君を探してた 番外編
 『新しい年』










君という女のコは、どうしてこうも俺をハラハラさせるのか。
さっきまで恥ずかしそうに俺のコートの端っこを握っていたのに、振り向けば君の姿が忽然と消えていた。


晴れ着姿の女性や寄り添うカップル、家族連れと、人、人、人で賑わう参道。



?」



呼ぶだけで胸が熱くなる君の名前を唇に乗せれば、呼び捨てにできる自分が嬉しかったりする。
だが、そんなことで喜んでいる場合じゃない。


人ごみの中で俺たちは、はぐれてしまったらしい。
こういう時には背が高いのが役立ちそうなものだが、それを凌駕する人の多さに眩暈がした。



ああ、もう。
あんなに可愛い君を一人にしては心配で堪らない。
急いで腰のポケットから携帯を取り出し、すでに見慣れた君の番号を呼び出したところで手が止まった。



・・・探してみようか。



ふと思いついた。
俺は昔から彼女を探すのが得意だった。
意図せずとも、どんなに多くの人が居ても俺はを探し出すことができた。


それは俺が君だけを見ていたから。
君だけが好きで、君だけを追っていたから。


今、君は俺のもので・・・探さなくても傍に居てくれる。
だから久しく探していなかったのだけど、ちょっと試してみたくなった。



携帯を閉じてポケットに捻じ込むと参道から脇に外れて周囲を見渡す。
そう離れているとは思えない、きっと近くで俺を探しているだろう。
川の流れのように進んでくる人々、小さな女性は頭だけが見え隠れする状態だ。



君はどこだろう?
やっと恋人だと呼べるようになった俺だけの君を一瞬でも見失った事が堪えるよ。



手が届かないと思っていたんだ。
その君を手にしてみたら、俺はどうしようもない男になってしまって困ってしまった。
好きすぎて、もう力加減ができないくらい君が好きで気持ちを持て余してしまうほど。


違う街で暮らしてて良かったと思う。
すぐに会えないのは辛いけど、近くに居たら壊してしまいそうなほど君を愛しまくったと思うから。



視線が一点で止まった。
ただ頭しか見えない人ごみの中、確かに君の気配を感じた。


俺は迷わず参道の脇から人の波に体を突っ込み、
押されながらも流れに逆らうようにして君じゃないかと思う人へと進んでいく。
すみませんを繰り返し少しずつ近づいていくと、決定的と思われる『白』が目に入った。
俺がプレゼントした真っ白のマフラーが確かに見えたんだ。



!」



顔は見えない。でも確信を持って俺は恋人の名前を呼ぶ。
すると白いマフラーが動いて、人と人の間から僅かにの顔が覗いた。


あーあ、泣きそうな迷子の顔をして手を振る君。
はやく抱きしめてあげなくちゃ。



、こっちだよ」
「乾クン!」



人ごみをかき分けて手を伸ばせば、君も小さな手を伸ばしてくる。
あと1メートル、50センチ、30センチ、ほら・・・捕まえた!



!」



触れた手を引き寄せて、自分の胸に抱え込んだ。
冬の乾いた匂いと一緒に彼女の柔らかな甘い香りが俺の腕に飛び込んでくる。


僅か数分はぐれただけ。
だけど、とても愛しかった。


俺の胸から顔を上げた君は恥ずかしそうに「ゴメンね」と呟く。



「だから手を繋ごうっていっただろう?」
「だって、手のひらに汗かいちゃいそうで・・・」


「え?まさか、そんなことで嫌がったのかい?」
「嫌がってない。ただ、ちょっと恥ずかしくて・・・」



俺は笑いを噛み殺すとの肩を抱いて歩き出す。
じゃないと参道を進む人たちに背中を押されて大変なんだ。



「気にしないのに。でも、いいよ。こうやって肩を抱いて歩こう。なら迷子にならないだろう?」
「でも・・乾クン、歩きにくくない?」


「全然。新年早々、幸せだよ。」



目を見開いたが黙り込んで俯いた。
そんな彼女の肩を抱き寄せて赤くなってる耳に口づける。



「変わってなかったな。」
「なにが?」


「やっぱり俺は君がどこにいても探せるってこと。でも・・」



が俺の言葉を促すように見つめてる。
君の綺麗な瞳には、今・・俺しか映っていないね。



「できたら探さなくてもすむくらい、ずっと傍に居て欲しい。」



は一瞬キョトンとしてから、次には花のような笑顔を浮かべて微笑んだ。



いるよ、と君が言う。



その言葉の重さを俺がどんな想いで噛み締めてるか分かるかい?



「ありがとう」



細い肩を更に抱き寄せて、そのまま顎をすくって唇を寄せる。
唖然としている君にキスをした。



「い、乾クン!」
「今年もよろしく、。」


「そ、そんなことで誤魔化して!」
「誤魔化してないよ。さっきのはお願いのキ・・」


「言わないで!もう、」



いつまでたっても照れて恥ずかしがる姿は初々しくて大好きだ。
前の恋人が何といっても口数少ない男だったからね、君には免疫がないんだろう。
俺は惜しみなく言葉も温もりも、持っているものなら何でもあげる。



「可愛いね、。大好きだ。」
「もう知らない!」



拗ねてる顔も愛しいよ。
クスクス笑いをして柔らかな君の髪に鼻を埋める。



新しい年を君と迎えた。
また一年を君と過ごす。


この幸せを大事にするために、俺は君を抱いて行こう。


一年、一年を重ねて、
いつか君を帰さなくてすむように。



「本当なんだから仕方ないだろ?」



苦笑交じりに呟けば俯いたが小さく言った。
ざわめきに掻き消されそうな声だったけど確かに聞いたよ。



「私だって好きすぎて困ってるんだから。」



ああ、またそんなこと。
どうしよう。


この人の中で、もう一度キスしたら今度は本当に怒るだろうか?


ねぇ?





















君を探してた 番外編 『新しい年』 

2007.01.01




















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