2007年Christmas拍手SS










     「金色のコルダ」 月森蓮





留学先の海外で過ごす初めてのクリスマス。
行き交う幸せそうな恋人たちを横目にアパートメントへ帰るだけの俺。
空には星が瞬き、月の光りが石畳の道を照らす。


君も空を見上げるだろうか。
時差はあっても、俺が見ている月を君も見てるはず。
そう思えば、少しは寂しさも紛れた。


日本語など誰も分かりはしない。
だから君の名前を呟いた。


愛している。君に・・・会いたい。


カンカンと靴音を響かせ、アパートメントの階段をあがる。
ポケットの中のカギを探り、角を曲がって足が止まった。



「蓮クン、メリークリスマス!」



いるはずのない君の笑顔が此処にある。
ああ。最高のクリスマスプレゼントを貰ったよ。















     「テニスの王子様」 木手永四郎





窓の外は吹雪。
山の天気は変わりやすいというが、その通りだとメガネを押し上げる。



「永四郎、手伝って。」



彼女はワインを抱え、カナッぺの皿やグラスで手一杯にして俺を呼ぶ。
沖縄育ちの俺に本物の雪を見せたいと全ての手配をひとりでしてくれた。



「どこに?」


「暖炉の前がいいかな。それも珍しいでしょう?」
「確かに。ドラマぐらいでしか見たことなかったですね。」



その言葉に嬉しそうな笑顔を浮かべた君を美しいと思う。
君は色々なものを俺に教えてくれる。


見たことなかったもの、感じたことのなかったもの。
美しさも、愛しさも、切ないほど誰かを想う気持ちも、全て君が教えてくれた。


音をたてて薪が燃え、その度に炎が躍る。
舞い上がる火の粉を見つめる君に手を伸ばす。


せっかくのクリスマスですよ。
思いきり甘く夜を過ごしましょう。
それが君に贈る俺からのプレゼント。


まずは、キスから。















     「テニスの王子様」 観月はじめ





「クリスマスも仕事なんです。」



そう言えば、君は何でもないように「わかった」と答える。
理解のある恋人で羨ましいと同僚たちは溜息をつくけれど、
僕は別の意味で溜息をついてしまう。


僕の苛立ちなど君は知らない。
だから僕はムキになって、わざと大切な日を空けなかったんです。


君にとって僕は何でしょう。
ひょっとしたら恋人として認識されていないんじゃないかとさえ思ってしまう。


付き合いませんかと口にしたのは僕だ。
君は戸惑いながらも確かに頷いたけれど、僕を好きだと口にしたことはない。
どんなに抱いても、そこに心があるのかと疑う恋は遣る瀬無い。


重い足取りで腕時計を確認すれば、イブの夜は終わり25日になっていた。


明日も朝から出社する。
このぶんでは、今年はクリスマスケーキを食べることなく終わりそうだ。


癖になった溜息と共にマンションの鍵をまわして扉を開く。
そこには明らかに僕より小さな靴が行儀よく並んでいた。


慌てて駆け込んだリビングで居眠りする愛しい人を見つけた。
テーブルの上には二人じゃ食べきれないだろう大きなクリスマスケーキ。



「やられました。」



僕の囁きは眠った君の頬に落ちていく。















     「ときメモGS」 葉月珪





「好き。大好き。珪クンが誰より好き。」



臆面もなく真っ直ぐに告げられる言葉。
聞かされる俺の方が恥ずかしくなって、つい聞き流すふうを装ってしまう。
その度にお前は少し頬を膨らませるけど、直ぐに笑顔を取り戻して再び言うんだ。



「いいの。私が珪クンを大好きなんだもの。ホント、大好き。」



クリスマスの夜を二人で過ごした。
俺がキッチンでコーヒーを淹れている間に、はしゃぎ疲れた恋人は眠ってしまったようだ。
夜はこれからなのにと少し残念に思いながら、小さな体を抱いて寝室に運んだ。


もう何年、こんな俺の傍にいるだろう。
飽きもせず『好きだ』と言い続けてくれるお前を心から愛しいと思っている。


ベッドに丸まり、甘えるように俺のシャツを掴む手に自分の手を重ねた。


起きてる時には言えない言葉と甘い口づけを
この聖なる夜に贈ろう。



「ずっと・・・愛してる。」















     「遥かなる時空の中で3」源九郎義経





「無理だ。無理。何度言えば、分かるんだ?」
「九郎さんの石頭!そんなんじゃモテないよ?」



お前にモテていれば十分だ。
心の中で思ったが、口にすれば「自惚れるな」と言い返されそうなので止めた。


あまりの言い様に気持ちを疑ってしまうこともあるが、それはそれ。
全てを捨てて俺の傍に残ってくれたことが、疑いようのない愛情だと思っている。



「異文化に触れ、理解を深めることも大事ですよ?」
「それは大事だとも思うが、だからと言って贈り物の交換を強制されるのは納得がいかない。」


「強制じゃなくて、気持ちですよ。気持ち。」
「気持ちならあるぞ。俺は・・・その・・お前を好いている。」


「それを形にするんですって。」



赤面しながら口にした気持ちは呆気なく流されてしまった。
半ば自棄になって「だったら何が欲しいんだ?」と訊いても、教えてはもらえない。
自分で相手の欲しそうなものを考えろと無茶を言う。



「とにかくクリスマスまでに用意して下さいね。」



訊いたこともない異国の言葉を持ち出され途方に暮れた。


さて、お前の欲しいものとは何だろう。
考えても考えても分からない。


ならば、俺の欲しいものは何だろう。
頭に浮かんだのは愛しい人の姿だけ。


結局は悩みに悩んだ末、長い髪に似合いそうな櫛を買った。
喜んで貰えれば良いのだが・・そう思って、胸に広がる穏やかな温かさに目を閉じた。


































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