よる  ちょる

 「行きよる」と「行っちょる」。この二つは、大分弁では明らかに意味が異なる。大分県人なら「なにを分かりきったことを」と思われるだろう。ところが、意外なことに、標準語でこのふたつを正確に訳し分けることは難しい。逆に言えば、標準語にはない表現方法が大分弁にはあるということで、充分に誇りにして良いと思う。

[例文1]
 A:おいてぇ、行きよる
 B:おいてぇ、行っちょる
 安易に訳そうとすると、どちらも「大分に行っている」になってしまう。しかし、それではどちらも正確に意味が伝わらない。
 Aは「大分に向かっている」という進行形としての意味合いと、場合によっては「大分に通っている」という習慣としての行動を表現することもある。その違いは、会話や文章の前後の脈絡から判断される。
 これに対してBは「大分に行っていて、今現在ここにはいない」という意味合いになる。過去形ではなく完了形である。

[例文2]
 A:田を起こしよる
 B:田を起こしちょる

 
Aが「今現在、田起こしの最中」という意味である場合と、例えば「毎年、俺が田を起こしよる」のように、習慣を表す場合がある。これに対して、Bは「田起こしの作業は既に終わっている」という意味になる。

[例文3]
 A:ここじ、寝よる
 B:ここじ、寝ちょる
 
Aでは「今、ここで寝ようとしている」という場合と「毎日、この場所で寝ている」という習慣を表す場合がある。Bは「もうすでに、この場所で寝ている」という意味となる。

[例文4]
 A:雨い降りよる
 B:雨い降っちょる

 Aは「今まさに雨が降っている」という進行形を表す。これに対してBは「雨が降ったのだろう、地面が濡れている」という完了形を表すが、さて、標準語ではこれをどう表現するのか。「雨が降ったみたいだ」「雨が降った形跡がある」とでも言うのが近いように思うのだが、、、、

                                                        (2005年03月20日)