おあつうございます <句>[意]挨拶言葉、お暑いですね。
おいい <形>[意]多い。[例]東京は、ひとぃおいいのい、せちいなあ(東京は人が多いのが嫌だなあ)。
〔用〕おおなる [意]多くなる。
〔仮〕おおから [意]多ければ。
おいかくる <動・中三>[意]人や車などの後を追いかける。命令形は「おいかきい」で、大分独特の変形下二段活用の中三段活用である。
〔未〕おいかけん [意]追いかけない。
〔未〕おいかきゅう [意]追いかけよう。
〔仮〕おいかくら [意]追いかければ。
〔命〕おいかきい [意]追いかけろ。
【邦訳日葡辞書】「オイカクル」追跡する。
おいた <名>[意]大分(おおいた)。地元の人々は大概「おおいた」と言わず「おいた」と表現する。
おいてえ <句>[意]大分に。
【解説】「大分[ooita]」+「に[ni]」で構成されている。[ni]から[n]が消えて残った「い[i]」が、前の語尾の母音[a]と連続すると[e]に変化するために「おおいたに」が「おおいてえ」となり、さらに「おいてえ」となる。[例]ちょっと、おいてえ、いちくる(ちょっと、大分に行ってくる)。
おいでちょくれ <句>[意]おいでください。[例]たまにゃぁ、あそびぃおいでちょくれ(たまには遊びにいらっしゃってください)。
おいでる <動・四>[意]いらっしゃる。「おいでちょくれ」と同様に、大分弁には珍しい敬語表現。[例]よう、おいでちくれました(ようこそ、いらっしゃいました)。ご主人な、おいでるじゃろうか(ご主人は、いらっしゃいますか)。
おいのこす <動・五>[意]追い越す。[例]国道57号じ、カブにおいのこされた(国道57号でカブに追い越された)。
〔未〕おいのこさん [意]追い越さない。
〔仮〕おいのこさ [意]追い越せば。
〔命〕おいのこせ [意]追い越せ。
おう <動・五>[意]追う。時に「追い払う」の意で使われることもある。標準語とは活用が一部異なる。
〔未〕おわん [意]追わない。
〔用〕ううた [意]追った。ウ音便の形になるため語幹部分まで変化する。[例]
ううちぇん、てぃいちくるんじゃ(追い払っても着いてくるんだ)。
〔仮〕おわ [意]追えば。
おうこ(おうこう) <名>[古]朸(おうご、おうこ)[意]刈り取った稲の束を両側に突き刺して担ぐ棒。両端を尖らせてある。奥豊後では竹を使うことが多い。
[解説]大辞林には「歌では『会ふ期(あふご)』にかけて用いることが多い」とある。<参>片恋や 苦しかるらむ 山がつの 朸のなしとは 見えぬものから(蜻蛉日記)。
【邦訳日葡辞書】「ワゥコ」天秤棒として物を運ぶのに用いる棒。
おうた <動・五>[意]合う、会う、遭う、遇うの連用形。標準語では「あった」となるべきところ、奥豊後ではウ音便の形で使われる。
おうちゃきい <形>横着い[意]生意気な、横着な。[例]あんやたあ、おうちゃきいやっちゃ(あいつは、生意気な奴だ)。
〔用〕おうちゃきゅう [意]生意気に。
〔仮〕おうちゃきから [意]生意気なら。
おうどうもん <名>横道者?[意]悪賢い人。
おおかたまかた <副>[意]大体、大体のところ。[例]おおかたまかた、こんくれしちょかよかろうじゃねえか(だいたい、これくらいしておけば良いのではないかな)。
おおきい <形>[意]大きい。標準語とは連用形と仮定形が異なる。
〔用〕おおきゅうなる、おおきなる [意]大きく。[例]おおきゅうなったのお(大きくなったねえ)。
〔仮〕おおきから [意]大きければ。
おおきに <句>[意]ありがとう。
おおけな <形動>[意]大きな。標準語と同じく連用形だけが使われる。「おおけん」「ううけん」に同じ。[例]おおけな、すいかじゃなあ(大きな西瓜だねえ)。
おおけなおおごと <句>[意]大きな大事。大変なこと。「おおけんおおごと」とも。[例]うらやまい、くゆら、おおけなおおごとど(裏山が崩れれば大変なことだぞ)。
おおけん <連体>大けん[意]大きな。「おおけな」に同じ。「ううけん」とも。[例]また、あんしが、おおけん、こつういいよる(またあの人が、大きなことを言っている)。
おおする <句>[意]増やす。多くする。<反>へす(減らす)、または、すくのうする(少なくする)
おおね <副>[意]@大体、大方。[例]おおね、そんぐれじゃわ(大体、そのぐらいだよ)。A元々、本来。[例]あんしゃあ、おおね、あげぇあんのじゃあ(あの人は、もともと、ああいう風なんだ)。
※緒方・みっこさ
おおのき <名>[意]仰向き。「あおのき」に同じ。
おおのく <動・四>[意]仰向く
※緒方・入道さん
おおのきさんぱち <句>[意]仰向けに転んだ様。[例]川じすべっちなあ、おおのきさんぱちぃ、ひっくりこけっしもうた(川で滑ってね、仰向けに転んでしまった)。
おおばらとり <名>[意]大食漢。「ううばらとり」に同じ。
おおぶる <動・五>大降る [意]大雨が降る。[例]あんまれ、おおぶると、こまんのじゃがのお(あまりたくさん雨が降ると困るんだけどなあ)。
〔未〕おおぶらん [意]大雨にならない。[例]おおぶらんじ、ふがよかった(大降りにならなくて運が良かった)。
〔用〕おおぶった [意]大雨が降った。[例]なんとまあ、おおぶったもんじゃ(なんとまあ、雨がたくさん降ったものだ)。
〔仮〕おおぶら [意]大雨が降れば。[例]おおぶら、たおこしがでけん(大雨が降れば田起こしができない)。
※清川・千枝さん
おかしい <形>[意]@はずかしい。人に笑われる。[例]そげんきさねえなりゅうしち、おかしいが(そんな汚い格好をして、恥ずかしいよ=笑われる。<参>古語「をかし」には「笑いたくなる」「滑稽である」の意有り。A変だ。妙だ。
〔用〕おかしゅう [意]おかしく。はずかしく。[例]おかしゅうなる(おかしくなる。はずかしくな)。おかしゅうじ、もてん(おかしくてたまらない)。
〔仮〕おかしから [意]おかしければ、恥ずかしければ。
おかしげねえ <副>[意]みっともない。
おかん <名>[意]湯加減。[例]おかんな、どげえな(湯加減はどうですか)。
おきせん <名>[意]愛人、妾、二号さん。
※『緒方町誌』
おきで <名>[意]遠くの田。平地の端の田。
※清川・康晴さん
おくる <動・中三>[意]起きる。命令形は「おきい」となるので、大分独特の変形下二段活用「中三段活用」である。
〔未〕おけん [意]起きない。[例]はよ、おけんと、まにあわんで(早く、起きないと間に合わないよ)。
〔未〕おきゅう [意]起きよう。[例]もうぼつぼつ、おきゅうえ(もうそろそろ、起きようよ)。
〔仮〕おくら [意]起きれば。
〔命〕おきい [意]起きろ。「おきよ」とも。
【邦訳日葡辞書】「オクル」起きる。
おくるる <動・中三>[意]遅れる。命令形は「おくりい」となるので、大分独特の変形下二段活用「中三段活用」である。
〔未〕おくれん [意]遅れない。
〔未〕おくりゅう [意]遅れよう。
〔仮〕おくるら [意]遅れれば。
〔命〕おくりい [意]遅れろ。
【邦訳日葡辞書】「オクルル」下になる、劣る、または、後になる。
おけたな <句>起けたな[意]目が覚めましたか。既に床を離れて洗面所にいても、それを見かけた家の年寄は、こう言って声をかける。この言葉自体に意味はなく、朝の挨拶「おはよう」の代りだと思えば良い。
おけんか <句>[意]起きないか。起きろ。[例]はよ、おけんか(早く起きろ)。
おこぜ <名>[意]毛むし。
おごめん <句>[意]ごめんください。「御免」に「お」がついた形。[例]おごめん、おるな(ごめんください、いますか)。
おこよう <名>御小用[意]小便。
おこらする <動・中三>[意]怒らせる。命令形は「おこらしい」となるので、大分独特の変形下二段活用「中三段活用」である。
〔未〕おこらせん [意]怒らせない。
〔未〕おこらしゅう [意]怒らせよう。
〔仮〕おこらすら [意]怒らせれば。
〔命〕おこらしい [意]怒らせろ。
おこる <動・五>[意]動物の雌が発情すること。
〔未〕おこらん [意]発情しない。
〔仮〕おこら [意]発情すれば。
※緒方・入道さん
おごる <動・五>[意]互いに手加減してふざける。[例]あげえ、おごりよるうちぃ、だんだんほんきぃなっち、しめえにゃどっちかい泣き出すんで(ああしてふざけあっているうちに、段々本気になって、最後にはどっちかが泣き出すんだよ)。
〔未〕おごらん [意]ふざけあわない。
〔仮〕おごら [意]ふざけあえば。
おさむうございます <句>[意]挨拶言葉、お寒いですね。
おさむる <動・中三>[意]収める、納める、修める、治める。命令形は「おさみい」で、大分独特の変形下二段活用の中三段活用である。
〔未〕おさめん [意]収めない。納めない。修めない。治めない。
〔未〕おさみゅう [意]収めよう。納めよう。修めよう。治めよう。
〔意〕おさむら [意]収めれば。納めれば。修めれば。治めれば
〔命〕おさみい [意]収めろ。納めろ。修めろ。治めろ。
【邦訳日葡辞書】「おさむる」治、修、斂、納。
おざわたし <名>御座渡し[意]本座から助座への座前の引継ぎ。 <参>座前、助座
おさゆる <動・中三>[意]抑える、押さえる。命令形は「おさいい」で、大分独特の変形下二段活用の中三段活用である。
〔未〕おさえん [意]抑えない。押さえない。
〔未〕おさゆう [意]抑えよう。押さえよう。
〔仮〕おさゆら [意]抑えれば。押さえれば。
〔命〕おさいい [意]抑えろ。押さえろ。
【邦訳日葡辞書】「オサユル」押さえる。
おしい <形>[意]遅い。[例]なんにしてん、おしいのお、さきぃ行こうや(ずいぶん遅いなあ、先に行こうよ)。
〔用〕おすう、おそう [意]遅く。「おすなる」「おそなる」とも。[例]もうでらな、つくのい、おすうなるがえ(もう出ないと、着くのが遅くなるよ)。
〔仮〕おすから、おそから [意]遅ければ。
おじい <形>[古]怖じい[意]恐ろしい。標準語には「物怖じする」という単語に残っている。[例]こん雪んひに、単車じいくやら、そげんおじいこた、すんな(この雪の日に単車で出かけるなど、そんな恐ろしいことは、するな)。
〔用〕おずう [意]恐ろしく。怖く。
〔仮〕おずから、おじから [意]恐ろしければ。怖ければ。
おしかくる <動・中三>[意]押し掛ける。命令形は「おしかきい」となるので、大分独特の変形下二段活用「中三段活用」である。
〔未〕おしかけん [意]押し掛けない。
〔未〕おしかきゅう [意]押し掛けよう・
〔仮〕おしかくら [意]押し掛ければ。
〔命〕おしかきい [意]押し掛けろ。
おじがり <名>怖じがり[意]怖がり。「おずがり」に同じ。[例]あんこは、おじがりじゃのう(あの子は怖がりだねえ)。
おじがる <動・五>怖じがる[意]怖がる。「おずがる」に同じ。[例]おじがらんでん、いいに(怖がらなくてもいいのに)。
おしちがさ <名>[意]農作業で使われる日よけの菅笠。
おしつくる <動・中三>[意]押し付ける。命令形は「おしつきい」で、大分独特の変形下二段活用の中三段活用である。
〔未〕おしつけん [意]押し付けない。
〔未〕おしつきゅう [意]押し付けよう。
〔仮〕おしつくら [意]押し付ければ。
〔命〕おしつきい [意]押し付けろ。
【邦訳日葡辞書】「オシツクル」押し付ける。
おしと <名>[意]お手玉。
※緒方・みっこさ
おしなぎい <形>[意]もったいない。[例]ラーメン、残すんか、おしなぎい(ラーメン、残すのか、もったいない)。
〔用〕おしなぎゅう [意]もったいなく。[例]おしなぎゅうねえかえ(もったいなくないか)。
〔仮〕おしなぎから [意]もったいなければ。[例]おしなぎから、つかわないい(もったいなければ、使わなければいい)
おしゆる <動・中三>[意]教える。「おそゆる」に同じ。命令形は「おしいい」となるので、大分独特の変形下二段活用「中三段活用」である。
〔未〕おしえん [意]教えない。
〔未〕おしゆう [意]教えよう。
〔仮〕おしゆら [意]教えれば。
〔命〕おしいい [意]教えろ。
おしょりばな <名>[意]ヒガンバナ科の多年草、彼岸花。
おしょる <動・五>[意]折る。[例]さくらんえだぁ、おしょりよんな、誰か(桜の枝を、折っているのは誰だ)。
〔未〕おしょらん [意]折らない。[例]やええき、、おしょらんごとしよえ(柔らかいから折らないようにしてね)。
〔仮〕おしょら [意]折れば。[例]えだごと、おしょら、いいんで(枝ごと折れば良いんだよ)。
おしょるる <動・中三>[意]折れる。「おるる」に同じ。命令形は「おしょりい」となるので、大分独特の下二段活用の変形「中三段活用」である。[例]あしんほねぃ、おしょれた(脚の骨が折れた)。
〔未〕おしょれん [意]折れない。[例]かんたんにゃ、おしょれんで(簡単には折れないよ)。
〔未〕おしょりゅう [意]折れよう。[例]かんたんに、おしょりゅうごたるになあ(簡単におれるようなのにねえ)。
〔仮〕おしょるら [意]折れれば。[例]おしょるら、もっちきなあ(折れたら持っておいで)。
〔意〕おしょりい [意]折れろ。[例]はよ、おしょりい(早く折れろ)。
おずがり <名>[意]怖がり。「おじがり」に同じ。
おずがる <動・五>[意]怖がる。「おじがる」に同じ。
〔未〕おずがらん [意]怖がらない。[例]おずがらんでん、いいに(怖がらなくてもいいのに)
〔仮〕おずがら [意]怖がれば。[例]おずがら、わらわるるが(怖がれば笑われるよ)。
おせったい <名>お接待[意]弘法大師の命日である3月21日と8月21日に、隣保班内で当番の家に集まり、班内の子供に菓子や饅頭などを振舞う。子供たちは、弘法大師さんのお蔭で菓子が貰えるなどとは夢にも思っていなかったが、貰えること自体は大歓迎だった。元は毎月の月命日に行っていたらしい。
※緒方出身・hataさん
おぜる <動・五>[意]おびえる、びくびくする、びびる。[例]おまや、なん、おぜちょんのか(お前は、なにを怯えているんだ)。
おそゆる <動・中三>[意]教える。「おしゆる」に同じ。命令形は「おそいい」となるので、大分独特の下二段活用の変形「中三段活用」である。[例]なし、そげえなんのか、おそえちくれなあ(どうして、そうなるのか、教えてください)。
〔未〕おそえん [意]教えない。[例]そげえ、きやすう、おそえんで(そんなに気安くは教えないよ)。
〔未〕おそゆう [意]教えよう。[例]おれい、おそゆう(おれが教えよう)。
〔仮〕おそゆら [意]教えれば。[例]いっぺん、おそゆら、よかろう(一度教えれば良いだろう)。
〔命〕おそいい [意]教えろ。[例]おまえい、おそいい(お前が教えろ)。
おたんちん <名>[意]あんぽんたん。
おちゃおけ <名>[意]お茶請け。
おちゃをたぶる <句>[意]お茶を飲む。[例]まあ、おちゃをたべち、いっちょくれ(まあ、お茶を飲んで行ってください)。
おっさ <名>[意]おじさん。
おっとりばし <名>[意]急いで食事をすること。
※『岡藩のひらくち』
おっぽ <名>[意]懐。幼児語。 <参>おっぽないない
おっぽないない <連語>[意]もらったもの、大切なものを懐に入れること。幼児語。
おつる <動・中三>[意]上から下に落ちる。試験に不合格となる。標準語では上一段活用だが奥豊後では下二段活用の変形である「中三段活用」である。命令形は「おちろ」ではなく「おちい」となる。[例]はじゅう歩きよると、おつるど(端を歩いていると落ちるよ)。
〔未〕おてん [意]落ちない。[例]おてんごと、しなあえ(落ちないようにしなさいね)。
〔未〕おちゅう [意]落ちよう。[例]どうせ、おちゅうで(どうせ、おちるだろうよ)。
〔体〕おてた [意]落ちた。[例]試験、おてた(試験、落ちた)。
〔仮〕おつら [意]落ちれば。[例]おつら、しよいねえわ(落ちたらしようがないよ)。
〔命〕おちい、おてよ [意]落ちろ。「おてぃ」とも。
【邦訳日葡辞書】「オツル」高い所から落ちる。
おてこむ <動・五>[意]落ちる、はまり込む。[例]車ぃ田に、おてこんだ(車が田んぼに、はまりこんだ)。
〔未〕おてこまん [意]はまりこまない。[例]おてこまんようにな(はまり込まないようにね)。
〔用〕おてくうだ [意]はまり込んだ。[例]おてくうだんか(はまり込んだのか)。
〔仮〕おてこま [意]はまりこめば。[例]おてこま、おおごとど(はまりこんだら大変だぞ)。
おとご <名>[古]乙子・弟子[意]末っ子。「裾子(すそご)」に同じ。古語辞典には「末の子。男女ともに用いる」とある。
【邦訳日葡辞書】「オトゴ」末子。
おとこし <名>[意]男性。<反>おなごし
おとし <名>[意]厩の一部。牛馬の糞や敷き藁を一時的に寄せ集めておく場所。一段低くなっている。「こんや」「こまや」に同じ。「おとしこんや」とも言う。
※緒方出身・やすみさん
おとしこんや <名>[意]厩の一部で牛馬の糞と敷き藁を一時的に保管する場所。一段低くなっていた。「おとし」「こんや」「こまや」におなじ。
※清川・康晴さん
おとしだんご <名>[意]だんご汁の簡易版。だんご汁は小麦粉をこねて団子にしたものを伸ばして煮るが、おとしだんごは、こねずに水で溶いたものを煮る。手っ取り早く作れるという利点があった。
おとす <動・五>[意]落とす。標準語とは活用が一部異なる。
〔未〕おとさん [意]落とさない。[例]おとさんごと、するんで(落とさないようにするんだよ)。
〔用〕おてぃいた [意]落とした。[例]どきぃ、おてぃいたんじゃろうか(どこに落としたんだろうか)。
〔仮〕おとさ [意]落とせば。[例]そっかり、おとさ、いいで(そこから落とせばいいよ)。
おとっこ <名>[意]男の子。<反>おなんこ
おとろし <形>[意]恐ろしい。なんとまあ。実際に「怖い」時にではなく、驚いた際の感嘆詞として使われることが多い。「おっとろし」に同じ。[例]なんえ、やまぃくえたちえ、おとろし(何だって、山崩れが起きたって、なんとまあ)。
※緒方・みっこさ
おっとろし <形>[意]恐ろしい。驚いた。「おとろし」に同じで、驚いた時の感嘆詞として使われることが多い。
※緒方・みっこさ
おとより <名>おと寄り[意]集落で年末に行う寄り合い。「末寄り」「げぎょう」とも。
おなごし <名>[意]女性。<反>おとこし
おなんこ <名>[意]女の子。<反対>おとっこ
おにみそ <名>[意]内弁慶。
※緒方・入道さん
おにぶえ <名>[意]ヒシ科一年生水草、菱の実に穴を開けて作る笛。
※緒方・みっこさ
おねさん <名>[意]年長の女性を呼ぶ際に、主に女性が使う敬語。
おはちぶくろ <名>お鉢袋[意]葬儀や会合に持ち寄る米を入れるための袋。
※『緒方町誌』
おばね <名>[意]尾根。
※緒方・入道さん
おびてえ <形>[意]帯の締めかたがだらしないこと。
※『緒方町誌』
おひどございます <句>[意]農作業など仕事中の人にかける挨拶。「ご苦労さまです」「精が出ますね」といったほどの意味を持つ。[例]こかぁ、もう、田植えぃすみかけよる、おひどございまあす(ここは、もう田植えが終わりかけているよ、ご苦労さまでえす)。
※竹田出身・三尾さん
おひまち <名>お日待ち[意]豊作を祈る、または天照大神をまつるために行われる年一回の行事。時期は地区によって異なり、概ね10月から2月の間。
※『緒方町誌』
おぶる <動・五>[意]負ぶう。[例]あかごぃ寝たき、うちがおぶるわ(赤ちゃんが眠ったから、私が負ぶうよ)。
〔未〕おぶらん [意]負ぶわない。
〔用〕おぶうた [意]負ぶった。ウ音便の形となる。[例]しょいねえき、おぶうたんじゃ(仕方がないから負ぶったんだ)。
〔仮〕おぶら [意]負ぶえば。[例]おぶら、いいんじゃろ(負ぶえばいいんだろ)。
〔命〕おぶれ [意]負ぶえ。[例]こるぅ、おぶれ(これを負ぶえ)。
※緒方・みっこさ
おへま <名>[意]「吉四六ばなし」の主人公、吉四六さんの妻の名前。なぜか「豊後浄瑠璃」の主人公、渡邊綱の妻も同名。大分県人は、この名に何か特別な思い入れでもあるのだろうか。
おぼえん <句>[意]動詞「おぼゆる」の未然形だが、記憶が曖昧な状態をいうほか、とぼける際にも使う。[例]三軒目あたりかり、まったくおぼえんのじゃがな(三軒目ぐらいから、まったく記憶がないんだけどね)。そげんこつぅ、いうたかのお、おぼえんのじゃがのお(そんなことを言ったかねえ、覚えがないんだがねえ)。
おぼゆる <動・中三>[意]覚える。標準語では下一段活用だが、大分では下二段活用となる。ただし、命令形が「おぼいい」となるので、正確に言うと中三段活用である。
〔未〕おぼえん [意]覚えない。[例]なんも、おぼえん(何も記憶にない)。
〔未〕おぼゆう [意]覚えよう。[例]おぼゆうえ(覚えようよ)。
〔仮〕おぼゆら [意]覚えれば。[例]おぼゆら、いいんじゃ(覚えればいいんだ)。
〔意〕おぼいい [意]覚えろ。[例]ぜったい、おぼいいや(必ず覚えろよ)。
【邦訳日葡辞書】「オボユル」覚える。
おぼるる <動・中三>[意]水に溺れる。命令形は「おぼりい」で、大分独特の変形下二段活用の中三段活用である。
〔未〕おぼれん [意]溺れない。
〔未〕おぼりゅう [意]溺れよう。
〔仮〕おぼるら [意]溺れれば。
〔命〕おぼりい [意]溺れろ。
【邦訳日葡辞書】「オボルル」溺れる。
おみい <形>[意]重い。「おもてえ」に同じ。
〔用〕おもうなる [意]重くなる。[例]なんか、おもうなった(何だか重くなった)。
〔仮〕おもから [意]重ければ。[例]おもから、してえ、おきなあ(重かったら下に置きなさい)。
おみいご <名>思い子[意]亡くなった親が死の間際まで気にかけていた子供。
※岡藩のひらくち
【邦訳日葡辞書】「ヲモイゴ」愛されている子ども、または、いとしく、かわいい子ども。
おもう <動・五>[意]思う。標準語とは活用形が一部異なる。
〔未〕おもわん [意]思わない。
〔用〕おもうた [意]思った。ウ音便となる。[意]そげえ、おもうたんじゃ(そう思ったんだ)。
〔仮〕おもわ、おもや [意]思えば。[例]そげえ、おもわ、そげえ、しなあ(そう思えば、そうしなさい)。
おもてえ <形>[意]重たい。「おみい」に同じ。
〔用〕おもとうなる、おもとなる [意]重たく。[例]おもとうなった(重たくなった)。
〔仮〕おもたから [意]重たければ。[例]おもたから、無理すんなや(重たければ無理をするなよ)。
おもわする <動・中三>[意]思わせる。命令形は「おもわしい」となるので、大分独特の変形下二段活用「中三段活用」である。
おらぶ <動・五>[古]哭(おら)ぶ[意]大声を上げる、叫ぶ。[例]おらぶと、となりい、きこゆるで(大声を上げると隣に聞こえるよ)。
〔未〕おらばん [意]叫ばない。[例]おらばんでん、きこゆるが(大声を出さなくても聞こえるよ)。
〔用〕おろうだ [意]叫んだ。ウ音便の形となる。[例]おろうだんじゃが、へんじゃあ、なかった(大声を出したが、返事がなかった)。
〔仮〕おらば [意]叫べば。[例]そっかり、おらば、いい(そこから大声を出せば良い)。
<参>…天仰ぎ 叫びおらび 地を踏み…(天を仰ぎ、叫びわめいて、地をけり〜、萬葉集1809)。
おらびつぎ <連語>哭(おら)び継ぎ[意]大声での伝言。
※『岡藩のひらくち』
おりあいがわりい <句>[意]仲が悪い。[例]あんたぁ、あんしたぁ、おりあいがわりいちゅうたなあ(あなた、あの人とは仲が悪いんだってねえ)。
おりあう <動・五>[意]悪くしていた体の具合が、もち直すこと。一時的な小康状態。[例]もちっとぉすら おりあうじゃろ(もう少ししたら持ち直すだろうよ)。
〔用〕おりおうた [意]持ち直した。[例]ちったぁおりおうたな(少しはよくなりましたか)。
〔仮〕おりあわ、おりあや [意]持ち直せば。[例]なんとか、おりあわ、いいがなあ(なんとか持ち直せば良いねえ)。
おりょ <感>[意]驚いたり意表を突かれたりした時に口をついて出る言葉。「おろ」に同じ。あれ。おや。[例]おりょ、戸があいちょん(おや、戸が開いている)。
おりょりょ <感>[意]あれれ。「おりょ」を少し強めた表現。[例]おりょりょ、おるんな(あれれ、いるんですか)。
おる <動・五>[意]居る。[例]あんしゃ、どきい、おるんじゃろうか(あの人はどこにいるんだろうか)。
〔未〕おらん [意]いない。[例]どこにも、おらんで(どこにもいないよ)。
〔未〕おろう [意]いるだろう。[意]こき、、おろうえ(ここに、いようよ)。
〔用〕おった [意]いた。[例]そき、おったんな(そこにいたの)。
〔仮〕おら、おりゃ [意]いれば。[例]いつまじでん、そき、おら、いいわ(いつまでも、そこにいればいい)
〔命〕おれ、おりよ [意]いろ、いなさい。[例]そき、おれや(そこに、いろよ)。こき、おりよえ(ここに、いなさいね)。
おる <動・五>[意]鮮度などが保てることを言う。腐らない。[例]里芋やら玉ねぎやらは、日陰ん、すいしいとこりぃ置いちょきゃ、しばらくおるきな(里芋や玉ねぎなどは、日陰の涼しい所に置いておけば、しばらくは鮮度が保てるからね)。
※清川・千枝さん
おるる <動・中三>[意]折れる。標準語では下一段活用だが、大分では下二段活用になる。ただし、命令形が「おりい」となるので、正確に言うと中三段活用である。「おしょるる」に同じ。[例]ふたりものらあ、えだいおるるが(二人も乗れば、枝が折れるよ)。
〔未〕おれん [意]折れない。
〔未〕おりゅう [意]折れよう。[例]ほしいき、じき、おりゅうで(細いから、すぐに折れるだろうね)。
〔仮〕おるら [意]折れれば。[例]ほねい、おるら、こまるがなあ(骨が折れたら困るんだけどねえ)。
〔命〕おりい [意]折れろ。
【邦訳日葡辞書】「オルル」木や竹やその他細長い物が折れる。
おるる <動・中三>[意]降りる。標準語では上一段活用だが、大分では下二段活用となる。ただし、命令形が「おりい」となるので、正確に言うと中三段活用である。
〔未〕おれん [意]下りない。降りない。
〔未〕おりゅう [意]下りよう、降りよう。
〔用〕おれた [意]下りた。降りた。
〔仮〕おるら [意]下りれば。降りれば。
〔命〕おりい、おれよ [意]下りろ。降りろ。[例]はよ、おりい(早く降りろ)。もう、おれよ(もう、降りなさいね)。
【邦訳日葡辞書】「ヲルル」高い所からおりる。
おろ <副>[意]少し不足している状態、不十分である状態をさす。[例]豆を煮よるんじゃが、味がまだおろじゃなあ(豆を煮ているのだが、まだ味が不十分だなあ)。<参>おろいい
※清川・康晴さん
【解説】『地方別 方言語源辞典』(真田信治、友定賢治編 東京堂出版)には、「おろ」について、「少し、十分でない、の意味を表す接頭辞」で、中部、四国、九州で使用されているとある。「疎(おろそ)か」「愚(おろ)か」などの「おろ」と同じ語源で、『今昔物語』に「おろ癒ゆる」(少し癒える)の使用例があるという。大分では「おろ」単独で副詞として使われるほか、接頭辞として「おろいい」(おんぼろ。粗悪品。下品)として使用される。
【邦訳日葡辞書】「オロ」悪い、または不完全に。
おろ <感>[意]意表を突かれたり驚いたりした時に口をついてでる言葉。「あれ」。「おや」。「おりょ」「おりょりょ」に同じ。
※竹田・水瀬さん
おろいい <形>[意]「おろ」は「少し」の意で、直訳すれば「少し良い」となるはずだが、実際は悪い意味合いとなる。@品質が悪い。[例]こん品物は、おろいいなぁ(この品物は、品質が悪いなぁ)。A経年劣化して品質が悪くなった状態。[例]靴がおろいなったき、こうちくれなあ(靴が古くなって傷んできたから、買ってよ)。B下等な、下品な。[例]あいたぁ、おろいいやっちゃ(あいつは、下品なやつだ、くずだ)。
〔用〕おろゆうなる、おろいなる [意]品質が悪くなる。[例]おろゆうなるのい、はええなあ(品質が悪くなるのが早いねえ)。
〔仮〕おろゆから、おろいから [意]品質が悪ければ。[例]おろいから、かえちもらわな(品質がわるかったら交換してもらわなければ)。
おんごろ <名>[意]雄鶏。<反>めんごろ
おんじょくれ <句>[意]おぶってください。[例]さかがきちいき、おんじょくれ(坂がきついから、おぶってください)。
おんどろ <名>[意]池や沼、水田などに発生する藻。アオミドロ。
※緒方・入道さん
おんばな <名>[意]オオバコ科の多年草、大葉子。