僕は恋をした。 番外編










そうなるんじゃないかなと予想した通りになった。



「そうなんだよね!じゃあさ、ちゃんは桜と抹茶のマーブルチョコは食べてみた?」


「食べた!色は綺麗だけど味がビミョーな、」
「そうそう!気持ちは分かるけどビミョーな味だったよね。」



偶然会ったエージとは新発売のお菓子の話題で盛り上がってる。
この前は初対面の裕太ともスイーツの話で意気投合してたっけ。


ねぇ、どう考えても僕は蚊帳の外って感じだよね。
溜息を飲み込んで他に目をやれば、向かいの歩道に立つ女の子達と目が合った。


高い声と一緒に「やっぱり不二クンじゃない?」などと声が聞こえる。
彼女たちは頬を上気させて僕に手を振ってきた。


もちろん知らないコたち。
高校か、大学か・・・どちらかで僕を知ってるんだろう。
知らないコに声を掛けられたりプレゼントを渡されたりは日常茶飯事だから、いちいち気にしたりしない。


手をあげて軽く微笑めば、
まるでアイドルにでも会った様な騒ぎで彼女たちは頬を赤らめた。



「あ〜!ちゃん、不二が浮気してるよ?」
「ホントだ。」


「違うよ。ほら、エージにも振り向いて貰いたいみたいだよ?」



彼女たちに背を向けていたエージが振り向けば、また黄色い声があがった。
屈託なく手を振るエージにヤレヤレと肩をすくめ、隣に立つの顔を見ればいつもと変わらない笑顔があった。



「ね、妬いてもくれないの?」



そっとの耳元に口を寄せ、ちょっと不機嫌に囁いてやる。
は目を丸くして一瞬僕を見てから困ったように微笑んだ。



「妬いて欲しいの?」
「そうだね、一応は。笑顔で許して貰っちゃうと気持ちを疑いたくなるかもね。」



さっきエージと話してるを見ていて感じた嫉妬が僕の言葉を意地悪くする。
するとは頬を膨らまし唇を尖らせた。



「周クン、知らないんだから。」
「なに?」


「私、ほんとは凄くヤキモチ焼きなんだからね。」
「そうなんだ。」


「人気がある人なんだから仕方ないって。
 ニコニコ誰にでも笑って欲しくないって思ってても我慢してるのに、なんでそんなこと言うの?」


「我慢してたんだ?そんな無理しなくていいのに。」



は上目遣いに睨んでいるけど、潤んだ瞳で見つめられても胸がドキドキするだけなんだ。
分かってるのかな?



「ちょっと!なんでそんな嬉しそうに笑ってるの?」
「ゴメン。が顔を赤くして睨むのが可愛らしくて、つい。」


「わ、私は本当に」
「うん、分かったよ。は僕が誰かに笑いかけるのも嫌なほど僕が好きなんだ。」


「もうっ、周クン!」



真っ赤になって僕の胸を叩こうとする彼女の小さな手を受け止め、僕は声をたてて笑った。



「あ、あのさぁ、俺・・・邪魔みたいだから帰るね?」



じゃれあってるようにしか見えないだろう僕達に、エージが居心地悪そうに口を挟んだ。
気づけば向かいの通りにいた女の子たちの姿も小さくなっていて、
どうにも困ったという顔をしたエージが頭をかいていた。



「ゴメンね、エージ。」
「いや、まぁ・・・ウン。とにかく帰るわ。じゃあね、バイバイちゃん!」



更に顔を真っ赤にしたが言葉を発する暇もなく、エージはそそくさと通りを斜めに横切って走っていった。
二人でエージの背中を見送って、ハッと我に返ったが怒り出す。



「エージ君がビックリして帰っちゃったじゃない!」


「ビックリというより、アテられてじゃない?」
「ど、どっちにしても」


「僕も妬いたから。」



え?と、の言葉が止まる。
大きな瞳で意味を探るように見てくる君に僕の笑みは深くなった。



「エージとあんまり楽しそうに話してるから、ちょっとね。
 は誰とでも直ぐに仲良くなって笑顔の大盤振る舞いするだろ?」


「そんなこと・・・」


「お互い様ってとこかな?」



軽くの頭を撫でて、ね?と念押しする。
は俯いて口の中だけで何か言ったけど、急に顔をあげると勢いよく僕の腕にしがみついた。



「とにかくカメラを見に行くの!いい店に連れて行ってくれるんでしょう?」
「そうだね、寄り道しちゃったけど行こうか。」



耳を赤くしてギュッと僕の腕に抱きついて歩き始めた君の髪に一つキス。
更に赤面する君に笑みが止められず、また上目遣いで睨まれてしまった。



嫉妬もお互いが好きだと思う証拠。
恋もなかなかにスリリングだと初めて知った。


いろんな波を乗り越えて、ずっと君といられるためには努力が必要そうだ。
それはそれで頑張りがいがありそうだよ。



「周クン、飛行機雲!」
「ホントだ。」



子供みたいに空を指差す君の唇に、もう一つキスを。




















「僕は恋をした。 番外編」  

2007.01.01 

今年の第1作目。沙羅ちゃんのリクで『僕は恋をした』その後の甘い日常。




















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