2007年春 拍手SS










     「ときメモGS2nd Kiss」 志波勝巳





球場へと続く小道には桜が咲いていた。
志波君が眩しそうに空を見上げている横顔。



大好き。



心の中で思ったのに、まるで聞こえたかのように志波君が視線を落としてきた。
まさか言葉にしていたのかと赤面する私をよそに、フッと志波君が表情を柔らかくする。



「花びらが頭についてる」



焦って掃おうとしたら、志波君の手が伸びてきて優しく髪を撫でられた。



好きだ、と小さな囁きも一緒に。















     「テニスの王子様」 忍足侑士





好きや。愛してる。
寝ても覚めても、お前のことばっかり。


花より綺麗。
花より可愛い。


とにかくお前が大好きや。



ハイハイと冷たく聞き流しながら心が揺れる。



囁く愛が無くなったなら、私の心は死んでしまう。
囁く愛が偽りになったなら、私の心は凍えてしまう。



なぁ、俺の言葉はお前に届いてるか?
そう言って抱きしめてくれる腕の強さに、やっと私は安心するのよ。
















     「遥かなる時空の中で」 橘友雅





自分は恋のできない男だと信じて疑わなかった日が懐かしい。
この歳になって恋煩いとは・・・情けないようでいて何とも心躍るものだと思う。



「神子殿は今ごろ何を想っていらっしゃることか・・・」



永遠など信じてはいない。
時の流れと共に熱を失っていく心は誰にも止められない。
分かっていて信じてみたくなるのは何故だろう。


変わらない心を・・・君なら。



柔らかな風が吹き、優しい色をした桜の花びらが杯に落ちる。
それは愛しい人が私の名を呼ぶ時の頬の色。


唐突に会いたくなり杯を置いた。


これは重症だ。
我ながら呆れつつ、遅い初恋に身を焦がす。















     「テニスの王子様」 観月はじめ





あなた、そんな暇がよくありましたね。
たいして料理が上手いわけでもないのに、こんなに沢山。
ホラ、卵が焦げてるじゃないですか。火が強いんですよ。


さっきから続く小言に泣きたくなってきた。
観月クンに喜んで欲しくて作ったお弁当だけど、
一人にだけじゃ悪いかとレギュラー全員で食べられるよう沢山作ったのに。



「ウマイだーね。」



観月クン以外のメンバーは口々に褒めてくれるのに肝心の人が不機嫌なまま。
居た堪れない気持ちで唇を噛めば、横から赤澤君が溜息混じりに呟いた。



「お前、そんな重箱の隅をつつくようなことを言ってたら嫌われるぞ?」



観月クンはチラリと赤澤君を見てから、焦げた玉子焼きを口に放り込んでハッキリと言った。



「悪かったですね。僕は重箱の隅をつつきたくなるぐらい彼女を愛してるんですよ。」



なぁんだ、ヤキモチかよ。
全員が納得して箸を置く、そんな悲しいやら嬉しいやらの春の午後。















     「ときメモGS」 姫条まどか





俺が女のコに優しいのは前からで知ってるやろ?
あのコとは偶然にゲーセンで会うて、頼まれてクレーンゲームをしてやっただけ。


なぁ、なんで深く訊いてこんの?
もう呆れて訊く気にもならんとか?
そうやって笑顔で流されたら、俺って愛されてないんかなって疑ってしまう。



「馬鹿ね。まどかへの愛なら吐いて捨てるほど沢山あるわ。」



吐いて捨てる?
その時、俺は初めて恋人の怒りを知った。



「な、週末にお花見に行こうか?」
「行かない。」


「お弁当は俺が作る。それでも?」
「・・・玉子焼き入ってる?」


「もちろん。ウィンナーはタコちゃんにしような?せやから機嫌直して?」



膨れた頬に一つキス。


ゴメンな。
もう二度とお前の気持ちを試すようなことは致しません!




















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