おとしだんご
 だんご汁の簡易版。だんご汁は小麦粉をこねて団子にしたものを伸ばして煮るが、おとしだんごは、こねずに水で溶いたものを煮る。手っ取り早く作れるという利点があった。

かぼす
 ミカン科の常緑低木、柚子(ゆず)の一種。広辞苑には「果実は酸が強く独特の風味がある。果皮は緑色で熟すと黄色になる。大分県特産」とある。果汁を絞って味噌汁、湯豆腐、焼き魚などにかけて食す。鍋物を食べるポン酢の代わりに、カボスの果汁と醤油、砂糖を使った「ごさんぴん」を使うとひときわおいしい。果汁を絞る際には果実を半分に切って皮の方を下に向けて絞るのが正しい方法。こうすると、皮から出る汁も混じって、さらに風味が良くなる。
 風邪を引くと、母親がカボスの果汁を搾ってお湯で割り、砂糖を入れたものを作ってくれた。これを飲んで寝ると汗をよくかき、大概の風邪は治った。うちの母親はこれを「ポンズ」と呼んでいた。


ごさんぴん
 御三品? 200CCのコップに砂糖を大さじで軽く一ぱい、酢と醤油を半分ずつ入れて良く混ぜる。生野菜や鳥天など揚げ物にかけて食べると美味。酢の代わりにカボスを使うとカボスならではの風味がしてさらにおいしくなる。

じりやき
 
じり焼き。「じりい」は「ぬかるんでいる。どろどろしている」の意味。小麦粉を使ったおやつ。小麦粉に塩を少々入れて水で溶き、油を引いたフライパンで表裏をこんがり焼く。厚みは5ミリぐらいが良い。卵を使えばさらに豊かな味になる。油もバターにするとまた一味違って美味。また、黒砂糖や干しぶどうを混ぜるなど、各家によって様々な作り方があったらしい。

だんごじる(だごじる)
 団子汁。大分県の代表的郷土料理。小麦粉をこねて作った団子を細く薄く伸ばしたものを入れた味噌味の汁。具には里芋、椎茸など何でも可。江戸時代、貧しい小作農家では米は大半が小作料代わりにとられてしまうが、裏作の小麦は自家用に出来たため、団子汁が頻繁に食べられたという。
 
『大分県の歴史と文化』(毎日新聞社)によると、団子汁が文献に登場するのは室町時代から。一説には、大友宗麟が好物だった鮑(あわび)が不漁だったために、鮑の腸の代用品として小麦粉で作って出したところ、宗麟が大いに気に入ったといいい、鮑の腸から「鮑腸汁」(ほうちょうじる)と呼ばれるようになったと、三浦梅園の『豊後跡考』にあるという。


とりてん
 
鳥天。鳥のささ身などを使ったてんぷら。空揚げと違い、骨付き肉ではない。肉をあらかじめニンニク醤油に漬けておくと、よりおいしい。当然のことながら、カボスを使った「ごさんぴん」をかけて食べるのが美味。筆者にとっては「丸福」の味が青春の味である。
 意外なことだが、大分以外では食べられる店が滅多にない。


ぽっこん
 ポン菓子。秋の刈り入れが終わったころ、荷台にポン菓子を作る機械を積んだ軽トラックがどこからかやって来る。子供は両手に乗るほどの古米を親にもらって持って行って作ってもらった。値段はどれほどだったろうか。湿気りやすかったが、出来たてのサクサクとした食感が懐かしい。
 筆者は長く「ぽっこん」=ポップコーンだと思い込んでいたが、当然違う。加工する際の破裂音から言い慣わされたものだろう。


やせうま
 
小麦粉を水でこねたものを手で薄く延ばしながらちぎり、それを煮て、黄な粉にまぶしたもの。おやつにされた。

やっこめ
 
焼き米。餅米を炒って作る。炒る前に蒸す方法もあるが、より本格的な作り方は脱穀した餅米を蒸さずに大鍋で炒る。蒸さない分、万遍なく火を通すのに熟練の技を要する。湯呑みに焼き米を入れた上から熱いお茶を注ぎ、塩を適量入れるのが一般的な食べ方。実に香ばしい。

りゅうきゅう
 
大分県の郷土料理。マグロやブリ、サバ、アジなどの刺身を醤油、酒、味醂に砂糖を加えたものに漬け込み、刻んだネギなどを乗せたもの。生臭みが消え、酒の肴として好まれる。また、そのままご飯に乗せて食しても美味。これを県南の沿岸部では「温飯(あつめし)」と言う。お茶漬けも良し。
 標準語の「漬()け」と同じ。福岡ではよく似た料理に「ごまさば」がある。