好きだ!好きだ!好きだ!










俺の好きなちゃんは、クラスで一番。
ううん学年で一番・・・いや学校で一番、いやいや日本で一番、いやいやいやいや世界で一番。
ええい、この際だ!宇宙で一番可愛い!と、思う。



そう大石に言ったら、頬を引きつらせながら「そ、そうか、良かったな」と笑った。
不二は細い目を更に細くして「まぁ・・・いいんじゃない?」と微妙な返事だった。


ちょっと納得できなかった俺は彼女と同じクラスの手塚(なんで、俺じゃなくて手塚が同じクラスなんだよ!)にも言ってみた。
すると「?そんな女子がウチのクラスにいたか?」と反対に聞き返されて呆れた。
手塚の目は節穴らしい。


でも、よくよく考えてみたら、皆がちゃんの宇宙一の可愛さを知ってしまったら大変な事になる。
だって地球上の男全員がライバルになるもんね。


とにかく俺の大好きなちゃんはサイコーだ。
笑うと右のホッペにエクボが出来るんだ。
ノートを取る時、肩までの髪を耳にかける仕草に胸がドキドキする。
白くて細い指先は、とっても綺麗な桜色なんだ。
耳の形も整ってて小さい。
目を伏せると長い睫毛がよく分かる。


『エージクン』って、少し伸ばす呼び方。





好きだ!好きだ!好きだ!
彼女の全部が好きだ。



なのにどうしよう!
二年のクラスがえで俺の教室には彼女がいなくなってしまった。
用もない手塚のもとへ足しげく通うのも不自然だ。
今朝も『今日も何の用事だ?』と冷たく手塚に追い払われた。


好きだから会いたいよ。
声が聞きたいよ。
俺を見て微笑んで?俺の名前を呼んで?
ねぇ、俺のコトどう思ってる?
クラスが離れて少しは寂しいって思ってくれてるのかな?



かなり煮詰まってるよ、俺。
机に突っ伏して悶々としてたら、ポンと頭を叩かれた。
顔をあげれば不二がニコニコして俺を見下ろしていた。



「エージ、ここ最近ずっと元気ないよね。みんな、心配してるよ?」
「心配?そんな心配してくれるのなんか大石ぐらいだろ?」


「一応、僕も心配してるんだけどね。他にも・・・そう、エージを見てる人はいると思うけど。」



いつも笑顔の絶えない不二。
とっても大好きな友達なのに、片想いに苦しむ俺は心が荒んで不二さえ疎ましく感じちゃう。
ちょっと意地悪で嫌なヤツになってるんだ、俺。分かっているけど止められない。



「そんなヤツいないよ。それに心配して欲しいのは、たった一人だけだもん。」
「たった一人?誰?」



ニッコリ笑って尋ねてくる不二。
なんだよ。俺がちゃんを好きだってコト、不二だって知ってるくせに。
なんか、ムカムカした。
で、自棄っぱちで机を叩き立ち上がった。



ちゃんだよ!俺はちゃんが好きなんだって!好きだ!好きだ!好きだ!」



鼻息も荒く不二に向かって叫んだ。
ギュッと握った拳を震わせながら言い切った俺を見て、不二ときたらクスッ・・・と笑った。


そ、その曲者の笑顔ってナンなんだよーっ



「ということらしいから、後を頼んでもいいかな?」



文句の一つでも言ってやろうと息を吸い込んだ俺に不二が穏やかに言う。
俺に後を頼む?何の?と疑問に感じると同時に、不二の視線が自分を見ていないことに気がついた。


不二の視線は俺を通り越して後ろに注がれている。


後ろ?


やめときゃいいのに振り返って・・・俺はギョッとした。
心臓が一瞬停止しかかったし、瞬きは完全に忘れてた。



俺の後ろに立っていたのは・・・耳まで真っ赤にして口元を押さえているちゃんだった。



慌てて前を向くと、既に不二は手を振って俺から離れて行ってた。
いや、待てって不二!このまま俺を置いていくなってば!
口をパクパクしてみたけれど言葉も出ない。


どうしよう、俺の後ろにはちゃんがいる。
俺の声・・・聞こえたのかな?多分、聞こえたよね?いや、絶対聞こえてるって。


とにかく心臓がドクドクと打って胸から飛び出しそうだ。
脳細胞はあまりのショックで混乱を極めている。


えっと、えっと・・・なにを言えばいい?
いや、待て。俺って、なにを口走ったっけ?


分からないっ!っていうか、分かりたくないって!


頭を抱えていたら、背中から小さな声が聞こえてきた。





「エージクン」
「はっ、ハイ!」



雷にでも打たれたかのようにビシッと体を硬直させた俺。



「あの・・・そのまま、振り向かないで聞いてくれるかな?・・その・・は、恥ずかしいから。」
「う、うん。」


「わ、私・・・」
「う、うん。」



ま、待て。うん、じゃないよ・・俺。
心の準備が出来てない。ちゃん、今から何を言おうとしてるんだ?俺、振られるの?



「わ、私も一緒だから!じゃあ、」



早口言葉かと思うほど一気に喋ったちゃん。
頭で理解するより先に振り返った俺の目に、出口に向かって走っていく彼女の姿があった。



待って!逃すもんか!


ヒラリとイスを飛び越えて、廊下に飛び出す彼女を追う。



私も、って言ったもん。
一緒って、言ったよね。


それって、俺のこと『好きだ!好きだ!好きだ!』ってコトだよね?



逃げないで俺に聞かせて?
君の言葉で俺に伝えて欲しい。



好きだ!好きだ!好きだ!って、大好きな君の声で聞きたいよ。



あと、もう少し。


あと15センチで、君の肘を捕まえられる。


ああ、ほら。



つ・か・ま・え・た!




















好きだ!好きだ!好きだ!

2006.04.19 




















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