ)。
※緒方・入道さん
なば <名>[意]椎茸。広辞苑には中国・九州地方で使用するとある。
<参>「なばえ」は「木の切り株から生えた芽。ひこばえ」のことで、これを「なば」の語源とする説もある。
【邦訳日葡辞書】「ナバ」茸。
なばぎ <名>なば木[意]椎茸を栽培するために菌を植える榾木(ほだぎ)のこと。
なましい <名>[古]生しい[意]半煮え、半乾き。
〔用〕なましゅなる [意]半煮えになる。
〔仮〕なましから [意]半煮えなら。
<参>太平記(新潮日本古典集成)に「なましき入道の首一つ」との記載があり、「生々しい」との注釈がついている。
※緒方町誌
【邦訳日葡辞書】「ナマシイ」生(なま)の。
なまなば <名>[意]生椎茸。<反>ほしなば(乾し椎茸)
なむる <動・中三>[意]なぞる。命令形は「なみい」となるので、大分独特の下二段活用の変形「中三段活用」である。
〔未〕なめん [意]なぞらない。
〔未〕なみゅう [意]なぞろう。
〔仮〕なむら [意]なぞれば。
〔命〕なみい [意]なぞれ。
なゆる <動>[意]命令形は「ないい」となるので、大分独特の下二段活用の変形「中三段活用」である。@萎える、疲れきる。[例]おんなじことんじょうじ、なゆるがのお(同じことばかりで、疲れ切ってしまうよ)。A中風になる。
〔未〕なえん [意]萎えない。
〔未〕なゆう [意]萎えよう。
〔仮〕なゆら [意]萎えれば。
ならぶる <動・中三>[意]並べる。命令形は「ならびい」となるので、大分独特の変形下二段活用「中三段活用」である。
〔未〕ならべん [意]並べない。
〔未〕ならびゅう [意]並べよう。
〔仮〕ならぶら [意]並べれば。
なり <接続>[意]@それならの略。[例]食欲はあるんちえ、なり、しょわねえ(食欲はあるんだって、なら、大丈夫だ)。Aそれでは。[例]なり、いのうか(それでは帰ろうか)。
なり <接助>[意]@〜するやいなや、〜と同時に。辞書に載る標準語だが、一般的な使用頻度は、明らかに東京などより大分の方が多い。[例]きなりぃ、なんかくわしいちゃ、なんなえ(来るやいなや何か食わせろとは、なんですか)。A〜したまま。[例]あんまれ、しょわしいもんじゃき、立ったなり、めしゅうくいよる(あんまり忙しいものだから、立ったまま、ご飯を食べている)。
〜なり <助動>[意]〜なら。[例]お前が行くんなり、儂も行こう(お前が行くのなら、私も行こう)。
なりめえ(なるめえ) <句>[意]なるまい。[例]台風がくるごたるき、うえきばちゅう、いえんなけいれななりめえ(台風が来るようだから、植木鉢を家の中に入れなければなるまい)。
なりゃ(あ) <連語>[意]できることならば。[例]なりゃ(あ)、はよかいっちきちくるると助かるがのお(できることなら、早く帰ってきてくれるとたすかるんだがねえ)。
なるる <動・中三>[意]慣れる。命令形は「なりい」となるので、大分独特の変形下二段活用「中三段活用」である。
〔未〕なれん [意]慣れない。
〔未〕なりゅう [意]慣れよう。
〔仮〕なるら [意]慣れれば。
なん <代>[意]何。@名前は意味を問う場合に使う。[例]そら、なんな(それは、なにですか)。A打消しの言葉の上に付けて、相手の心配や不安を軽く否定する。[例]なん、しょわねえ(なに大丈夫だ)。
なん <感>[意]指示されたことに軽く拒否の意志を表明する際に使う。「なあん」に同じ。
なんいよんのか <句>[意]なにを言っているのか。[例]なんいよんのか、どうくんなや(何を言っているのか、ふざけるなよ)。
なんかかか <句>[意]何やかや。[例]まいにち、なんかかか、ようがでくるもんじゃ(毎日、何やかやと用事ができるものだ)。
※清川・久洋さん
なんかかる <動・五>[意]寄りかかる、体を預ける。[例]ふすめぇ、なんかかるなちゃ(ふすまに、よりかかるなってば)。
〔未〕なんかからん [意]寄りかからない。
〔仮〕なんかから [意]寄りかかれば。
なんかくる <動・中三>[意]投げつける。命令形は「なんかきい」となるので、大分独特の変形下二段活用「中三段活用」である。[例]いしゅう、なんかくるど(石を投げつけるぞ)。
〔未〕なんかけん [意]投げつけない。
〔未〕なんかきゅう [意]投げつけよう。
〔仮〕なんかくら [意]投げつければ。
なんかなし <副>[意]とにかく、なんでも良いから。[例]なんかなし、いきゃあわかるき(とにかく、行けば分かるから)。
なんがなんじぇん <連語>[意]何が何でも。「なんがなんでん」に同じ。[例]なんがなんじぇん、いくんど(何が何でも行くんだぞ)。
なんがなんでん <連語>[意]何が何でも。「なんがなんじぇん」に同じ。[例]なんがなんでん、がんばらな(何が何でも頑張らなきゃ)。
〜なんこ <副助>[意]など。[例]かいしゃあ やめてえなんこ、そげんこつぅいいなんな(会社をやめたいなどと、そんなことをいわないで)。
なんこむ <動・五>[意]投げ込む。[例]ひとぃつりゅうしよんに、いしゅう、なんこむた、なんか(人が釣りをしているのに、石を投げ込むとはなんだ)。
〔未〕なんこまん [意]投げ込まない。
〔仮〕なんこま [意]投げ込めば。
なんさま <副>[意]なにしろ。[例]なんさま、かだらぃなまっちょっち、いきがきるる(なにしろ体がなまっていて、息が切れる)。
なんしな <句>[意]何の用かな。[例]今日は、なんしな(今日は、何の用かな)。 ※緒方・みっこさ
なんじゃき <副>[意]どうして、なぜ。「どしち」に同じ。[例]なんじゃき、そげんこつう、いうんか(どうしてそんなことを言うのか)。
なんじゃきや <句>[意]どうしてだ。[例]しごつぅ休むちや、なんじゃきや(仕事を休むって? どうして?)。
なんじぇん <連語>[意]何でも。大分では「で」が「じぇ」になってしまうことが少なくない。「なんでん」に同じ。[例]なんじぇん、いいき、はよいきなあ(何でもいいから、早く行きなさい)。
なんじぇんかんじぇん <連語>[意]何でもかでも。「なんでんかんでん」に同じ。[例]なんでんかんでん、そき、あるもぬう、たべなあ(何でもかでも、そこにある物を食べなさい)。
なんしよん <句>[意]何をしているんですか。特に意味もなく挨拶代わりに使われることも少なくない。
なんちゃねえ <句>[意]なんということはない。大したことではない。[例]なんちゃねえがえ(たいしたことはないよ)。
※緒方・みっこさ
なんでん <連語>[意]何でも。「なんじぇん」に同じ。[例]なんでん、いいき、なんか、くわせなあ(何でも良いから、何か食べさせて)。
なんでんかんでん <連語>[意]何でもかでも。「なんじぇんかんじぇん」に同じ。[例]なんでんかんでん、いっしょまくりじゃ(何でもかでも、一緒くただ)。
なんとんしれん <句>[意]くだらない。
なんな <句>[意]なんですか。[例]どげえでんいいちゃ、なんな(どうでも良いって、なんですか)。
〜なんな <連>[意]〜しないで。[例]しなんな(しないで)、歩きなんな(歩かないで)、食いなんな(食べないで)。
〜なんぬ <副助>[意]「〜なんこ」に同じ。
なんのきなし <副>[意]何気なく。[例]なんのきなしぃテレビゅうみよったら、びるに飛行機がつっこみよった(なにげなくテレビを見ていたら、ビルに飛行機が突っ込んでいた)。
なんのこたあねえ <句>[意]何のことはない。思ったより簡単に物事が済むこと。[例]なんのこたあねえ、えっとしたこたあなかった(何のことはない、大したことはなかった)。
※清川・久洋さん
なんのど(なんのぞ) <句>[意]〜なるんだぞ。[例]くうち、すぐ寝ると、うしぃなんのど(食べて、すぐに寝ると、牛になるんだぞ)。
なんのばち <副>[意]何の因果で、どういうわけで。[例]なんのばちぃ、おれい便所掃除やらせなならんのか(どういうわけで、俺が便所掃除などしなくてはならないのか)。
なんぼでん <連語>[意]いくらでも。
なんぼなんでん <連語>[意]いくらなんでも。[例]なんぼなんでん、そらえれじゃ(いくらなんでも、それはあんまりだ)。