テーマSS Fever 〜忍足編〜
「お、忍足君が、す、好きです。」
思いっきり噛みながらの告白。
どうしよう。好きだと言葉にしただけで泣きたくなってしまった。
忍足君はレンズの奥の瞳を丸くして、ただ唖然と私の顔を見ていた。
「あ・・けど、お前・・・ジローは?」
ズキッと鋭い痛みが胸を刺す。
けれど覚悟はしていたはず。
彼の事を聞かれることも。忍足君が私のことをどう思うかも。
ちゃんと分かってて私はこの場所に立っている。
「ジロー君には私の気持を言った。
そしたら・・・忍足君に告ってこいって言われたの。
それが俺からのお仕置きだよって。思いっきりフラレテおいでって。」
信じられない、という顔で言葉も出ない忍足君。
そんなビックリした表情、はじめて見るね。
いつも笑顔だけど案外クールで、心のうちを見せる事などあまり無いもの。
ずっとカレシの友達だと思えてたなら、こんな事にはならなかったのに。
惹かれてしまう心はどうしようもなくて。
軽くジロー君のカノジョに納まってしまった自分の馬鹿さ加減に何度泣いた事だろう。
こんなに好きだと思える人に、なぜもっと早く気付かなかったの?
「あ・・・俺な、」
「いいの。忍足君は何も言わないで。もう、私のことも無視してくれていい。
これからはジロー君のカノジョでもないし、忍足君とは何の接点もなくなるの。
ちょっと・・・ジロー君とは気まづくなるかもしれないけど、ごめんね?」
昨日から考えていたセリフを一生懸命に繰り返す。
最後、少し声が震えてしまった。
忍足君の目が私を軽蔑する前に姿を消したい。
カレシの友達に心変わりしたようなサイテーの女だと口にされる前に消えたい。
「本当にゴメンナサイ。もう、絶対に関らないから。ゴメ・・」
涙声になる前に背を向けて駆け出した。
ああ最低最悪の私だ。
本当は泣くのも許されないほど、酷い人間なんだ。
でも、涙は自分の意思じゃ止まらないよ。ゴメン。
校舎の角を曲がったら、そのまま誰かにぶつかった。
咄嗟に謝って横に避けようとしたら肩を掴まれて・・・抱きしめられた。
混乱して目の前の胸を押しながら顔をあげたら、ちょっとだけ困ったみたいに微笑んでるジロー君の顔。
「ジロー君・・・どうして、」
「どう?フラレテきた?」
聞きながら、そっと頬に流れる涙を親指で拭ってくれた。
優しい仕草は変わらなくて、私の涙は余計に止まらなくなる。
「、泣いてばっかりだね。俺は、の笑った顔が好きだったのに。」
「私が・・・馬鹿だから・・・ジロー君、ごめんね?」
「馬鹿なところも可愛いんだけどさ。ね、俺のとこに戻ってくる気はない?」
ジロー君の言葉に瞬きが出来なかった。
いつも笑ってるジロー君の真剣な瞳。だからこそ、もう嘘はつけなかったの。
私は引き裂かれる思いで、ぎこちなく首を横に振る。
同じ過ちは繰り返せない。それは、ジロー君をもっと傷つける事になるから。
「フラレテもオッシーが好きなんだ?」
コクリと、頷く。
「報われなくてもいいんだ?」
また、コクリと頷く。
「どうしても、オッシーなんだね。」
頷くと、また涙が零れた。
「だって。どうする?」
誰かに問いかけるようなジロー君の言葉に顔をあげたら、彼は私ではない方向を見つめていた。
その視線の先を追えば・・・そこには忍足君が厳しい顔で立っていた。
試合でも見せないような怖い顔に身がすくむ。
こんな所を見られるなんて。
膝が震えてしまうのを感じ後ずさると、ジロー君の手が私の肘を掴んだ。
ジロー君を見上げても、彼は忍足君から視線を逸らさない。
忍足君も強い視線をジロー君に向けていた。
「ジローは、ええんか?」
「よくないって言ったら、諦めてくれるの?」
「・・・もう、無理や。聞いてしもうたら、抑えられへん。」
「なら、聞かないでよ。いいよ、もう泣き顔は見たくないし。」
「すまんな」
「コンビニのお菓子、買い占めるからね。」
「そんな安いもんでええんか?」
「よくないけど・・・いいよ。」
「わかった。」
二人は最後に少し笑いあった。
その間で会話の意味がはかれずに、ただジロー君に腕を掴まれて動けない私。
「、オッシーに大事にして貰うんだよ?泣かされたら、いつでも俺が胸を貸してあげる。」
「ジロー君、どういう・・」
「が俺のこと友達以上恋人未満にしか思えてないの知ってたんだ。
それでも、俺はを好きだったから・・・良かった。
けど、オッシーを紹介した時・・・すぐには恋をするって分かった。オッシーも。
分かってて、ここまで手を離さずにいてゴメンね?」
そういうと、ふんわりと私の頭を撫でて背中を押してくれた。
トン・・と前に出され慌てて振り返れば、ジロー君は笑顔で「バイバイ」の仕草をし、ニ・三歩あとずさった。
そして、忍足君のほうをチラッと見て、またニコッて笑うと背を向けて走っていった。
ぽたぽた、と。ただ、涙が溢れて零れてきた。
声が抑えきれずに口を覆うと、すっと隣に並んだ人が慰めるように私の背中を撫でた。
沁みてくるような熱は忍足君の大きな手のひら。
「さっきの返事・・・遅うなったけど言うな。」
ジロー君の背中が角を曲がって見えなくなると、忍足君が身をかがめて耳元に口を寄せてきた。
俺も、が好きや。
あの日・・・ジローに紹介された時から。
ずっと・・・ずっと、お前が好きやった。
お前しか、見えんかった。
あなたからの、熱い告白。
テーマSS Fever 忍足編」
2006.04.05
ジロー、ゴメン。
テニプリ短編TOPへ戻る