ダイスキ。
『俺ってキスが大好きみたい。』
ね、跡部は?
そう訊ねたら、隣でカフェラテ飲んでた跡部が突然にむせていた。
忍足が『しっかりしぃや』と跡部の背中を叩いてるのにも訊いてみる。
ね、忍足は?
二人は顔を見合わせ目と目で会話。
はぁ・・と大きな溜息をついた跡部が追い払うように手を振った。
「もういいから、行けよ。
好きなだけキスでも何でもしてくるんだな。」
「そんな、あられもない言い方あるか?」
呆れた忍足の声を聞きながら、俺はマッハで机の上の物を片付け始めた。
とりあえず突っ込んだみたいなカバンを胸に抱え、満面の笑みでバイバイして部室を出ようとする。
そこで亮ちゃんとチョタが参考書片手に入ってきたのにぶつかった。
「お、なんだ。ジローはもう課題が済んだのか?」
「ううん、でも行っていいって跡部が言ったからさ。」
「急ぎの用事かよ?」
「そう!キスしに行くんだ。じゃあねぇ〜、お先!」
「へっ?」
呆ける亮ちゃんの脇を抜け、俺は外に飛び出した。
やったぁ!
滅多にない部活の休みに参考書と睨めっこなんて勿体無さすぎる。
どうせ睨めっこするなら可愛いカノジョが一番に決まってるもんね!
制服のポケットから重い位ぶら下がったストラップの束を引っ張る。
ズルズルと出てきた真っ赤の携帯を開き、いつもの番号を呼び出すと携帯を耳にあてて走り出す。
いざ!のもとへ♪
整わない息のままピンポンを三回連打。
奥から近づく気配がした後、ゆっくりと開いたドアから顔を覗かせたのは俺のカノジョだ。
「やっ!」
「ジロちゃん、課題はすんだの?」
開口一番ニコリともせず、それはないだろう?
笑って誤魔化しながら、昼間は誰もいないのを知っているから遠慮もなく靴を脱ぐ。
「お邪魔しまぁす」
「ねぇ、跡部君に教えてもらうんじゃなかったの?」
「そうだったんだけど、なんだかねぇ。」
「なんだかねぇって、なに?」
「どうしようもなくに会いたくてさ。」
暗い廊下をついてきた彼女を振り返り言ってみた。俺としては思いっきり殺し文句のつもり。
なのには大きな溜息をつくと俺を追い越してリビングのドアを開ける。
「わかった。跡部君ほどじゃないけど、私がジロちゃんに教えるわ。」
「うそっ!なんで、勉強?せっかくの休みなんだから遊ぼうよ。」
「ダメ。ハイ、そこに座ってノート出して?ジュースぐらいは出してあげる。」
「やぁだ、どっか行こう?それか部屋でイチャイチャするとか。」
「どっちも、ダメ。ジロちゃん、その科目が赤点だったら部活停止になるんでしょ?」
「そうだけど・・・、でも本気を出せば大丈夫。」
「なら、今からでも本気を出そうね。」
「ええ〜!」
「ダメったら、ダメ!」
いつもは大好きな大きな瞳だけど細められると結構怖い。
ダメの一点張りで、俺は場所と先生を変えただけで同じテキストを開き勉強させられるハメになった。
「なんだ、本気を出せば出来るんじゃない。じゃあ、次の問題やってみて?」
「ハイハイ。」
「ハイは一回!」
「・・・跡部より厳しいよ。」
俺が嫌々問題を解いている間、も問題集を解いている。
こっそりと盗み見たの真剣な横顔はとっても綺麗で、ついつい書く手が止まり見入ってしまった。
うわぁ、長い睫毛。
伏せた睫毛の影が白い頬に落ちて長さが際立ってる。
柔らかそうな頬にサラサラの長い髪。
ピンク色の大好きな唇。
あの唇は本当に柔らかいんだ。
触れるたび体中がジンとするような感じがする。
ああ、やっぱりキスしたい。
キスキスキスって、の唇見てたらキスで頭がイッパイになってきた。
俺ってホント『キス』が好きなんだなぁ。
そっと手を伸ばし、の頬にかかる髪をすくって耳にかけてやる。
伸びてきた手に顔をあげた彼女だったけど、いつものスキンシップと思ったのか再び問題集へと視線を落とした。
それをいい事に腰を上げて耳元にキスをした。
が、ネコみたいに素早く身を引いたが俺を睨む。
「ジロちゃん、続きできたの?」
「もう、やだ。」
「子供みたいなこと言わないで、続き!」
「だから、やぁだ。それよりキスしたい。」
「ダメ!」
「ダメは、やだ。キス!」
ジワジワと近寄って唇を尖らせてみせたら、いきなり問題集を押し付けられた。
「んっ、酷いよ〜。基礎解析とキスしちゃたじゃん!」
「勉強が終わるまではダメ!とにかく解く!もう、私に近づかないで。」
ちょっと、二人の間にペンケースとか物を積むの?ヒドイよ。
拗ねてみたけれどは完全無視だ。
「いいよ!終わらせたら好きにするからね。知らないぞぅ。」
「・・・私も知らない。」
そこから先は本気で解いた。
もともと俺って馬鹿じゃないんだよ?
ただ『スキ』と『キライ』がハッキリしてるだけなんだ。
スキなものはいくらでも頑張れるし、キライなものはしたくない。
今はスキの方が大事だから、『キス』のためにキライな基礎解析も頑張っちゃうもんね。
俺が解いた問題を確認するの体が微妙に逃げてる気がするけど、まぁいいか。
最後まで目を通したが溜息と一緒にノートを閉じたのが合図。
目にも留まらぬ早業で肩を抱き寄せると唇を塞いだ。
肘に当たってペンケースがテーブルから落ちた音がするけどお構いなし。
覚悟をしていたのか抵抗しないに気を良くして何度も何度もキスをした。
「ジ、ジロちゃん・・も・・勘弁。」
「やぁだ、もっと。俺、頑張ったもん。」
「そ、だけど、」
「まだ足りないし。」
額に、瞼に、鼻に、頬に、そして唇に。
星の数に負けないくらいのキスをしたい。
君がダイスキだから、君とのキスもダイスキなんだ。
誰より何より、君がダイスキ。
あ、と思う。
跡部に言ったこと、ちょっと違ってたな。
『俺ってキスが大好きみたい』
あれじゃ言葉が足りなかった。
とする・・・って言葉、明日には付け足しておこうっと。
「ダイスキ。」
2007.01.17
『ジロー大好き』沙良様に捧げます♪
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